清冽なる駿馬
フェラーリの未来を担う新たな基幹モデル「296GTB」。ブランド初のV6ターボに「SF90」譲りのハイブリッドと、好事家なら口を挟まずにはいられないトピックを満載したニューモデルは、どのようなクルマに仕上がっていたのか? スペインはアンダルシアで試乗した。
注目の新機軸を満載
フェラーリ初のV6で、プラグインハイブリッド車(PHEV)で、伝統のV8ミドシップ系と近しいポジションに位置するニューモデルである。「跳ね馬の新顔」というだけでも十分注目されるというのに、フェラーリ296GTBは、好事家の耳目を集めるトピックにあふれている。そしてその一部は、古典的なクルマ好きにもあまねくポジティブにとらえられる類いではない。
字面の記号性が重い意味を持つ超高級車・高性能車の世界にあって、V6というエンジン形式は必ずしも笑顔で受け入れられるものではないし、軽快さが身上のスポーツカーに重い電動パワートレインを積んだ判断に、走りの純粋性を疑う向きもあるだろう。そもそも、「308」から「F8」に至るV8ミドシップの系譜があるのに、なぜわざわざ別の機軸を立てようとするのか。
スペインで開催されたメディア向け試乗会において、記者は実車に触れ、こうしたギモンに関する言い分を関係者に聞いて回ることで、このクルマの像をつかめるのではないかと考えていた。誤算は当のフェラーリに、そんなロジカルな方法で懐疑派を説得するつもりがさらさらないことだった(詳しくは後述)。
クルマの概要についておさらいすると、プラットフォームには軸間を切り詰めるなどして敏しょう性を追求した独自設計のシャシーを採用。完全新開発の2.9リッターV6ツインターボエンジンは、リッターあたり221PSと非常にハイチューンで、そこに「SF90」の後軸用パワートレインをベースとしたハイブリッドシステム、すなわちエンジンを切り離すクラッチと、高出力・高トルクのアキシャルフラックスモーター、8段DCT、リチウムイオンバッテリー等が組み合わされる。シャシーのエンジニア氏によると、前後重量配分は40.5:59.5としっかりリア寄りだ。
ちなみに、気にする人がいるかは知らないが、燃費は「F8トリブート」の12.9リッター/100kmに対して6.4リッター/100kmである(ともにWLTPサイクル)。...