煌めく野心
「マセラティの新時代を告げるモデル」として開発された、高性能スポーツカー「MC20」。100%モデナ製のエンジンをはじめ話題性に富む一台だが、その走りは……? ワインディングロードへと連れ出し、むちを当てた。
F1由来のテクノロジー
マセラティのミドシップスーパースポーツとしては「メラク」の生産終了以来ほぼ40年ぶりということになろうか(「MC12」や「バルケッタ」などの例外はあったが)。しかしながら、クルマ好きのなかでもメカニズム好きにとっては、その流麗なボディーに積まれる新しいエンジンに興味津々のはずである。
新型3リッターV6ツインターボはその名も「ネットゥーノ」、ローマ神話の海神で英語ではネプチューン、つまりギリシャ神話で言うところのポセイドンである。この海神が持つ三叉(さんさ)の矛をエンブレムとするマセラティにしか使いこなせない名前であることは間違いないが、それならばMC20という即物的なネーミングより、車名そのものを「マセラティ・ネットゥーノ」としたほうがマセラティらしかったのではないかとも思う。
今どきマイルドハイブリッドシステムはおろかアイドリングストップさえ備わらない純粋な内燃エンジンだが、その代わりに現代の市販エンジンでは初のプレチャンバー(副燃焼室)システムという先進技術が盛り込まれたことががぜん注目を集めている。F1グランプリ直系の技術といわれるこのシステムは、主燃焼室に加えて小さな副燃焼室を備えている。現代のF1では燃料流量規制に対応して、いかに少ない燃料でパワーを生み出すかが課題であり、プレチャンバー付き燃焼室が当たり前になっているからだ。といっても詳細は未公開だが、ホンダがマクラーレンと組んで2015年にカムバックした時には、既にメルセデスとフェラーリがこの技術を導入していたといわれる。自信満々で乗り込んだホンダはエンジンそのものでまったく歯が立たずに真っ青になった、とはパドックすずめの間では有名な話である。世界中の自動車メーカーが同技術の市販化を研究しているが、真っ先に名乗りを上げたのがマセラティだったのである。...