豪速万能SUVの憂鬱
注目すべきは最高出力612PSのパワーだけにあらず。48Vのマイルドハイブリッド機構や電子制御スタビライザーなどのハイテクを満載した「メルセデスAMG GLE63 S 4MATIC+」は、洗練された乗り心地とハンドリングも併せ持つハイパフォーマンスSUVに仕上がっていた。
20年余りで347PSから612PSへ
メルセデスが“クロカン”とは一線を画すSUVカテゴリーに参入して、おおむね四半世紀の時がたつ。その出発点となった初代「Mクラス」に、AMGチューニングの「ML55 AMG」が加わったのは2000年のこと。日本の輸入元が、当時のダイムラークライスラー日本ではなく、ヤナセ出資のAMGジャパンだった頃の話だ。
V8が大好物な米国市場からの要求に加えて、鳴り物入りのデビューを控えた「BMW X5」を迎え撃つという意向もあっただろう、ML55 AMGは決して出来がいいとはいえなかったベースモデルのガサツさを忘れさせるフットワークで、当時のこの手のクルマとしては破格だった347PSのパワーをなんとか手なずけていた。高重心ならではの危うさもあるにはあったが、なんとかバランスさせたその面白みはマニア筋の間で話題となり、アメリカでは「GMCタイフーン」以来のカルトカーとして受け入れられた。後に続くバカ力系SUVカテゴリーの、興隆の扉を開いた一台となったわけである。
その後、Mクラスは「GLE」へと名前を変えながら4代にわたって進化を続け、AMGモデルも途切れることなく投入されている。2代目は6.2リッターV8自然吸気、3代目は5.5リッターV8ツインターボ、そして現世代となるこのGLE63 Sには4リッターV8ツインターボと、一貫してV8を搭載。0-100km/h加速は6.7秒から3.8秒へ、最高速は235km/hから280km/hへと進化を遂げてきた。高重心のナリを思えば初代のそれでも十分に速いという印象だが、そこから数えて20年余りでパワーと速さは著しく向上し、価格もほぼ倍化したというイメージだろうか。...