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80年代後半までは「主人には内緒で」の声も…代行業者が見る“家事”の変化と利用者増加で生じた課題

  • 画像提供:(株)ダスキン

    画像提供:(株)ダスキン

 女性の就業拡大は当たり前となり、ワークライフバランスが見直される昨今。家事に対する価値観も変化してきている。株式会社ダスキンが「掃除代行サービス」を立ち上げた当初は、「うちの主人には内緒にしてください」という声もあったというが、サービス開始から30年以上売上が成長し続けている(※コロナ禍除く)。当時根付いていた「掃除は女性がするもの」という価値観がどのようにして一掃され、サービス利用者が増えていったのか。同事業部の阪口さおりさんに話を聞いた。

「ダスキンと書かれた車を止めないで」ユーザーから苦情も

 モップのレンタルを行う会社として1963年に創業し、その後清掃業務やミスタードーナツをはじめとするが外食産業などを順次展開してきた株式会社ダスキン。1989年にはアメリカ、メリーメイド社と提携し、お掃除代行サービスとして「メリーメイド事業」をスタートした。

「創業の3年前、1986年に男女雇用機会均等法が施行され、これから女性がもっと社会進出して活躍していくことが予測されました。そうした社会背景を踏まえて、何か家庭用のフランチャイズビジネスができないかと思い、1989年にアメリカの企業と提携して事業スタートしました」(阪口さん/以下同)

 しかしスタート当初は、同サービスを世の中に認知させるのには苦労があったという。というのも、日本では『掃除は女性がするもの』という古い考え方が残っており、家庭の掃除を第三者に依頼すること自体に抵抗を感じる人々が多かったからだ。

「本当は掃除を頼みたいけれど、それを家族やご近所に知られたくないというお客様も多かったです。『うちの主人には内緒にしてほしい』『玄関前にダスキンと書かれた車を止めないでほしい』『エプロンを付けて来ないでほしい』という声も度々ありました」
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 そんな中、メリーメイド事業では、サービス周知の一環として、チラシをまくポスティング活動に力を入れた。時にはフランチャイズのオーナー自ら「依頼が入りますように」と一軒一軒拝みながらポスティングしたという。そうした地道な活動もあって、少しずつ利用者を獲得。サービス開始から30年余、コロナ禍の2020年度を除けば、売上も成長し続けているという。

 そんな同事業にとって、最も大きなターニングポイントとなったのは2000年。それまでの「掃除代行」から「家事代行」へとサービスの幅を広げたことだ。

「ご契約中のお客様から『洗濯や料理など日常の家事もやってほしい』といったお声をいただいて、時間単位で家事おてつだいサービスを始めました。それまでの掃除だけでなく、もっと広い意味での家事全般に舵を切ったのが、ターニングポイントかと考えています

 『家事』の中でも『おかたづけ』をしてほしいというお声からうまれた、かたづけに特化した『おかたづけサービス』など、弊社では常にお客様の声を聞きながら、さまざまなサービスを作り展開しています」

 現在では、「在宅勤務応援プラン」「育休復帰応援プラン」など、ますます多様化するライフステージに合わせて利用できるプランも多数展開している。

業務拡大と利用者の増加に伴って生まれた最大の課題

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    画像提供:(株)ダスキン

 現在、同事業のスタッフは女性の割合が多く、幅広い年齢層の方が活躍中だ。中には創業当初からずっと働いているベテランの方もいるという。

「しばらく専業主婦をやられていて、社会復帰する際にメリーメイドを選んでくださる方もいらっしゃいます。『はじめてお仕事しますが、私でもできますか?』と来てくださいますが、専業主婦として家事経験があることはメリーメイドで働く上で大きな強みとなります。働き方も本当にそれぞれで、『週1回月曜日の午前中だけ働きたい』という方も、毎日出てくださってる方もいらっしゃいます」

 同事業を継続する上で、「人材確保というのは常に課題としてあります」と阪口さんは話す。そのために、多くの人々にメリーメイドの仕事を理解してもらうために仕事の内容がわかる動画を作成。また新人教育として、しっかりしたマニュアルを使って初期研修をするとともにその後も継続した研修を行っている。

「また、今いるスタッフが生き生きと楽しく働けるように、社内で勉強会を実施したり、月1回ミーティングをしてお客様からのお声や、家事やお掃除の知識など、最新の情報を共有したりしています」
 また利用者と代行者の双方が安心して業務を頼める/遂行できるために、企業として安心していただくための取り組みにも力を入れている。

「お客様からのご依頼を受けて『すぐサービスに行きます』というわけではありません。最初にライセンスを持ったマネージャーがお宅にお伺いし、お客様にどんなお困りごとがあり、どんなサービスがお望みなのかをお聞きし、それに対してどのようなサービスをさせていただくかを説明し、見積りをした上で、後日、サービスに伺います。また、男性一人暮らしのご利用者様の場合は、スタッフ2人体制での対応など、お客様はもちろんお伺いするスタッフも、双方の安心が保たれるように心がけています。こうした取り組みをさせていただいていることで、お客様に安心していただけていると思います」

以前は「家事代行=一部の富裕層が利用するもの」のイメージも…30年の間にユーザーマインドどう変化?

画像提供:(株)ダスキン

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 メリーメイド事業がスタートした1989年以来、30年余にわたり、女性の社会進出や共働き家庭の増加など、家庭のライフスタイルにさまざまな変化があった。人々の家事に対する意識も少しずつではあるが、変わりつつあると阪口さんは言う。

「以前は、『家事代行サービス=一部の富裕層が利用するもの』というイメージが強かったと思います。でも昨今、家事代行サービスを利用してくださる主婦の方が、ママ友と話していて『え、あなた(家事代行サービスを)使ってないの?』と仰る方もいらっしゃるそうです。そういう風に、少しずつですけど、人々の意識の変化はあるのかなと思っています。

 忙しくて余裕がない自分の姿を子供さんに見せるよりは、家事代行サービスを使って、子供と向き合う時間にあてたい。だからサービスを利用して良かったというお声も、ありがたいことにいただいています。本当に少しずつ変わりつつありますね」

 とはいえ、都市部と地方では需要に差があるのではないか。

「弊社は全国790店舗(※2023年3月末時点)展開していますが、需要には大きな差はないと感じております。とはいえ、多少なりとも地域特性があって、例えば温泉近くの地域であれば水質の影響で浴室アカがつきやすいのでお風呂掃除の利用が多いなどの地域によってサービス利用の差はあります。それぞれのお客様のお困りごとに合わせたサービスをご提案するので、大きな差はないかなと考えています」

 今後も、時代と共に変化するライフステージに合わせてフレキシブルに対応し、サービスを提供していきたいという同事業。各家庭とどんな形で関わっていきたいと考えているのか。

「今は主婦の方が家事全般を請け負うのでなく、『これはお父さんがする家事、これは子供さんがする家事』と家族みんなで分担されているご家庭も多いと思います。そんな時、私たちメリーメイドも家族の一員として考えていただけるとうれしいです。必要なときに選択肢の一つとして私たちのことを思い出していただき、上手に使っていただければ幸いです」
(取材・文/水野幸則)

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