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訴訟に繋がるケースも…マウスピース矯正の是非 メリット・デメリットとトラブル事例を現役歯科医が解説

 以前に比べて比較的安価に受けられるようになった歯科矯正。その施術方法も「ワイヤー(ブラケット)」「マウスピース」「セラミック」と選択肢が広がっている。近年、ネットでも購入ができ、費用面や手軽さから「マウスピース」が注目されている。その一方では、トラブルや訴訟になるケースもある。それぞれの施術のメリットとデメリットなど適切な矯正治療について、共立美容外科・歯科の歯科医師・武内伸賢さんに聞いた。

マウスピース矯正は軽度の場合は費用も安く期間も短いが、効果は患者個人に依存

共立美容外科・歯科の歯科医師・武内伸賢さん

共立美容外科・歯科の歯科医師・武内伸賢さん

――昔に比べ矯正治療の選択肢も広がりました。ワイヤーやマウスピースなど、メリットとデメリットを教えてください。

武内伸賢さん 矯正治療でポピュラーなのは、大きく分けて「ワイヤー矯正」と「マウスピース矯正」になります。ワイヤーは、歯に金属の器具をつけて針金でつないで歯を動かしていく、昔から一般的な施術。メリットは、歯科医師が考える方向に歯を動かせる可能性が比較的高いこと。デメリットは、器具や歯の間に食渣(食べかす)などが挟まりやすく、虫歯や歯周病になりやすくなる可能性があることです。

――近年よく耳にするマウスピース矯正はいかがですか?

武内伸賢さん マウスピースのメリットは、目立たないため、矯正治療中であることを周囲の人に気づかれにくいことです。デメリットは、患者個人のマウスピース装着時間に効果が依存し、一般的に1日約20時間装着する必要があります。医師が指導する装着時間を守らない場合、治療が長引き、当初の予測から逸脱します。ワイヤーとマウスピースに限らず、歯の周りを支えている骨に少しずつ力を加えて歯を動かしていく治療になるので、微弱な炎症が続く状態で、歯周病になりやすいことです。

――費用はいかがでしょうか?

武内伸賢さん 骨格や歯並びの状態によりますが、数ヵ月で矯正できる軽度なケースに限っていえば、マウスピースの方が費用が安く、期間も短くなるでしょう。またワイヤーでも、歯の舌側だけに器具をつける舌側矯正(リンガル矯正)は目立たないが、対応できる医療機関や歯科医師の数が限られ、費用は通常のワイヤーよりも一般的に高額になります。

「適正に行えば良い治療法」なぜ“マウスピース矯正”が訴訟沙汰になる?

――マウスピース矯正で訴訟沙汰になっているケースもあります。どのようなリスクがあるのでしょうか?

武内伸賢さん 当事者間の問題があるので、一概には言えません。ただ前述の通り、治療期間がずれやすいことが一因にあるのは想像できます。患者さんの治療経過が当初の想定から変化しているにもかかわらず、仮にマウスピースのみの治療方法しか検討せず、他の選択肢を提示しなければ、そういったことが起こりうる可能性は0ではないでしょう。

――マウスピースで「前歯が出っ歯になった」「奥歯の噛み合わせが悪くなった」という声もあるようですが。

武内伸賢さん その声への私の第一印象としては懐疑的です。そもそもマウスピース矯正という治療方法自体には問題はありません。もし指摘の様な経過が生じたのであるとすれば、治療方法としてマウスピース矯正を選択すること自体が適切だったのか再考する必要があります。患者さんの経過にあわせて違う治療方法やマウスピースの種類を変更する必要性などを提示していたのか、疑問に思う個所はいくつかあります。適正に行えば良い治療法であることは間違いありません。

――矯正治療は、始めてからの経過観察が大事ということでしょうか?

武内伸賢さん その通りです。マウスピースで矯正治療を始めたものの当初の計画通りに歯が動かない、右側の歯は動いたけれど左側の歯が動かないというケースは当然起こり得ます。歯科医師の意図する動き方ではない場合は、その都度起こりうる転機やオプションの選択肢について、患者さんと情報共有する必要があります。個人差はありますが、月1回ほど経過観察を受けたほうが良いでしょう。

――マウスピースで失敗しないためには何に気をつければいいですか?

武内伸賢さん マウスピースはコマーシャリズムにうまく乗って、この5〜6年ほどで知名度が上がり、注目されています。でも、向いている人とそうでない人がいるので、マウスピースという選択肢だけに絞り治療を押し進めるのは危険です。いろいろな選択肢を考えながら選んだほうが、最終的なゴールに確実に早くたどりつけます。

近年はネット通販でマウスピースの販売も…手の施しようがない状態になってからでは遅い

共立美容外科・歯科の歯科医師・武内伸賢さん

共立美容外科・歯科の歯科医師・武内伸賢さん

――ネット通販でも矯正用のマウスピースを販売しています。オンラインで診断を受けてマウスピースを作る流れのようです。

武内伸賢さん 対面は良くてオンラインはダメと一限的には考えてはいません。オンラインでも顔写真、レントゲン、歯の状態など必要な判断材料が適正な抽出方法によって医師のもとに届けられていれば、問題ありません。遠方の人にとっては便利ですし、オンライン自体は活用すべきです。

――とはいえ心配の声もあると思います。

武内伸賢さん ただ、質の均一化という観点では難しさもあると感じます。例えば顔写真に関してもパスポート写真は3ミリずれていても影響はありませんが、矯正治療用の場合は1ミリでもずれていたら、マウスピースが歯に入りません。オンラインでアップロードされたデータや資料の質が担保されているかが重要です。

――格安の矯正用マウスピースを謳う怪しいネット通販も一部にあるようです。

武内伸賢さん 適切な診断の下に矯正治療を始めてから医師の経過観察を受けない行為は、相応のリスクをはらんでいるといえます。
重大なリスクが目に見えて顕在化してきた時には、すでに修正が難しくなっていしまっていることが多いです。矯正治療は医療行為ですから、手の施しようがない状態になってからでは遅いと思います。オンラインでもまず矯正治療を手掛ける歯科医に相談することをお勧めします。予測に反して不測の事態が生じた時に、一緒に修正する医師がいることは安心材料になります。

何を重視し、何を優先事項にするかによって治療方法も異なる

――マウスピース矯正を進めていくなかでのトラブルには、どんなことがありますか?

武内伸賢さん 例えば当初はマウスピース治療単独で歯を動かすことができると判断して開始したものの、歯の動きが思うように進まないことがあります。その場合は、一部だけワイヤーを使って動かすこともあります。施術方法はいろいろありますが、その患者さんにとって一番良いものを提示できるのか。不測の事態が生じた時に、上手く解決できるのか。その引き出しの数が医師に求められます。

――「ワイヤー」「マウスピース」「セラミック」など、どのような基準で選んだら良いのでしょうか?

武内伸賢さん まず前提としてそれぞれ、異なる治療方法です。例えば、歯が重なっているいわゆる「ガチャ歯」であれば、ワイヤーを第一に考えた方が良いでしょう。ただ、少しずつ歯を動かしていくので治療期間が長くなります。またマウスピースは、それほど歯並びが大きく乱れているわけではない、軽度の叢生(そうせい/歯の大きさと顎の大きさの間に起こるアンバランスにより、歯が部分的に重なってしまう状態)、いわゆる「一部だけ」が気になるケース。もしくは、「矯正治療を受けていることを気づかれたくない」「目立たないように治療を受けたい」という方に向いています。

――「セラミック」はどのような場合に適しているのでしょうか?

武内伸賢さん 歯並びを治し、なおかつ歯の形や色もキレイにしたい。でも治療期間は短くしたいという場合は、歯を削ってセラミッククラウンを被せるセラミック矯正という選択肢もあります。芸能人のような白くキレイな歯並びを目指している人にとっては1つの手段です。本来の自分の歯の形や色を劇的に変えたい場合は、歯を削る必要がありますが、一つの治療方法として検討されることをお勧めしています。
いずれにしても、何を重視し、優先事項にするかです。もし明確にどうしたいか分からない場合は、歯科医に相談してみるのが良いでしょう。

外科手術が必要なケースも…施術の選択肢が多い方がトラブル回避にも繋がる

――前述の手法では、希望通りに行かないケースもあるのでしょうか?

武内伸賢さん 矯正治療単独では大きな改善が難しい場合です。矯正治療で中〜下顔面の鼻から下の口元や、顔の印象に大きな変更が見込めないときなどに、骨切り手術を選択肢として提示することがあります。

――どのような方に適した治療なのでしょうか?

武内伸賢さん 外科矯正といって、例えば、下の歯が上の歯よりも前に出ている状態、いわゆる“受け口”の方です。他には、上の歯が突出している「出っ歯」、上下とも口が出ている「口ゴボ」や左右の顔が非対称、など骨格的に上下の顎のバランスを変えたい方向けに用いられる治療方法です。
また、上下の歯が著しく噛み合わない場合も対象です。例えば受け口の場合ワイヤーで下の歯を内側に動かして噛み合ったとしても、骨格自体は変わらないので、顔のバランスは変わらず、顎に対してかなり無理をした歯並びになってしまう可能性があります。その場合には、外科手術を併用し、適正なバランスを保つ位置に誘導する治療です。ただし、口腔外科や美容外科を併設した病院など、通常の歯科治療だけでは行えない手法です。

――具体的に「骨切り手術」とは、どのようなことを行うのでしょうか?

武内伸賢さん 下顎骨または上顎骨、あるいはその両者の位置を移動すると共に、咬合や咬合平面の傾斜を変化させ、機能および外見を改善する手術です。通常は術前・術後の歯列矯正も必要となり、当院では美容外科医師と口腔外科歯科医師が連携して治療を行います。一概に歯科矯正といっても、その手法はさまざまです。施術の選択肢が多い方が、より希望に近づいた歯科矯正治療が受けられるでしょう。また、冒頭で申し上げた通り、治療の進み具合によって施術方法を変える必要もあります。術前の診断はもちろん経過観察が重要であり、常に医師個人の判断や倫理観が問われます。

――さまざまな治療方法があるなか、トラブルを避けるための病院選びは、何を注意すれば良いのでしょうか?

武内伸賢さん まず相談しやすい病院を見つけて、自分がどうしたいのか、そのために何をするのかを歯科医師と納得できるまで話し合うことです。いくつかの医療機関で治療方法を聞くのも良いと思います。そのなかから、ご自身の望む結果が得られそうな病院を選んでください。

(文/武井保之)
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