有終の美ではない
独立した自動車メーカーとしてのアルピナの歴史が間もなく終わろうとしている。静かにフェードアウトしていくのもひとつのやり方だろうが、アルピナは最後の最後まで開発の手を緩めることはないはずだ。超ド級SUV「XB7」をドライブしてそう感じた。
アルピナ一族の決断
高性能を声高に主張する押し出しの強さよりも、端正なエレガンスを旨とするのがアルピナだが、これほど巨大なSUVとなるとシックなグリーンで装っていても、ただただそのボリュームに圧倒される。これが290km/hで巡航できるというのだからなんともはや、である。
室内もラグジュアリーこの上ない。スイッチトロニック付き8段ATのシフトセレクターは青く発光するクリスタルガラス製で、iDriveダイヤルも同様にキラキラ輝いている。しっとり手のひらに吸い付くようなステアリングホイールは、例によって最新BMWと同じくリムが太く(最新のADASシステム内蔵のためアルピナ独自品に変更できない)、そのせいかこのクルマにはオプションのシフトパドルが備わっている。ぶれることなく流儀を守り続けているように見えて、実は少しずつアルピナも変わっているのである。
言うまでもなく、BMWアルピナ各車はクルマ趣味を極めた、いわばコニサーのためのクルマだが、日常的に使いこなせる高性能と快適性を高い次元で追い求めてきたのが特徴であり、たまにサーキット走行に持ち出すだけといった特殊な趣味的スポーツカーとは根本的に異なる。時代と社会の要請に応えなければならないのだ。
というわけで、ついに、やはりこの日が来たか、と意外に冷静に受け止めている自分がいる。誰もが、いつかはそうなるだろうな、と心のどこかではうすうす覚悟していたように思うが、それでも実際に期限を切られるとやはりショッキングというか、寂しさは否めない。今から3年後、創立60年をもってアルピナがその名前をBMWに譲り渡すという。2026年からアルピナの商標はBMWのものとなり、アルピナは現在とは違うかたちで自動車ビジネスに関わっていくことになるという。譲渡代金は明らかにされていないが、BMWに買収されるわけでもないらしい。何だかいかにもアルピナらしい潔さである。...