“機能”を追わない勇気
いよいよデビューした新型「ホンダ・フィット」。従来のホンダ車とはひと味違う価値観のもとに開発されたという4代目は、どんなクルマに仕上がっているのだろうか。ハイブリッドの最廉価グレードを連れ出して確かめた。
市場を問わない共通ニーズ
フィットは通算4世代目となる新型で初めて、プラットフォームの新開発をしなかったという。そして“心地よい”という開発キーワードが、スミズミにまで行き届いたクルマである。場合によっては“やりすぎ?”の技術開発もいとわないイケイケの技術者が多く、負けず嫌いで“世界一”が大好きで、モータースポーツでの自分たちの輝く歴史に誇りを持つホンダとしては異例のユルさ(?)だが、それこそが新型フィット最大の特徴だ。
「低燃費、広い室内、バリューフォーマネーなどの“機能的価値“が歴代フィット最大の価値でした。しかし、それらは今や当たり前で、積極的に選ばれる“付加価値”になりません。じゃあ、新しい付加価値とは……を考えて、われわれ本田技術研究所内の“ヒト研”というグループが開発した“画像を用いた潜在的ニーズ調査”を実施しました。そこから導き出した、日本やタイ、インドなどの先進国、新興国を問わない共通のニーズが“心地よさ”だったんです。
当初はプラットフォームを新開発するつもりでしたが、そうやって、さらに軽量化したり室内を広くしたりするのは、それこそ従来の機能的価値を伸ばすことでしかない。そこで、今回は既存のプラットフォームのポテンシャルを突き詰めて、熟成してみることにしました。
開発中は“資源の再配分”という表現をよく使いました。これまでなら機能的価値の進化のために使っていた資源を、今回は心地よさのために投入することにしたのです。現場にも“カタログ燃費は上げない”とか“広くしない”とあえて言明して、かわりに心地よさを徹底的に追求しました。プラットフォームこそ新開発せずとも、そのぶん、心地よさを実現する部分は遠慮なく新設計したり、新しい部品を惜しみなく入れたりしました」
……とは、新型フィット開発責任者の言葉だ。こう聞くと、新型フィットがなぜこういうクルマになったかが少し理解できる。...