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“メスを使わない豊胸”に専門医が警鐘 健康被害深刻化に憂い「聞こえのいい広告が美容医療業界に蔓延している」
注入式豊胸手術が流行するワケ「経験の浅い医師でも簡単にでき、クリニックも安いコストでバンバン開院できる」
麻生泰医師ボロクソに言われましたね、「お前こそハゲ治せ」とか(笑)。ただこれくらい刺激的なメッセージでないと、届けるべき人には届かない。それくらい聞こえのいい広告や宣伝文句が美容医療業界には蔓延していますから。
──本書では主に注入式の豊胸手術のリスクについて多くの紙面を割かれています。
麻生泰医師5年ほど前からアクアフィリングと呼ばれる注入剤を使った豊胸が大流行して、手術から数年経った今、健康被害が深刻になっているんです。ところがいまだに「メスを使わない豊胸」としてやっている悪徳な美容クリニックがある。2019年に美容医療関連の4学会で「実施すべきではない」と共同声明を出し、厚生労働省でも注意喚起をしているのですが……。
──届いてほしい人には届いていない。
麻生泰医師そんな真面目な文書、誰も読まないですよね。むしろメスを使わない、切らないという文言に豊胸に踏み切る心理的ハードルを下げる作用があるんでしょうね。
──メスを使う豊胸手術というと?
麻生泰医師王道はシリコンバッグを入れる方法です。もちろんこれにもリスクはゼロではないので、熟練の医師にしかメスを握らせられません。アクアフィリングをはじめとする注入式の豊胸が流行ったのは、経験の浅い医師でも簡単にできるからなんです。さらに麻酔科医を常駐させなくてもいいので、クリニックも安いコストでバンバン開院できる。こうした負の連鎖で、アクアフィリング被害者が続出してしまったのです。
感染による腫れや痛み、シコリ、ドロドロの膿になることも…注入式豊胸のおぞましいリスク
麻生泰医師代表的なのは感染による腫れや痛み、シコリ。一番恐ろしいのは感染症ですね。東京美容外科では2019年から過去に他院でアクアフィリングによる豊胸手術を受けた人を対象に除去手術を行う『豊胸レスキュー』というメニューを提供しているのですが、僕がレスキューした例では乳腺を含む組織がドロドロの膿になってしまっていた方もいました。結果胸はペッタンコです。
──特にリスクが高いのはどんな人ですか?
麻生泰医師ウェディングドレスをキレイに着たいと結婚式前に豊胸する人は結構いるんです。しかも注入式なら簡単にできると考えて。その後、妊娠して乳腺が張って感染するケースはとても多いんです。アクアフィリングの成分が母乳に混じってしまう危険性もあるので、妊娠を考えている方は本当に踏みとどまってもらいたいですね。
麻生泰医師成人していれば何歳でもいいと思いますよ。ただ最近は低年齢化していて、高校生の子がお母さんと一緒に来院されることも増えてきました。その年齢だったらホルモンの変化で胸が大きくなる可能性もあるし、「もうちょっと待ったら?」と言うこともありますけどね。またそういう子に限ってものすごく痩せていたりするんです。
──胸が小さいのは、そもそも体に脂肪が付いていないからというケースもあると。
麻生泰医師過度なダイエットをしてるんじゃないかと心配にもなりますし、まずは少し太ったほうがいいですよ、とアドバイスすることもあります。ある程度、胸に脂肪が付いていないと、豊胸をしても理想のバストはなかなか手に入りづらいですよ、と。
『バーキン買うなら豊胸しろ』に込めた患者への想いと覚悟
麻生泰医師豊胸によって人生を豊かにしたいと考えている方を、決して後悔させない自信があるからです。かと言って、豊胸が必要だと考えていない方に勧めているわけではありません。そういう方はそもそも『バーキン買うなら〜』を手に取らないでしょうしね。
あと本を書いたのは、顔と名前を出すことで「逃げも隠れもしません」と宣言する意味もあります。実際、さんざんアクアフィリングで儲けたくせに、健康被害が顕在化したとたん閉院したり、メニューから豊胸を外したりするクリニックは本当にたくさんありますから。
──美容業界の闇を顔出しで告発することで、業界から批判されることはないですか?
麻生泰医師東京美容外科は本当に優秀な先生しか雇っていませんから、数の力ではどうしても大手には勝てません。だけど正しい美容医療さえ提供していれば、最後は勝つと信じています。アクアフィリングもそうだけど、数年後に思わぬ悪影響が出てくる美容医療はあるんですね。僕は東京美容外科を次世代に継承したいと考えているのですが、2代目に負の遺産を残したくないじゃないですか。そのためにも僕の代で高度な美容医療を確立させ、それを業界の王道にまで引き上げたいですね。
(取材・文/児玉澄子)
『バーキン買うなら豊胸しろ』(ゴマブックス)
ドクターAこと麻生泰医師がSNSでは語りきれない想いをまとめた1冊。
●自己投資の順番を考えよう
●安易な豊胸が流行るカラクリ
●手術よりも注射のほうが簡単? でも本当は……
●行ってはいけない美容外科の見分け方
●過去は変えられない。でも未来は変えられる。など
・痛みや腫れはある? ・ダウンタイムはどのくらい? ・傷跡は残るの? ・いつから仕事に戻れる? など、よくある質問にも麻生先生がスッキリ回答する。
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監修者 麻生泰
1972年1月10日大阪府生まれ。医療法人社団東美会理事長/東京美容外科統括院長/慶應義塾大学医学部非常勤講師/慶應義塾大学医学部大学院にて医学博士号取得。
2003年に、東京美容外科の前身となる「学園前美容外科」を奈良県に開業し、開業医としての経歴をスタート。2004年に、「東京美容外科」の1号院を開院し、系列院は110院を超える。痛みの少ない「日帰り可能な豊胸手術」を開発し、豊胸手術のパイオニアとして学会での発表や海外での公演実績なども多数。現在日本国内で行われているほとんどのシリコンバッグを用いた豊胸手術が麻生式豊胸術である。また、「開かれた美容医療」を目指しており、積極的に手術のライブ配信や公開イベントを開催している。普段知ることのない手術の様子を公開することで、美容医療全体の信頼度向上、技術力向上などさらなる発展に貢献している。