“本物”が放つ輝き
昔ながらの味わいを守り続ける「ジープ・ラングラー」と、電子制御によって武装し、ぐっと現代的に変身した新型「ランドローバー・ディフェンダー」。この2台で林道に繰り出し、日常生活には過剰ともいえる本格オフローダーが人気を集める理由を考えてみた。
スタックしたことある?
振り返ればスタックの多い生涯を送ってきました。恥ずかしながら、国内はもとより世界各地で、それこそケニアでもタイでもスコットランドやフレンチアルプスでも、さらには酒匂川の河口でもハマったことがある。しかもそのほとんどが4WD車だ。4WDだからこそ、つい、ちょっと踏み込んでしまうのである。今でも忘れられないが、RACラリーの取材時に、スコットランドのキールダーの森の中でフォレストレンジャーのディフェンダーにレンタカーを引っ張り出してもらったこともある。ドロドロの林道にも入るだろうからとわざわざ「ボクスホール・カリブラ」の4WDを借りたのに、滑って道路脇のディッチにまんまとハマり、人力ではどうにもならず途方に暮れていた時にヒーローのようにレンジャーのオジサンがさっそうと現れ、瞬く間に引っ張り出してくれた。4WD車への過信と言われても仕方がないが(レンジャーにもしっかり説教された)、要するに、おしゃれな都会派SUVなどは一生縁がないような場所に踏み入れば簡単にスタックできるというわけだ。
そういう経験では人後に落ちない(?)私だが、神様に見えたレンジャーのディフェンダーの他にももうひとつ特別な思い出がある。ナミビアをディフェンダーで1週間走ったことだ。ランドローバーには昔からカスタマー向けに普通では行けないような場所を走るツアープログラムがあり、それこそナミビアやボツワナからインドネシアやベリーズまで、砂漠やジャングルを自分で走る冒険ドライブツアーを企画している。かつて私が参加したのもそれで、もちろん地元に詳しいランドローバーのエキスパートが随行してくれるから、英語でコミュニケーションが取れる本当のアウトドア好きならば一度は試してほしい。
その際にはナミブ砂漠の巨大な砂丘のてっぺんまでディフェンダーで登ったし、ワジ(干上がった川床)をほぼ一日中走ったこともある。宿に着いた時には細かな砂の抵抗に負けないようにスロットルペダルを踏み続けた右足がしびれて感覚がないほどだった。ディフェンダーで長い距離を走るには相応のタフネスが要求される。最後に訪れたオンガバ・ロッジ(山手線の内側ほどの広さのプライベートリザーブ)では珍しくクルマから降りて徒歩(普通の国立公園では車上から見るだけ)で野生動物に近づいて見学できるアトラクションがあったが、その際のクルマもやはりディフェンダーだった。ちなみにガイドは万一に備えて大口径ライフルを持っているが、引き金を引いたら(引くような状況に陥ったら)即クビだという。アフリカではディフェンダーか、そうでなければ「ランクル」がゲスト用の高級車なのである。しかもディフェンダーは「レンジローバー」などとは違って動力を取り出して使うアタッチメントが豊富に用意されており、「ウニモグ」のような特殊作業車あるいは農耕車として使うこともできる。というわけで、ランドローバーに対する私の信頼感は絶大だ。それゆえ大変身した新型を見た時の衝撃は他の人より大きかったはずである。...