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サンリオ“らしく”ない? バーチャル世界への挑戦はアナログな“王道”と両立するのか

バーチャルサンリオピューロランド エントランスの様子

バーチャルサンリオピューロランド エントランスの様子

 サンリオといえば、誰もが一度は触れたことのあるキャラクターグッズやぬいぐるみでおなじみだ。それぞれの思い出はきっと、いわゆる“アナログ”な温かさであり、“リアル”な手触りをもって感じられているだろう。だが、そんな同社が新たに注力しているのは、バーチャルの世界。サンリオとメタバース? VR? 一見なじみはなく、従来の“サンリオらしさ”とかけ離れてしまうように思うが…。実体を聞いた。

「キティとハグできた!」、東京・多摩市ではなくメタバース上にピューロランド出現

 現在、開催中のメタバースイベント『SANRIO Virtual Festival 2024 in Sanrio Puroland』(3月17日まで)は、今回で3回目。バーチャルのサンリオピューロランド内に出現した巨大空間で、音楽ライブをはじめ、パレードやアトラクション、ゲーム、撮影スポットなど500を超えるイベントが展開。音楽ライブにはサンリオのキャラクターはもとより、人気Vtuberや、CAPSULEのようなアーティストやクリエイターも出演し、VR界隈が沸いている。

Vtuber ぶいごま(V後藤真希)ライブの様子

Vtuber ぶいごま(V後藤真希)ライブの様子

 SNSには「大好きなVtuberのライブをあんなに近くで見られるなんて…」、「キティとハグできた!」、「みんなと一緒にパレードでペンライトを振った思い出は一生モノ」といった感動のコメントが見られた。繰り返すがこれは、東京・多摩市のサンリオピューロランドではなく、バーチャル空間に出現した場所で起きている出来事だ。

 10日間開催された前回は、総来場数230万超えと、メタバースイベントとしては世界最大規模に。開催が4週間に延長した今回は、さらに多くの来場者が見込まれそうだ。

 ──とは言っても、デジタル事情に詳しくない人にとっては「?」かもしれない。サンリオといえば大多数の人にとってはハローキティをはじめとするキャラクターの会社。1960年創業以来、小さなギフトを贈り合うことで生まれる思いやりの心を商品やサービスに込めてきた。

 「多くの方が、幼少期に家族や知人からぬいぐるみをプレゼントされたり、といった経験があると思います。当社の商品もそうした贈り物として愛顧されてきて、その温かい思い出が原体験となり、ファンになったとおっしゃる方もたくさんいます」(サンリオ 事業戦略本部 デジタル事業開発部 ゼネラルマネージャー・町田雄史さん)

デジタルの浸透で変わる子どもの“原体験”、企業メタバースには課題も

ファンタジックな夢の世界にハローキティと一緒に出かける、王道のバーチャルパレード「Dreamin’a Dream」の様子

ファンタジックな夢の世界にハローキティと一緒に出かける、王道のバーチャルパレード「Dreamin’a Dream」の様子

 そうした手触り感のある思い出とともに、サンリオのキャラクターは日本を超えて、今や世界のリアルな日常に溶け込んでいる。

 「しかし、これだけデジタルが浸透した今、デジタルでキャラクターと出会う原体験をする人はますます増えていくと予想されます。すでに、ゲームはもとより知育コンテンツ、あるいはLINEスタンプからキャラクターに入るケースもありますよね。日本でもVtuberが人気なように、キャラクターの在り方やタッチポイントが変わりつつある中、当社の『みんななかよく』の理念をグローバルに届ける上では、デジタルの取り組みは欠かせなくなっています」

 2021年12月に第1回目が開催された『SANRIO Virtual Festival』だが、総合プロデュースを務める町田さんによるとその構想は2019年に始まったという。

 「サンリオピューロランドまで足を運べない方もいて、またリアルな空間にはキャパの問題も。メタバース(仮想空間)なら、そうしたあらゆる物理的な制限を解決できる上に、新たなエンターテイメントも創出できるのではないか。そんな仮説のもと“24時間・365日開園のバーチャルサンリオピューロランド構想”を練っていた矢先、コロナ禍に突入したことも実現を加速させました」

 とはいえ、現時点でメタバースで成功している事例は少ない。事実、多くの企業がメタバースのランドマークや街といったサービスを提供しているものの、訪れてみると人(アバター)がほとんどおらずポツンとしてしまうこともザラだ。

 「サンリオが元よりが大切にしていることでもありますが、VR、メタバースの本質的な楽しさは、”コミュニケーション”にあると当時より仮説を持っていて。1人でバーチャル観光地を巡るような体験もそれはそれで素敵なのですが、我々はまずは、『SANRIO Virtual Festival』という音楽フェスの体裁を取ることで、半強制的に同じ時間に集まってもらう。その中で”好き”の気持ちで共感し、参加者にとって新たな出会いや”なかよく”の輪が広がっていくことを目指したいと。24時間365日いつ行っても楽しいバーチャルピューロランドを目指すためには必要な過程で、新しいエンタメ体験の実証実験的な意味合いが強いスタートでした。テーマパークは賑わっているから楽しいわけで、一人でパレードに向かってペンライトを振っても楽しくないよな〜と(苦笑)」

“サンリオらしさ”は実現できた? 当初は懐疑的な声もあった

リトルツインスターズと宇宙を旅する、シューティングゲーム的要素が盛り込まれた、バーチャルパレード「Twinkle Guardians」の様子

リトルツインスターズと宇宙を旅する、シューティングゲーム的要素が盛り込まれた、バーチャルパレード「Twinkle Guardians」の様子

 だが当初、社内では「サンリオらしい、温かいコミュニケーション=『みんななかよく』がメタバースで実現できるのか?」といった、懐疑的な声もあったという。

 「まだまだ機材など、視聴環境の問題もあるのも事実で、そのためサンリオのファンの皆さんとVRユーザー層には乖離も一定あると思います。実際、はじめに来場されたのは主にVRアーリーアダプターの方々でした。でも、そうした目の肥えた方々が『サンリオがここまで本気でVRをやってくるとは!』と話題にしてくれたのが嬉しかったですね。加えて、制作に参加してくださったクリエイターの方々が、終わってすぐに「来年はどうしましょうか?」と熱を持ってリアクションしてくれたことで、我々もこの事業に対して非常に前向きになりましたし、第3回を迎えてより箱が大きくなってきている感覚はあります」

 新規層といえども、人生で一度もサンリオに触れたことのない人は、ほとんどいないはず。いまだ成功例の少ないメタバースイベントを世界最大級にまで発展させたのは、サンリオが60年以上の歴史で積み上げてきた優しく平和な世界観が、ファンにとどまらずクリエイターやアーティストにも広く認知されているからに他ならない。

 「バーチャルフェスティバルを通して、ものすごく感じるのは、世の中にはまだ知られてない素晴らしい才能やクリエイションが溢れているということ。開催中の第3回目のフェスも約150人のクリエイターさんたちのおかげで開催ができていますが、まだこれからの業界であるために、その皆さんの熱量が非常に高い。我々サンリオは『みんななかよく』の理念のもと、みんなで一緒になって新しいエンタメを作っていきたいと思っています」

 では実際、フィロソフィーの根幹である「みんななかよく」は『SANRIO Virtual Festival』で実現できているのだろうか?

 「同じライブを見た人同士で『セットリストやばかったね』とか、休憩スペースでばったり会って『あっちの会場も面白そうだよ。一緒に行かない?』といった会話がそこかしこで生まれています。特にパレードに感動したという声は多いですね。リアルのパレードでペンライトを振るのは気恥ずかしい。だけどバーチャルなら童心に帰って一心不乱にペンライトを振れた。『みんなでペンライトを振るってこんなに楽しいんだ!』とおっしゃっていた方は本当にたくさんいました。現代ではリアルで知らない人同士が交流することも少なくなっている分、実はバーチャル空間のほうがコミュニケーションのハードルが下がるのかもしれません」

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