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『ドクターX』『逃げ恥』だけじゃない マスもコアも“豊作”だった10月期ドラマ

『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』(テレビ朝日系)最終回より(C)テレビ朝日

『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』(テレビ朝日系)最終回より(C)テレビ朝日

  平均21.5%と爆発的な高視聴率を叩き出し、今年の民放連ドラN0.1ヒットとなった米倉涼子主演『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』(テレビ朝日系)をはじめ、出演者が踊る“恋ダンス”がムーブメントとなった新垣結衣&星野源の『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)など、今期はテレビドラマが久しぶりにエンタメシーンを大いに賑わせていた。一方、マスで話題になった同2作以外にも、『砂の塔〜知りすぎた隣人』(TBS系)『黒い十人の女』(日本テレビ系)『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日系)『勇者ヨシヒコと導かれし七人』(テレビ東京系)なども、それぞれのコアファンから熱い支持を受けていた。ドラマ不振が叫ばれて久しいが、良質なドラマが豊作だった今期の盛り上がりは、エンタメシーンにおける“テレビドラマの復権”のきざしとする見方も出ている。

王道ドラマが大ヒット。添えられた“遊び心”も後押しに

 今期は『ドクターX』のような“王道”ドラマのほか、同じく恋愛ドラマの“王道”で視聴率が異例の右肩上がりを見せた『逃げ恥』、また『黒い十人の女』のような実験的試み、もしくはチャレンジングなドラマの登場など、幅広い作風のドラマが揃った。“テレビドラマ不振”が“枕詞”のように取りざたされる昨今にあって、視聴率、挑戦の多さ、話題性を考えると、今期は「豊作だった」と言えるだろう。

 まず“王道”で語れば、「私、失敗しないので」の名ゼリフでおなじみの『ドクターX』。主演の米倉人気、シリーズものの強み、そして医療ドラマというヒット要素を兼ね備えた同作は、名ゼリフ通り“失敗”することなく高視聴率を獲得。また“偽装恋愛ストーリー”というこれまた少女漫画などではおなじみ、かつ“王道”の『逃げ恥』は、星野源の歌うエンディングテーマ「恋」に合わせて出演者が踊る「恋ダンス」も注目を集め、さまざまな著名人がネットに恋ダンス動画を公開するブームを巻き起こした。

社会現象になった新垣結衣と星野源の“恋ダンス”『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)(C)TBS

社会現象になった新垣結衣と星野源の“恋ダンス”『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)(C)TBS

「最終回が放送された同じ日に、アメリカのケネディ大使らをはじめ駐日アメリカ大使館の職員らが踊る『恋ダンス』動画がネットにアップされるなど、これは“社会現象”と言ってもよいでしょう。新垣さんの可愛さ、星野さんの“ムズキュン”と言われたストーリー展開に加えて、星野さんの楽曲の良さ、スタッフ側がエンディングの『恋ダンス』部分を抜き出してネットにアップしたのも功を奏したようです。忘年会シーズンにこの企画を持ってきたのも上手い手ですよね(笑)。上手さで言えば『ドクターX』も同様。院長回診などのいわゆる“大名行列”を“集団行動”にしたおなじみのシーンでは、第7話にふたつの集団が美しくクロスする、マスゲームのような場面が話題となりました。結果論ではありますが、これらの好調は、“王道”にあぐらをかかず、遊び心や『視聴者におもしろいものを見せたい』というたゆまぬ努力、そして、そうした制作スタッフの想いが結実したものと思われます」(テレビ誌ライター)

“攻め”のドラマも好調。お歴々ではない脚本家たちの躍進

ミュージカル回などの新しさも見せた『勇者ヨシヒコと導かれし七人』(C)「勇者ヨシヒコと導かれし七人」製作委員会

ミュージカル回などの新しさも見せた『勇者ヨシヒコと導かれし七人』(C)「勇者ヨシヒコと導かれし七人」製作委員会

 一方でチャレンジングだったり、やや尖った作風のドラマも好調だった。松嶋菜々子が悪役をしっとりと演じ、犯人が読めない展開でも注目された菅野美穂主演のオリジナル・サスペンスドラマ『砂の塔〜知りすぎた隣人』は、SNSなどで「まさかあの人が『ハーメルン事件』の犯人だったなんて……!」「最終回で号泣してしまった」などと話題に。また小ネタと、いい意味でバカバカしい笑いで人気の福田雄一氏が手掛ける『勇者ヨシヒコ』シリーズ最新作『勇者ヨシヒコと導かれし七人』、織田裕二の作り出した名探偵のキャラが賛否両論を巻き起こし、“織田が新境地を拓いた”との声も聞かれた『IQ246〜華麗なる事件簿』(TBS系)もネット記事などで多く取り上げられることになった。
 さらにはバカリズム脚本で、刺激的なセリフとキャストの怪演でネットがお祭り状態となった『黒い十人の女』、TOKIOの松岡昌宏の女装姿が注目され、出オチ感で終わると思いきや、しっかりとしたストーリー展開と家事のお得ネタが好評を博した『家政夫のミタゾノ』。こうして挙げていくと、やはり今期の“豊作感”が強く印象づけられる。この“豊作感”について前出のライターは「俳優陣の魅力のほか、脚本家の力による部分も大きい」と分析する。
「例えば『逃げ恥』脚本の野木亜紀子氏は、同じく新垣さん主演の『空飛ぶ広報室』(2013年/TBS系)や『掟上今日子の備忘録』(2015年/日本テレビ系)の脚本も担当しており、新垣さんの魅力を知り尽くしている。さらに映画『俺物語!!』(2015年)『アイアムアヒーロー』(2016年)のヒットなど、原作の魅力を損なわない手腕も高く評価されています。『砂の塔』脚本の池田奈津子氏は、上野樹里主演『アリスの棘』(2014年/TBS系)などオリジナル脚本に定評あり。『ミタゾノ』脚本の八津弘幸氏は、あの『半沢直樹』(2013年/TBS系)や『下町ロケット』(2015年/TBS系)を手掛けた隠れたヒットメーカー。コメディ作品に定評がある福田雄一氏や芸人のバカリズムは言うに及ばず。映像作品は“脚本が9割”という声もよく聞かれます。低迷を叫ばれるテレビドラマ界は、逆に言えば『失うものがない』とも言えます。思い切った実験的な試みが打ち出せる環境であり、力のある脚本家、異業種からの新手脚本家が次々とチェレンジングな企画に参加していくことで、ドラマ界も息を吹き返すかもしれません」(同ライター)

 近年のテレビドラマを語ると、お約束のようについてくる“視聴率低迷”の文字。だが今期のエンタメシーンにおけるテレビドラマの話題の盛況ぶりを見れば、そこに回復の兆しも感じられなくはない。今期の豊作だった話題のドラマ群は、これまでのマイナスの流れを上向きに変える“布石”となった可能性がある。次のクールにこの流れが引き継がれていくことを期待したい。
(文:衣輪晋一)

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