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マキタスポーツ『ついにメジャーデビュー!“時代に選ばれた男”が語るオリジナルの定義って?』

芸人、ミュージシャン、コラムニスト、俳優と、さまざまな顔を持つ男・マキタスポーツ。アンダーグラウンドで人気を集め今年芸歴15年目の彼が、アルバム『推定無罪』でついにメジャーデビューを果たす。代名詞とも言える“作詞作曲ものまね”“マキタ式ヒット曲の法則”を踏襲した本作はもちろん、ルーツから彼なりのオリジナルの定義まで、白熱したインタビューを大ボリュームでお届けする。“マキタスポーツ入門”のはじまりはじまり。

マキタ流オリジナルの定義は“人格分の企画”

――このアルバムで、マキタさんなりに90年代にケリをつけたいワケですね。
マキタコンプレックスですよね。僕自体が、そもそもあんまりモノ作りとかに無頓着だった人間で……本当に僕ね、頭の悪いわんぱくな男の子だったんですよ。今別に頭が良くなったかどうかっていうことは置いといてね(笑)。

――意外ですね(笑)。音楽に対してはどのように向き合ってたんですか?
マキタ音楽はモテたい一心で、目立ちたい一心で中2からギターを買ってはじめたんだけど、モテたいっていうだけの動きだから、音楽の面白さなんてわかんないんですよ。

――モテるために。みんな始めはそうですよね。
マキタうん、基本はそうですね。で、音楽の楽しさが初めてわかったのが、長渕剛さんなんですよ。長渕さんがラジオで『ギター講座』っていうのをやっていて、ボブ・ディランだったらこうとか、高田渡だったらこうとか、吉田拓郎だったらこんな感じの弾き方で、こういう歌い方をするみたいなこととかをやってたんですよ。それがすごい面白いなと思ったんです。これだったら出来るなって(笑)。

――それを発展過剰化させたものが今の「作詞作曲ものまね」なんですね。
マキタまさにそう。で、僕はもう今の「作詞作曲ものまね」の原型っていうのは、中3くらいからやってたんですよ。で、友だちの前でちょっと披露したりとかして。

――いや、本当に90年代への落とし前じゃないですけど、マキタさん自身、オリジナルとオリジナリティの境界線をどう考えてるか聞きたかったんですよ。
マキタうんとね、境界線っていうかね、さっきもチラッと話した分数の図式“人格分の企画”って考えてますね。企画っていうのは、音楽的ないろいろなジャンルだと思ってください。人格っていうのは、アーティスト性とか作家性だと思うんですけど、それが“2分の2で=1”になってればその人らしい、ちゃんと表現になってるっていうことだと思うんですよね。

――なるほど。
マキタそれが一致してないものってあるわけですよ。で、開きがあったりすると、ものすごく面白いものになるっていうのが僕の基本的な考え方です。“ノベルティーソング”って言ってますけど、そういう面白い音楽っていうのは、ズレを扱うから面白いことになるんです。昔、とんねるずが「雨の西麻布」って曲を歌ってましたけど、あれは“とんねるず分のムード歌謡”っていうことです。で、とんねるずとムード歌謡のギャップが必然的じゃなくて、一体化してないから面白かったんですよ。

――ある意味、「意図的ですよ!」というのを全面に出すことで、オシャレだったりクールだったりするっていうことですよね。
マキタそういうことです。それが面白いっていうことに転じる遊びだったと思うんですよ。その遊び方には凄く“オリジナル”な空気感があったと思う。それを逆手にとって面白く“仕組み”を見せているのが「作詞作曲ものまね」なんですよ。“マキタスポーツ分のサンボマスター”っていう遊びですよ。

――オリジナルの定義って曖昧ですよね。今マキタさんが言った考え方自体がもう完全にオリジナルでもあるわけで。
マキタうん。だから「十年目のプロポーズ」とかでやってることっていうのは、まさにJ-POPというものの最大公約数として“マキタスポーツ分のJ-POP”にしてるんですけど、個人的なメッセージも入れたかった。“みんなで手をつなごう”って嘘くさいじゃないですか。地球の裏側の森林破壊のこととかを思いながら歌うのって嘘くさいじゃないですか。もっと身近な、もう半径1m以内にいる人のことの惚れた腫れたとか、恨み辛みとか……そっちの方がやっぱリアルじゃないですか。

――地球に感謝する前に、目の前にいる嫁に感謝することの方が優先順位は高い。
マキタ嫁に感謝っていうことは、僕のまったく嘘がない、そういう気持ちですよ。そりゃ愛憎半ばですよ。そりゃ、ただ単に感謝とまでは言い切れないですよ(笑)。

――でも、それがリアルですよね。
マキタそう! そういうことが“リアル”じゃないですか。だから俺が歌うときには地球規模のこととかじゃなくて、やっぱそういうこととかを歌わないと、やっぱり体重乗せられないわけですよ。歌でもやっぱり魂を込めるってできないじゃないですか。

――そうですね。
マキタだから、多かれ少なかれそういうアーティストという人たちは、ちゃんとその作業をやってるはずなんです。自作曲というか、シンガーソングライトをするんですね。だから、僕はそれを皮肉って、これをやったら最大公約数的にJ-POPらしいものになるでしょ?って。お決まりの手法が流行りすぎてるんですよっていうこととかを皮肉っぽく。めちゃくちゃ皮肉っぽくやりますけど。でも、やっぱりそれだけじゃ物足りないんですよっていうことを言いたかった。

――それが提示できるのが今のマキタさんですよね。マキタさんって今すごく良い“立ち位置”にいると思うんですよ。アンダーグラウンドとオーバーグラウンドの狭間にスポっと上手くハマってるというか(笑)。
マキタ僕は……昔から良くも悪くも中途半端っていうか(笑)。田舎でもわんぱくな感じで生きてきたけど、ヤンキーではないですよ。ヤンキーっていうものにもあまり馴染めなかったし、かといって完全な文系の方に来ることもなかったし。

――常に中道を生きてきたと(笑)。
マキタだから「音楽サイコー!」みたいなこと言ってる人たちとはちょっと馴染めない俺がいて。お笑いでも「芸人っていうのはさぁー」みたいなこと言ってる奴とかも「うわっ、気持ち悪い!」とかって(笑)。

――それは2曲目の「芸人は人間じゃない」にも表れてますよね。
マキタそうそう(笑)。だからオーバーグラウンドにいる人たちにも、ハッキリ言って馴染めないのかもしれないです。かと言って、マイナーな領域でもってやってる人たちとかと一緒に酒飲んで慰め合うのも、なんかなぁ〜って。

――それは昔から?
マキタでもね、お笑いのマイナーなアンダーグラウンドの世界ってね、居心地良かったッスね。めちゃめちゃ居心地良かったんですよ(笑)。だから長くいちゃったんですね。

――でも、居心地よかったけど、そこにずっと滞在することにも疑問に感じていた……。
マキタ疑問はありましたよ。だけどなんか、これはお笑い芸人っていう職業を選んだ習性っていうか、笑いがないよりはあった方が良いじゃないですか。だから笑いのある方向だけに顔が向いちゃうんですよ。

――でも今はメジャーシーンからも笑いが届いていますよ。
マキタいやいや。えっとね、これも一過性で過ぎて行っちゃうとどうなっていくか分からないしねぇ……だから、もうちょっと僕、もうちょっと偉くなりたいです(笑)。

――偉くなりたいんですか(笑)。
マキタ偉くなりたいんですよ。うん、あのトルツメスケジュールなんか僕のいいようにスケジュール取れてないですもんね。だから偉くなってないんです。

――でもスケジュールもパンパンだし、連載もいっぱい持ってるし。
マキタもう連載も半分にして。で、文字数ももう僕の手で決めさせてもらって。

――原稿料も言い値で(笑)。
マキタ付き合いがあるから書いてあげるよって。不定期連載でいい?みたいな(笑)。もう、なんか偉くなりたいですね。

――いやでも、それは今回のアルバムの売上げにかかってるんじゃないですか?(笑)。
マキタそうそうそう。本当、だからこれ売りたいんです。めちゃくちゃ売りたいです。

――なんて言っても“ヒットの法則”でつぎこんで作られたものですからね! 当然うちのランキングの上位にランクインするワケで。
マキタなんとかしたいですね。マキシマム・ザ・ホルモンが“仮想敵”なんで(笑)。

――じゃあ、打倒マキシマム・ザ・ホルモンということで(笑)。

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【インタビュー 1】選曲のこだわりは?
【インタビュー 2】曲を紐解いていこう
【インタビュー 3】マキタの1995年は…
【インタビュー 4】オリジナルの定義って

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