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就職氷河期世代のリアルな声も…なぜいま支援を? 厚生労働省に聞く就職支援「社会参加支援や就労準備へのサポートも」

 バブル崩壊後の1990〜2000年代のいわゆる“就職氷河期”に就職活動を行い、現在も様々な課題に直面している人たちに向けて、厚生労働省では正社員化の実現から多様な社会参加までの支援を行っている。現在も安定した就職を希望しているが、不本意ながら非正規雇用に悩む人も少なくない。なぜいまこのような支援活動が活発化しているのか? ORICON NEWSでは、就職氷河期を体験した経験者を交え、現状の課題と支援、雇用に関する各専門窓口について厚生労働省参事官(若年者・キャリア形成支援担当)の今野憲太郎さんに話を聞いた。

⇒『就職氷河期世代活躍支援』についてはこちら!(外部サイト)

それぞれの状況に寄り添った支援と相談窓口を設けた「就職氷河期世代活躍支援事業」

──おふたりの就職エピソードを教えてください。
森岡真一郎さん 2000年に大学を卒業しましたが、就職難の時代でした。当時は新卒にしか門戸を開いていない企業も多く、同級生の中には、内定が取れず翌年に“新卒”として就職活動をするために留年する人も少なくなかった。ただ僕自身はそうした経済的な余裕もなく、自分のせいでもありますが、サークル活動に夢中になるあまり単位もギリギリでした(苦笑)。結局、就職活動に本腰を入れたのは大学卒業後で、さらなる狭き門に苦労したのを覚えています。
サトウマイさん 1998年に高校を卒業し、当時は夢を追いかけ、就職はせずアルバイトとして百貨店で働きました。その後、就職を考え始めた2002年頃に、40〜50代社員が大量に早期退職したタイミングで、アルバイトの中から1年後には正社員の道があると言われ、契約社員が募られました。ただそれも二転三転して、結局、正社員になれたのは1年半後でした。
──厚生労働省では「就職氷河期世代活躍支援事業」を行っていますが、2人はその対象となりますか?
今野憲太郎さん 厚生労働省が定義する「就職氷河期世代」とは、バブル崩壊後の1990〜2000年代、雇用環境が厳しい時期に就職活動を行い、その雇用環境の厳しさから、いまなお様々な課題に直面している方々を指します。就職にご苦労されたということですが、その後、“不本意な就労”を強いられていると感じたことはありましたか?
サトウマイさん 契約社員の頃は、就労時間や仕事内容は正社員と同じなのに、給料は格段に低く、ボーナスもない。また正社員になってからもバーゲン時期は家に帰れないほど忙しく、自腹でホテルに泊まったこともありました。ただ、この就職難の時期に「大手と言われる企業に就職できたんだから」と、妥協に妥協を重ねながら働いていました。

森岡真一郎さん 僕は卒業から3ヵ月後に就職が決まり、現在も同じ会社に勤めています。不本意なことが全くないわけではありませんが、人間関係が良い職場なので、転職を考えたことはなかった。そもそも就職に苦労したので、「あんな思いは二度としたくない」という気持ちがあります。

今野憲太郎さん なるほど。もしも現在の職場から転職したいという希望があるならば、十分に「就職氷河期世代活躍支援事業」の対象だといえます。また、就職氷河期世代の状況は実に様々で、なかには一度も就労をしたことがない方も少なくありません。「就職氷河期」といわれる時代が現在にも影響し、就労が困難な方に、それぞれの状況に寄り添った支援と相談窓口を用意する。それが「就職氷河期世代活躍支援事業」の概要です。
⇒『就職氷河期世代活躍支援』についてはこちら!(外部サイト)

転職へのハードルを感じる「就職氷河期世代」は、非正規雇用でも働き続けている人が多い

──「就職氷河期世代」特有の就労課題とは?

今野憲太郎さん 例えば、正規雇用の機会がなく、非正規雇用のまま働き続けている方も多くいます。あるいは過酷な労働環境や職場の人間関係に苦しみながらも働き続けて心を病んでしまう方、適切な時期に就職ができず、または早期に離職したことがきっかけで、長年にわたってひきこもりの状態になってしまう方も少なくありません。

森岡真一郎さん ひきこもりの話はよく聞きますが、それは就職氷河期世代に特有なのでしょうか?

今野憲太郎さん ひきこもりはあらゆる世代に共通する課題です。ただ就職氷河期世代に関して言えば、原因が就職難にあったことも多い。また森岡さんはずっと同じ職場で働いていますが、そもそも転職をイメージしたことがなかったのではないでしょうか?

森岡真一郎さん 確かに僕より下の世代は、転職に対するハードルが低く、少しでも不本意に思うことがあると辞めてしまう人もいます(苦笑)。そういう意味で僕たち世代は、変に根気があるのかもしれません。

今野憲太郎さん 若い世代の転職に対する抵抗感が少ないのは、就職氷河期世代とは真逆の売り手市場ということもあるかもしれないですね。

サトウマイさん 私たちの親世代は、終身雇用の時代でした。その神話も壊れていたのに、「同じ職場で長く働くことは良い」というイメージが、私自身にも根強くありました。

今野憲太郎さん 健全な労働環境を求める上で、転職は決して悪いことではありません。ただ様々な事情や時代の価値観から、それが叶わなかったのも就職氷河期世代の特徴です。また、ひきこもりの状態になっても、親が元気なうちはなんとかなっていたかもしれません。ところが40〜50代前半になると親も高齢になり、経済的に困窮してしまうケースが顕在化し始めた。それが「就職氷河期世代活躍支援事業」がスタートした2020年度頃の状況でした。
⇒『就職氷河期世代活躍支援』についてはこちら!(外部サイト)

ハローワークは“失業したオジさんが行く”だけの場ではなくなった…全世代に向けた専門窓口で雇用問題解決へ

森岡真一郎さん ハローワークは、いわゆる公共職業安定所のことで存在は知っています。例えば、一度も正社員になったことがない人でも受け入れてくれるのでしょうか?

今野憲太郎さん もちろんです。現在のハローワークには複数の専門窓口があり、その中には就職氷河期世代の支援に特化した相談窓口もあります。ちなみに2020年4月から2024年7月までに、ハローワークから正規雇用に至った就職氷河期世代の方は49万2726人。そのうち就職氷河期世代の専門窓口から正規雇用に至ったのは6万5797人です。

森岡真一郎さん そんなに…。そもそもハローワークは、「失業したオジさんが行く」といった暗いイメージがありました。

今野憲太郎さん そのイメージを払拭するように、私たちも頑張っているところです。現在、全国のハローワークに来訪される方は、新卒の若者からミドル世代、シニア世代、子育て中の女性等と実に多様です。これは、その方の置かれた状況に応じた専門窓口を開設したことが大きかったと感じています。今はあらゆる世代が働ける時代ですので、森岡さんも転職を検討する場合は、ぜひハローワークをご利用いただければと思います。
⇒『ハローワーク』についてはこちら!(外部サイト)

就職未経験者やひきこもりを対象とした機関も…何より大切なのは孤立しないこと

──ただ、先ほどもお話に出たように、学校卒業後、一度も働いたことがない方はハローワークでのマッチングも難しいように思いますが、いかがでしょうか?

今野憲太郎さん 「一度も働いたことがない」という方でも、その状況は様々です。例えば、「働く意欲はあるけれど自信がない」「人と上手く話せない」など、働く手前のサポートが必要な方は、全国177ヵ所にある「地域若者サポートステーション(サポステ)」を訪れていただければと思います。

サトウマイさん こちらは“若者”だけが対象なのでしょうか?

今野憲太郎さん 支援対象は15〜49歳。様々な就労支援プログラムを通して、働く力を引き出すことを目的とした支援機関です。プログラムの内容はビジネスマナーの基礎から職場実習まで様々です。その方の特性や状態に合ったメニューを提供し、職場定着に至るまでを全面的にバックアップします。2023年度は利用者の71.7%が就職等に結びつきました。
⇒『地域若者サポートステーション(サポステ)』についてはこちら!(外部サイト)
──では長年にわたってひきこもりの状態にある方へは、どのような支援がありますか?

今野憲太郎さん すべての都道府県・指定都市に設置されている「ひきこもり地域支援センター」や市町村の相談窓口へご相談いただければと思います。福祉や医療との連携といったように、必要となる支援も人それぞれ異なります。それぞれの状況に応じた専門の相談員が、社会との繋がりを取り戻すためのお手伝いをいたします。
⇒『ひきこもり等の相談・サポート 各種支援機関』についてはこちら!(外部サイト)

就職氷河期世代の需要は高い…人手不足の中、粘り強さや組織の潤滑油としての期待も

サトウマイさん 先ほど今野さんが「転職を検討したらハローワークへ」と言っていましたが、実際に就職氷河期世代に対する企業のニーズはあるのでしょうか?

今野憲太郎さん 私の実感としては、期待している企業もたくさんあります。その理由には人手不足があります。特に就職氷河期世代は企業側も雇用を絞ったことで、現在多くの企業がその世代の人員不足に困っています。組織が持続可能であるためには、あらゆる世代の層が必要です。ところが時代背景からも就職氷河期世代はスポッと抜け、その上の世代はこれから定年退職を迎えます。さらに下の世代は離転職への躊躇いが少ない。そういった理由から就職氷河期世代を積極的に求める企業が増えています。

森岡真一郎さん 僕のように就職に苦労した分、そう簡単には離職しない人も多そうです。

今野憲太郎さん まさにそうした粘り強さも期待される理由の1つです。さらに就職氷河期世代には悪い意味での押しの強さがない分、下の世代にとっても良い影響があると評価する企業は多い。いわば組織の潤滑油として、企業の成長発展に寄与できる人材が就職氷河期世代なんです。

サトウマイさん そういう見方をする企業があるなんて驚きました。就職氷河期世代はネガティブにしか捉えたことがなかったので。

森岡真一郎さん そもそも就職も大変だったのに、年を追うごとに選択肢も狭まってしまう世代だと思い込んでいました。まだまだ活躍できる場はたくさんあるし、そのためにも情報収集は大事ですね。
──自分がどの窓口に適しているのかわからない場合、どうしたら良いのでしょうか?

今野憲太郎さん 今日お話しした窓口はすべて地域に根ざしたものであり、横の連携が上手く取れているところがほとんどです。例えばハローワークを訪れた方であっても、就労の手前で準備に力を入れたほうが良い方には、サポステをご紹介することがあります。単なる「たらい回し」ではなく、1人ひとりの事情などを踏まえて、より適切な窓口にお繋ぎすることもできます。何より大切なのは孤立しないこと。そのためにも厚生労働省では、その方の状況に応じた様々な支援機関を設置しています。どの窓口が自分に合っているか迷ったとしたら、まずは自分が話しやすい場所へどこでも良いので相談してください。

(文/児玉澄子 写真/片山よしお)

就職氷河期世代の活躍の場を広げるために

 厚生労働省では、就職氷河期世代の方々の、就職・正社員化の実現、多様な社会参加への実現を目指した支援を実施している。地域ごとのプラットフォームを設け、「ハローワーク」「地域若者サポートステーション」「ひきこもり地域支援センター」「自立相談支援機関」等の地域基盤を活用し、民間支援機関等との連携を図りながら、地域一体となって支援を行う。支援が必要なすべての方に対し、それぞれの状況に合わせたきめ細かな支援が届くようサポートしていく。
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相談先は? 各種機関について

⇒『ハローワーク』についてはこちら!(外部サイト)
⇒『地域若者サポートステーション(サポステ)』についてはこちら!(外部サイト)
⇒『ひきこもり等の相談・サポート 各種支援機関』についてはこちら!(外部サイト)
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