進化する猛禽
圧倒的な動力性能でファンを魅了し続ける、スズキのフラッグシップモデル「ハヤブサ」。押しも押されもしないメガスポーツ/ウルトラスポーツの“第一人者”は、2度目のモデルチェンジでどのような進化を遂げたのか? 3代目となる新型の走りに触れた。
バイクに宿る“重み”が違う
「新しいハヤブサじゃないですか?」
試乗用に借り受けた新型ハヤブサにETCが搭載されているのを知らず、料金所のスタッフに支払いをしているとき、そう声をかけられた。ETCが普及する以前はごく普通のコミュニケーションだったが、いまとなっては珍しい体験だ。そしてなにより、世間的に注目度の高い車両に乗っていることを再確認し、身が引き締まった。
仕事柄、新型車を借りてあらゆる場所を走るのだが、ときに(おそらくは自意識過剰なのだが)まわりの視線を必要以上に意識してしまうことがある。そうした意識の大きさ、重さは、マシンの目新しさというより、そのモデルが背負っている存在の重さに比例して感じられるものだ。スズキというメーカーは、どのモデルもその比重が大きくて重いのだが、なかでもハヤブサは最大級といえるだろう。
1999年に「世界最速」をうたい登場した初代ハヤブサ(当時は「GSX1300R HAYABUSA」)。そこから排気量の拡大や各部のブラッシュアップを受け、2008年に第2世代へと移行する。そして今回、13年ぶりのモデルチェンジを受けて登場したのが、この新型だ。サーキットでの走行を前提に進化を続けるスーパースポーツモデルとは異なり、ハヤブサは狙いを最高速の一点に絞ってパフォーマンスを高めるとともに、その車体も進化させ、メガスポーツという新しいカテゴリーを生み出した(ハヤブサの起源やライバルたちとの攻防の詳細はこちら)。
そのメガスポーツとしての進化や、ライバルとの攻防、さらには1999年から2002年まで全日本ロードレース選手権や鈴鹿8時間耐久レースに設けられた「Xフォーミュラ」クラスへの参戦などにより、ハヤブサは世界中のバイクファンのあいだで熱狂的に支持されていく。アメリカでは“BUSA(ブサ)”と呼ばれ、ドラッグレースから派生した特異なストリートカスタムカルチャーを生み出し、その熱狂は、『ワイルド・スピード』(もちろん日本車が主役だった第1作)のバイク版ともいえるハリウッド映画『Biker Boyz』(日本未公開)が公開されるほどだった。料金所のスタッフも、そんなハヤブサの熱に侵された一人に違いない。...