“セブン”という名の最後の魔法
往年の「ロータス・セブン」を源流とするスポーツカーを、今なおつくり続けるケータハム。その走りを今の時代に味わうというのは、どのような行為なのか? 軽さがかなえる異次元のフットワークとクラシックな意匠を併せ持つ、「スーパーセブン1600」で確かめた。
始祖から60年以上を経ても実在する新車
「小さめのスニーカーを持参することをオススメします」
webCG編集部のホッタ青年が、例によって朗らかな声で電話をかけてきたのは取材前日の晩だ。事前に集合場所や時間をきっちり伝える彼が、当日前夜にわざわざ連絡してくるのは珍しいことだった。なのでつかの間、いぶかる思いを無言で発していたら、それを察知したのか「明日になればわかりますよ」と言って電話を切った。理由を言えよ、言わないと不安になるだろと返す間も与えず……。
そうして翌朝、僕はケータハム・スーパーセブン1600の横に立った。全長3380mmで全幅1575mmのそれは明らかに小ぶりな体格なのに、都会の真ん中を悠然と歩くトノサマガエルのように、「ここにいてなにか問題でも?」と言いたげに見えた。要は存在感が果てしなく異様で強力なのである。
クルマ事情に疎い僕でも、スーパーセブンの概要は知っている。英国のロータス・カーズが1957年に発表し、70年代中盤までつくっていたロータス・セブンが大本の出自。完成車だけでなく郵便配送が可能なキットカーの販売もあったと聞いて、かの国のクルマに対するおおらかさに感心したのはずいぶん昔のことだ。
さておき、ロータスがセブンの生産を中止すると、その販売事業を手がけていたケータハムが製造権を手に入れ、基本構成はそのままで生産を継承。似たような他社名義のセブンもあったと記憶しているが、いずれにしても、始祖の登場から60年以上経てもなお、本家の血筋を引くケータハムが存続させた“新車のセブン”を目の当たりにして、僕はしばし言葉を失った。温故知新を繰り返しながら脈々とつくり続けられていたとは! ホッタ青年、知らなかったのは僕だけなのかな?...