飛ばせ! 踏め!!
ド迫力の空力パーツが示すとおり、新型「ポルシェ911 GT3」はレーシングマシンそのものだ。真の価値はサーキットでないと味わえないかもしれないが、真冬の箱根で試しただけでも、ドライバーに訴えかけてくる“圧”がある。ニュル北コース7分切りの実力を味わってみた。
薄氷を履むが如し
天気は晴朗、風も穏やかだったけれど、キンキンに冷え込んだ早朝の箱根の山は外気温マイナス3度、当然路面もいてついており、日陰には解け残った雪がガチガチに固まっている。たとえでもなんでもなく、まさしく薄氷を履むが如し、である。最新最強の911である992型GT3に乗るには、まったくもって望ましくない。しかも前:20インチ/後ろ:21インチサイズの巨大なセンターロックホイールに装着されるタイヤは、ストレートグルーブ3本のほかには溝がほとんど刻まれていないような「グッドイヤー・イーグルF1スーパースポーツR」、いかにもドライサーキット向けといったやる気満々の最新高性能タイヤである。普通のセダンでさえ気を使わなければいけない状況なのに、こんな日に限ってGT3とは。これではきっとニュルブルクリンク北コースで7分を切るレコードタイムを記録した開発ドライバーのラース・ケルンでも二の足を踏むはず、である。
できるだけ日当たりの良い乾いた路面を求めて尾根道を移動することにしたが、ゆっくり走るぶんには無論何の問題もない。7段PDKはせいぜい2500rpmぐらいで滑らかに瞬時に、まるで「フォルクスワーゲン・ゴルフ」のように静かにシフトアップしていくが、ステアリングフィールの希薄さが不気味でもある。先代モデル同様に採用されているリアアクスルステアリングの効果か、スルリと俊敏に向きを変えるものの、適温・適速度はもっとずっと上にあるということを告げているような手ごたえの軽さは、むしろレーシングカーっぽい。このような場合のエンジン音は(少なくともノーマルモードでは)室内で聞く限りそれほどたけだけしくはないが、ただし本格的なロールケージのトラスの向こうから頭の後ろに響いてくる、かすかだが明確なキューンというギアノイズが、ただものではない“マシン”に乗っているということをひと時も忘れさせない。モンテカルロのリエゾンを走るラリーカーの風情である。...