間口は広く 懐は深く
ホンダのミドル級スーパースポーツモデル「CBR600RR」が復活。レースでの勝利を目的に開発された新型は、ライディングの基礎を学ぶのにも、サーキットでのスキルを磨くのにも好適な、ホンダらしい誠実さを感じさせるマシンに仕上がっていた。
目標はサーキットでの勝利
新型CBR600RRの価格は160万6000円である。600ccクラスの国産モデルとしては高額で、にもかかわらず、エンジンとフレームの基本設計は2007年から変わっていない。では一体どこに手が加えられたのか?
その多くは、ピストン、クランク、カムシャフト、シリンダーヘッド、吸排気系、スイングアームの内部構造、電子制御と、はた目には分からない部分だ。従来モデルと明らかに異なるのは、すっきりした外装とそこに設けられたウイングレット(カナード)の存在感である。
ちなみに、2007年型の価格は107万6250円だった。新型はそのおよそ1.5倍だが、いくらなんでも高くなり過ぎだろうと糾弾するつもりは全然ない。仕上がりは論賛されるべきもので、パワーとハンドリングがバランスしたコーナリングマシンとしての完成度には、ちょっと驚かされた。それゆえ、可能な限り多くの人に体感してほしいと考えている。
600ccクラスのスーパースポーツはそもそも大きなマーケットではなく、近年はさらに縮小傾向にある。スーパースポーツとはすなわちスペックの高さに意義があり、その欲求に素直なユーザーは、1000ccクラスを求めるからだ。実際、ホンダがこの新型に課した国内販売計画台数は年間1000台にすぎず、ユーロ5の排ガス規制を通していないため、欧米に投入される予定もない。いわば、日本と東南アジアだけの局地戦用マシンとして用意されたのである。
目的は単純で、アジアロードレース選手権の制覇だ。そこではヤマハやカワサキが暴れまわり、ホンダは防戦を強いられてきたのである。それがどうにもガマンならない。とはいえ、そのためだけにばく大な開発コストは割けない。だったら、今あるモノを生かし、そのポテンシャルを最大限に引き上げよう。そういうプライドとビジネスのせめぎ合いの結果が、今回の“ビッグマイナーチェンジ”なのだ。...