驚くべき総合力
アストンマーティン初のSUVとして開発された「DBX」。2020年春の発売を前に中東・オマーンで試乗した新型車は、スポーツカーブランドの血筋を感じる操縦性と、予想以上の実用性を兼ね備えていた。
さらなる成長への一歩
プレミアムカーよりも1クラス上にあたるラグジュアリーカーのマーケットは世界的に拡大傾向にある。ラグジュアリーカーの代表的なブランドであるフェラーリ、ランボルギーニ、アストンマーティン、マクラーレン、ロールス・ロイス、ベントレーの5ブランドは2018年にグローバルで3万9971台を販売したが、これは2014年の3万0177台に対して約32%の伸びにあたる。同じ期間にメルセデス・ベンツ、BMW、アウディの3ブランドはおよそ19%セールスを増やしたので、ラグジュアリーブランドはそれを5割以上も上回るペースで急成長したことになるわけだ。
といっても、各ラグジュアリーブランドは決して手をこまねいていたわけではなく、さまざまな努力を重ねてこれだけの成長を達成したのである。例えばロールス・ロイスは10年前に行った市場調査で今後は若年層の富裕層が増大することを予測。そうしたトレンドにマッチしたコミュニケーション戦略とモデル開発を行った結果、いまではBMWグループで最も若い平均顧客年齢を達成し、こうした成果はセールスにも着実に反映されていると同社代表のトルステン・ミュラー-エトヴェシュ氏は胸を張る。
いっぽう、スポーツカー界の雄であるフェラーリは2018年に9251台を販売し夢の大台まであと一歩と迫り、2019年は一年間に5モデルもの新型車を発表した。これは年間2モデル程度だった従来のペースを大きく上回るものだ。
こうしたラグジュアリーブランド界にあって最もアグレッシブな成長戦略を描いているのがアストンマーティンだろう。アストンマーティン・ラゴンダのアンディ・パーマーCEOは、創立100周年が過ぎた2015年にセカンド・センチュリー・プランを発表。2016年から2022年まで毎年1台ずつニューモデルをリリースし、以降はそれら7台をリニューアルすることで持続的な成長を実現するとの目標を掲げた。ちなみにその7台とは、2016年が「DB11」、2017年が新型「ヴァンテージ」、2018年が「DBSスーパーレッジェーラ」ときて、2019年はこのリポートの主人公でもあるDBXをローンチ。2020年には次世代「ヴァンキッシュ」、そして2021年と2022年にはラゴンダブランドからSUVとサルーン(いずれもEV)を送り出す計画だ。
つまり、アストンマーティン初のSUVであるDBXは、昨今のブームにのって安易に生み出されたわけではなく、同社の成長戦略を支える大切な柱の一本として企画され、現在その開発が総仕上げの段階に入ったところなのである。今回は、2020年春のデリバリー開始に向けて懸命の熟成が進められているDBXのプロトタイプに中東のオマーンで試乗するチャンスを得たので、そこで得た情報とDBXの第一印象をリポートすることにしよう。...