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韓国映画特集『話題作が続々!なぜ今!?ファン層に変化のきざし!?韓国映画に見える5つの軸』

2013年5〜7月、韓国に関係する映画の公開が相次いでいる。これは日本の市場のニーズなのか、韓国映画が盛り上がっているのか、はたまた社会情勢との兼ね合いなのか。そして、現在の韓国映画はどういう状況なのか、韓流ブーム、K-POPブームが落ち着いた今こそ、韓国映画を通じて見えてくるものとは何かを探ってみたい。関係者へのインタビューから浮かび上がる韓国映画界の今と日本映画界の突破口とは!?

世界をターゲットにする韓国から学ぶべきこと

アミューズ会長 大里洋吉氏 アミューズ・大里洋吉会長

韓国映画市場最高の観客動員数を記録した『10人の泥棒たち』が、ライブ・ビューイング・ジャパンによって、2週間限定で公開される。この映画を韓国でたまたま観て、 映画館を出る前に配給会社に連絡して即買い付けたというアミューズの大里洋吉会長に、韓国映画界の現状と、今後の日本がそこから学ぶべきこと、どう関わって世界との競争力をつけるべきなのかを聞いた。

【またしても韓国にやられたという感じがした】

10人の泥棒たち 10人の泥棒たち

10人の泥棒たち

10人の泥棒たち

――大里会長は、『シュリ』を観たとき韓国映画のレベルの高さに驚いてすぐに買い付けたそうですが、『10人の泥棒たち』はどういう感想を持たれましたか?【大里】  スタンドインなしでワイヤーアクションを駆使したダイナミックな映像と、緻密なストーリー展開、韓国と香港の役者のセレクトや、ロケ地のマカオや香港と韓国とのバランスなど、またしてもやられたという感じがしました。だから、日本もこうした規模の作品が作れないのかという自省も込めて、僕らもさぼっちゃいけないなと思って配給するしかないと考えました。

――今回の公開は、2週回限定、全席指定、全スクリーンの8割が吹替え版など、新たな取り組みに見えますが、これはどこにゴールに定めた戦略なのでしょうか? 【大里】 奇をてらっただけです(笑)。こんなにおもしろい、作品力のある映画なんだから、2週間限定で1800円で値引きなし、全席指定だぞっていうちょっと強気の姿勢なんですよ。それに対しての反発があるほうがむしろいい。そういう話題が出ることで本当にいい作品に注目が集まることにつながったり、今の日本で当たり前になっているエンターテインメントの楽しみ方に一石を投じることができれば、という思いもあります。あと、この映画は宣伝のテレビスポットをいっさい打たないんです。クチコミでどこまで広がるかが肝になっていて、既存の配給宣伝のやり方へのアンチテーゼではないですけど、挑戦ではあります。ただ、吹替え版だけは、この映画には欠かせないと思いました。字幕にとらわれていると、役者の演技とか、表情とかが見えない。絶対に吹き替えで観たほうが役者の演技のすごさを堪能できると思います。

――こうした大型の映画を作れるのは、韓国が国策として映画産業にお金を投じて、映画人を本気で育てているからだと聞きますが。 【大里】 芸能産業っていうのは、自動車や家電産業に比べると規模は小さいです。でも、だからこそ、国が支援すべき分野だと思います。短期的には利益は少ないと思われるかもしれませんが、長期的に考えてみると、その国の文化が外国で人気になれば、他の産業も一緒に伸びる可能性があります。日本も海外で文化事業をすることはありますが、交流して満足しているだけじゃ何にもならないよと、他の国はもっと積極的にやっているのにという、怒りのようなものを日々感じています。

【ハリウッドなど海外進出のための日本の突破口】

10人の泥棒たち

10人の泥棒たち

10人の泥棒たち

――大里会長は、『シュリ』を日本でヒットさせました。その後、韓流ブームがありましたが、それが落ち着いて、もう一度硬派な韓国映画をやろうと考えて、この『10人の泥棒たち』を配給しようと思われたんでしょうか? 【大里】 韓国映画をブームにするというのとは違いますけど、『シュリ』を観て、我々は「韓国は世界をターゲットにしてこんなにレベルの高い映画を作っている」って見直すようになりました。その後、韓国映画をとにかく買い付けるような勢いが一段落して、またちょっとその気持ちが薄れてきている状態になったので、「やっぱり違うだろう、良い部分は学ぶべきだ」ともう一回やろうと思ったんですよ。それから、日本で韓流ブームがあったことで、映画を粗製乱造する時代もあった。それで一回は韓国の映画産業が落ち込んで、それではいけないとなって、またクオリティを重視することに力を入れ始めたんです。その結果としてティピカルなのが、この『10人の泥棒たち』なんです。

――とはいえ、海外展開が順調な日本映画もありますよね。アミューズの俳優の出演する作品では、佐藤健さんの『るろうに剣心』や福山雅治さんの『そして父になる』などが、海外でも受けていると聞きます。 【大里】 『るろうに剣心』は、シンガポール、台湾、フィリピンとか香港でもいい成績を残しました。健のあの明るい感じが漫画原作と合っていていいでしょ。楽しいものは海外でもちゃんと評価されます。福山の作品はまた違って、人間ドラマでよくできている。実はまったく企画のことはタッチせずにいたんで、カンヌに行って久しぶりにレッドカーペットで福山に会いました。映画館では、2000人くらいの観客が、笑って泣いていたんですよね。

――佐藤さんや福山さんの例以外に、日本の映画界の突破口になることは何だと思われますか? 【大里】 我々としては、韓国映画を配給して、そこから映画の作り方を学んだり、刺激を受ける以外にも、共同制作したり、出資しようという計画はあります。日本人は、よその国のことをもっと学ぶべきだと思います。それから、日本のなかでいいところは、まだアイディアをたくさん持っているところです。でも、そのアイディアのある良い人材は映画界ではなく、漫画界に多く行ってしまっているのが現実です。だから、漫画界と組んで、映画を作るっていうのが、今の日本の一番の突破口だと思いますね。ハリウッドや外国で観てもらうためには、アイディアとプロデューサーは日本で、役者と監督は海外から連れてきたってかまわない。そのためには、優秀なプロデューサーを育てないといけないんです。今、細々とではあるけれど、そうしたことを始めてはいるから、その企画が形になってきたら、また取材に来てください。

(文:西森路代)


PROFILE


大里洋吉氏
アミューズ 会長/ライブ・ビューイング・ジャパン 会長


1946年青森県生まれ。
立教大学英文科卒。1969年、渡辺プロダクション入社し、キャンディーズなどのマネジメント手掛ける。渡米後、1978年アミューズ設立、代表取締役就任。サザンオールスターズや福山雅治、富田靖子、深津絵里など多くのアーティストを育ててきた。
『シュリ』『JSA』『猟奇的な彼女』など話題の韓国映画を日本で劇場公開するなど、映像ビジネスも積極的に展開している。舞台では『WE WILL ROCK YOU』『ジンガロ』など著名な作品を招聘。さらに今年4月にミュージカル専門劇場『アミューズ・ミュージカルシアター』も六本木にオープンさせた。引き続き、韓国作品を上演予定。

映画情報

10人の泥棒たち

 韓国を拠点に活動する窃盗団。美術館所蔵の秘宝強奪を華麗に成功させた彼らは、巨大カジノでの新しい計画を聞かされる。集結した6人は、それぞれ人生最高の仕事を夢見て香港に向かう。指定された場所で彼らを待ち受けていたのは中国人窃盗団の4人組。集められた“10人の泥棒たち”のターゲットは、幻のダイアモンド“太陽の涙”。チームでの強奪計画は、全て完璧なはずだった――。泥棒たちが繰り広げるどんでん返しの連続の予期せぬドラマ、CGを使用しないライブ・アクション、華麗でゴージャスな盗みのテクニック、そして強奪計画を狂わせる3つの愛。緻密なプロットから織りなされるトリック・エンターテインメントの最高傑作!

監督:チェ・ドンフン
出演:キム・ユンソク キム・ヘス イ・ジョンジェ チョン・ジヒョン サイモン・ヤム
【予告編】 【OFFICIAL SITE】
2013年6月22日(土)全国2週間限定公開

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【インタビュー】
 
 

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