ライバルを突き放せ
ロングツーリングもスポーティーな走りも楽しめる、ヤマハのツアラーバイクがモデルチェンジ。名前も新たに「トレーサー9 GT」となった新型は、エンジン、車体、電子制御と、バイクを構成する全要素を刷新することで、従来モデルからの劇的な進化を果たしていた。
その変更は「MT-09」に準じたものだが……
今回のヤマハ・トレーサーのモデルチェンジは、またしてもアドベンチャーツアラーというカテゴリーを刺激することだろう。試乗してそう感じた。それほどまでにトレーサー9 GTの進化は大きく、その効果を強く感じることができたのだ。
2015年に「MT-09トレーサー」の名前でデビューした初代トレーサーは、ヤマハの新しいスタンダードモデルとして開発された「MT-09」のプラットフォームに、アドベンチャーモデルのスタイリングを架装した新しいツアラーだった。2018年に、ベース車のマイナーチェンジと時を同じくしてモデル名を「トレーサー900」に変更。スタイリングをアップデートするとともに、走行安定性を高める方向に少しだけ手が加えられた。そしてこのたび、MT-09のフルモデルチェンジに合わせてこちらも全面刷新。モデル名もトレーサー9 GTとなった。
フルモデルチェンジの主なメニューは、排気量をアップした新エンジンと、新設計のフレームの採用、新開発の6軸IMUや、そのセンシング技術を生かした電子制御サスペンションの搭載だ。このうち、電子制御サスペンションはトレーサー9 GTのみの装備だが、それ以外の進化についてはMT-09に準じたものとなっている。
しかし、開発陣から詳細な話を聞き、そして新しいトレーサー9 GTを走らせてみると、このバージョンアップメニューとその効能は、むしろトレーサー9 GTに主眼を置いたものではないかと感じられた。
まずはエンジンである。これについては、セッティングを含めてMT-09と共通だと説明を受けたが、そちらで体感したものより(参照)さらにマイルドさが増した印象だ。恐らくは30kg重いトレーサー9 GTの車重や、より長いスイングアームも影響しているのだろうが、この“マイルド指向”はMT-09よりトレーサー9 GTのキャラクターに合っていると感じられた。...