ストレートな変化球
新たなスポーツカー像を提案するというマクラーレンのニューモデル「GT」に試乗。利便性の高さが特長とされ、グランドツアラーを示す名称が与えられてはいるが、その走りのパフォーマンスはスーパースポーツで知られるメーカーの名に恥じないものだった。
座っただけでも非日常
黄金色のマクラーレンGTのディヘドラルドアを跳ね上げて、車内に乗り込む。Dihedralとは、「上反角」という意味で、飛行機の翼端の角度のことをいうらしい。そのディヘドラルなドアは、ボディーの四角いボタンを押すと、ぷかりと浮き上がり、適当なところをつかんで引き上げると、ごく軽い力でそのまま跳ね上がる。油圧が大きなドアを押し上げているのだ。
ドアが跳ね上がると、カーボンのバスタブの部分がサイドシルとして残るから、写真で見ると、「ロータス・エリーゼ」に乗り込む並みに乗り降りが大変のように思えるけれど、全然そうではない。エリーゼは、それが長所でもあるけれど、ボディー全体がちっちゃい。エリーゼはホイールベースが2300mmしかない。マクラーレンGTは2675mmある。375mmの差が大きな差になっている。
試乗車の内装は白と黒の2トーンだけれど、どうしたって白いほうに目がいく。白いレザーは汚れちゃうので、いかにもぜいたくである。でも汚れを気にしていると座れないので、もうしわけないけれど、座っちゃう。シートは座ると見えなくなるので、白いことは忘れ得る。ドアのほうを眺めると、普通の前ヒンジのドアだと、ドアが開いている状態でも、ヒンジの近くは比較的に閉まっているわけである。でも、ディヘドラルドアだと、ボディーがヘラでスッポリ切り取られたみたいにサイドシルの断面が見えて、地面、ないしは隣のクルマのボディーの下のほうが目に入ってくる。非日常的で、新鮮な景色だ。
ドアを閉めて、ドアミラーを確認すると、リアのエアダクトが映っている。四角形のダクトがボディーからはみ出していて、「フォードGT」乗ったことないのに、フォードGTに乗っているような気分になる。映画『フォードvsフェラーリ』を見た影響かもしれない。
コックピットはモダンで機能的、だけれど、なにがどこにあるのか、わかりにくい。オーナーのみぞ知る、というつくりになっている。エンジンのスタートボタンは、センターコンソールの前方付近にある。なので、そのボタンを押す。そうすると、M840TEと呼ばれる、マクラーレンの90度3994cc V型8気筒DOHC 32バルブ+ツインターボチャージャーが爆裂音をあげて、目覚める。...