美と走りのメルセデス
美しさを存在意義とし、今日もメルセデス・ベンツのラインナップに花を添えている「CLS」。見ても触れても運転しても滑らかなスリーポインテッドスターの4ドアクーペは、デザインや走りなど、昔ながらのクルマの魅力で語りたくなる、いまや貴重な存在だった。
デザインで語られるクルマ
2018年に3代目となる現行メルセデス・ベンツCLSが登場したとき、世のクルマ好きがデザイン談義で盛り上がったのは楽しかった。このCLSは、シンプルにフォルムで見せることをテーマとした、メルセデス・ベンツの新しい考え方でデザインされた最初のクルマだったのだ。
メルセデスが「Sensual Purity」と呼ぶデザインのコンセプトは、鋭利なキャラクターラインや複雑な面の構成で“盛る”のではなく、削(そ)ぎ落とす方向で造形するというもの。いわば引き算の美学でデザインされている。
これが賛否両論を巻き起こした。個人的には、キャラクターラインにしろフロントマスクにしろ、全体に装飾を華美に感じた2代目CLSよりもすっきりとしていて、好ましいと感じたけれど、高級感が足りないとか、工夫に欠けてまったりとしているという批判の声もあった。
もうひとつ、真横から見たノーズが逆スラントになっていること、すなわち一番高い位置になるボンネット部が前に突き出ていて、低い位置になるにつれて後退する、でこっぱちというかサメの頭のような形状になっていることも話題になった。ツルンとしたスタイルもサメやイルカを思わせたから、筆者は「くじらクラウン」のような感じで「シャークヘッドCLS」と呼んだけれど、これはまったく広まらなかった……。
いずれにせよ、「メルセデス・ベンツたるものが、4ドアクーペみたいなフマジメなクルマをつくるのか」というお叱りの声を受けた初代から、CLSというモデルはとにかくカッコが話題になるモデルである。そんなクルマはありそうでなかなかないので、貴重な存在だ。そして2021年の秋に、フロントグリルがよりくっきりとした輪郭の台形となり、バンパーもそれに合わせて形状が変わるなど、ちょっとしたお化粧直し(参照)を経て現在に至っている。...