「47万円」が原点です
極めて厳しいコスト管理のなかで、親しみやすさを追求しつつ基本性能の向上が図られた新型「スズキ・アルト」。エンジニアは、どんな思いでクルマづくりに取り組んだのか?
草履ではなく下駄
1979年にデビューしたスズキ・アルトがフルモデルチェンジを受けて9代目になった。国内累計販売台数が526万台というベストセラーカーだが、近年はハイトワゴンやスーパーハイトワゴンの人気に押され気味である。現状でのベーシックな軽乗用車の存在意義はどこにあるのか。チーフエンジニアの鈴木猛介さんに、新型アルトに託した思いを聞いた。
――先日行われたweb発表会で、鈴木俊宏社長が「下駄(ゲタ)を極めていきたい」と発言していたのが印象に残りました。下駄グルマという言葉は、一般的にはあまりいいイメージで使われないように思えますが……。
鈴木猛介さん(以下、鈴木):(笑)。下駄という言葉にいろいろなとらえ方があるというのは社内でもわかっているんです。大きなイメージとしては、ちょっと出かけるという時にすぐ履けて、どこへでも行けるということだとわれわれは考えています。それならスニーカーでもいいじゃないか、という話もあるんですが、下駄というのはよりシンプルなところがメッセージとして強いと思っています。
――優れた下駄グルマというのは、どういうものなんでしょう?
鈴木:すごく難しくて、われわれもどう表現したら本当に下駄になるかなと一生懸命自問自答しています。「価格は上げない」というのはポイントです。でも、草履ではいけない。草履ではなく下駄なんです。草履だと擦り切れて使えなくなってしまう。僕なりに考えたのは、昔ははだしだったり草履だったりしたのに下駄が出てきた。下駄というのは地面が汚れていたってどこへでも行けちゃうんです。どうでもいい履物を履いているのではなくて、実用的であるということが大事。下駄という言葉で今の人がイメージするのは、昔と違ってオシャレな履物なんじゃないでしょうか。...