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潰瘍性大腸炎を患うトレーニー、医療用ステロイドに“ドーピング違反だろ”と心ない声も「病気への理解が広まれば」

稲垣大成さん(画像:本人提供)

稲垣大成さん(画像:本人提供)

 指定難病の潰瘍性大腸炎を患いながらも、ボディコンテストに挑戦、「難病持ちでも、誰かのヒーローに」と指針をかかげ、日々のトレーニングの様子や病気について発信し続けているトレーニーがいる。マッスル先輩こと稲垣大成氏だ。完治に至る特効薬がない潰瘍性大腸炎は、下痢や激しい腹痛を日に何度も繰り返し、酷いときには、体重減少、貧血等も伴い入院治療が必要となる難病。過酷な症状と闘いながら、なぜ、稲垣氏は、真逆な要素が必要となるトレーニーとして頑張れるのか。根底にある思いと大会に臨む際の心境などを聞いた。

病を持つ人の希望の光になれたら

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 “マッスル先輩@難病治療中”の名でTikTokやYouTubeで発信を続けている稲垣大成氏。トレーニーとしての姿を綴りつつ、患っている潰瘍性大腸炎について、自らの症状や病気の説明をはじめ、「治療しても良くならず、人生を諦めたくなる時もあった」など、自身の体験や気持ちを赤裸々に発信した動画には、同じ病で苦しむ人からの「励まされます」「勇気をもらえました」というコメントとともに、多くの人から「勉強になりました」「頑張ってください」といった応援の声が寄せられている。

「同じ病気の方から『自分も頑張ります』と言っていただけたときはもちろんですが、違う難病の方からもたくさん同様のコメントをいただいて、すごくうれしかったです。僕自身、病気が発覚したとき、安倍元首相が同じ病気でありながら、総理大臣として職務をされていることを知って、自分もやってやろうって励まされたので、自分も誰かの希望の光になれたらと思って発信を始めていましたから」

 稲垣氏の言葉にもあるように、安倍元首相が患っていたことでも知られる潰瘍性大腸炎。しかし、その名を耳にしたことはあっても、どのような病気なのか理解している人は少ないことだろう。

 大腸の粘膜に炎症を引き起こすこの病気は、原因不明で、決定的な治療法が確立されていない難病。激しい下痢と血便、腹痛を繰り返すのが代表的な症状で、そのことも稲垣氏が病気についてSNSで発信したいと考える大きな要因となった。

「治療を始める前は1日に30回トイレに行く日もあったり、血便が出て体がだるくて動けない日もありました。僕自身は周囲の理解があったし、いじられても軽く受け流すことができる性格だったのでまだよかったのですが、同じ病に苦しんでいる人の中には、授業中にしょっ中トイレに行くことで、からかわれて辛い思いをしている人もいると思うんです。トイレに頻繁に行くこと自体がセンシティブな問題なので、この病気がもっと広く知れ渡って、からかうよりも『大丈夫?』と声をかける人が増えてくれたらと思いました」

自分に合った治療法が見つからず、病を受け止めきれなくなったことも

大会にむけたカラーリングの様子

大会にむけたカラーリングの様子

 稲垣氏の病気が発覚したのは、2019年、大学1年のときだった。

「高校時代はトイレによく行ってはいたものの、面倒くさがりなところがあって、病院に行かないでいました。でも、進学してから大学に行けないくらい腹痛が酷くなって、これはおかしいということで病院で検診を受け、悪い可能性があるということで、後日、内視鏡検査を受けて発覚しました」

 「治療法が確立されていない指定難病」と聞けば、暗い気持ちになって当たり前。しかし、このとき、稲垣氏は、すぐに前向きに気持ちを転化することができたという。それをもたらしたのが、出場が控えていたボディコンテストだった。

「告知を受けたときは、ちょうどサマー・スタイル・アワードと、ベストボディ・ジャパンという2つの大会が控えていたときだったので、こういう病気を抱えながらも、もし勝つことができたら、自分カッコいいんじゃないか? って、すぐにそう思えたんです」

 稲垣氏が筋力トレーニングにハマり始めたのは高校1年生のとき。中学時代より野球部に在籍していたが、硬球が目に当たって怪我をしてしまったことから退部。遊びたい気持ちにまかせて自堕落な生活を送るうちに、心身共にたるんだ状態になってしまったことがきっかけだった。

「『こんな自分でいいのかな?』と思ってトレーニングを始めたところ、自分の身体がどんどん変わっていくことに喜びを感じて、筋肉を鍛えるという沼に引きずり込まれていきました(笑)」

 さらにそこに光が射したのは、ボディメイク界の第一人者・金子賢の存在だった。

「当時、海外の大会に参加されていたときだったんですが、家族から『素敵な人がいる』と聞いて、その姿をインスタで拝見して、こんなカッコいい大人になりてー! と思って、大会出場を目指すようになりました」

 病気が発覚した2019年、出場が控えていたサマー・スタイル・アワードは、その金子賢が主催する大会。決意どおり、稲垣氏は同大会のカレッジ部門で見事、優勝。ベストボディ・ジャパンでもグランプリを受賞し、その年、学生チャンピオン2冠を達成したのだった。

 しかし、そこからは試練の始まりだった。効果を得られる見込みのあった飲み薬は稲垣氏には効かず。点滴治療に切り替えるも、アレルギー反応が出てしまい断念。次に自分でお腹に注射する自己注射治療を始めるも、効果は得られず。ステロイド座薬を始めたところ、症状は少し改善したものの、酷い副反応に悩まされることに……。

 決定的な治療法が確立されておらず、人によって効果があるかないかも違うとはいえ、こんな日々が続いたら、メンタルをやられてしまって当たり前。しかも、潰瘍性大腸炎は症状が強く現れる活動期と、症状が治まっている寛解期を繰り返すのが特徴で、活動期となる悪い時期には、「1日中ベッドとトイレを行き来する日もあるほど」。「正直、自殺したくなっちゃうくらい気持ちが落ちてしまって大変な時期があった」と振り返る。

 そんな彼を奮い立たせたのは、やはり、次なる大会への出場だった。

「症状を受け止めきれないと感じたときも、『病気を乗り越えて活躍できたらカッコいい』という一心で突き進みました。体調が悪くてジムに行けない日や、人より疲れやすくなってしまって大会で影響が出てしまうこともありました。でも、仕方がありません。自分はとにかく、トレーニングができる日に人の何倍も頑張るしかないと思ってやってきました」

 今年11月には、昨年に続き、FWJに出場。今年は4月より取り組み始めた食事管理による治療が功を奏し、炎症の数値もほぼゼロと回復し、万全な体調で臨むことができたと微笑む。

「昨年から、薬ではなく食事で自分の体調がどう変わるかの実験をしていました。昨年は栄養のバランスを細かく数値に出して食べるものを決めていたのですが、それだと考えることがストレスになってしまって。ストレスは病気にも筋肉にも悪いので、今年は、自分のなかでざっくりと枠組みを決めて、その範囲内で調整をするというやり方に変えました。基本的には白米と牛肉を食べて、大会1カ月前には牛肉を鶏肉に変えて、あとは和菓子を取り入れたり、トレーニング前後でプロテインを入れたり、食べるものをある程度決めて微調整しました。この方法は僕に合っていたみたいで、病気に関しては少しだけ希望が見えてきているかなという感じがあります」

医療用ステロイドと筋肉増強のためのステロイドとは違う

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 ところで、稲垣氏も一時期、治療に使っていたステロイドだが、ドーピングで使用される代表的な薬物と同じ名称であることから、同一視している人は多い。しかし、2つはまったくの別もの。医療用のステロイドは、強力に炎症を抑える作用のある副腎皮質ホルモンを元に作られた薬剤で、筋肉増強剤として使われるステロイドは男性ホルモンのテストステロンの類似体。世界アンチ・ドーピング機構も、治療目的での使用は認めているし、何より、潰瘍性大腸炎に使われる医療用ステロイドに筋肉増強の効果はなく、むしろ、筋肉が落ちやすくなってしまうのだ。しかし、そのことはほとんど知られていないため、稲垣氏は、「ドーピング違反じゃん」とこれまで多くの人から心ない言葉を投げかけられたと言う。

「自分の努力を否定されているような気持ちになって悔しかったですね。だから、同じような悔しい思いをする選手がなくなればいいなって思って、そのことについてもSNSで発信して、たくさんの人に理解が広まればと思っています。ステロイドは、どうしても副作用が出てしまい、ムーンフェイスになったり、肌が荒れ気味になったりするので、そのことも知ってほしいですし、とにかく偏見の目をなくせたらと思っています」

 来春、大学を卒業し、フィットネスクラブのトレーナーとして社会人1年生になる稲垣氏。仕事の傍ら、もちろん、次なる大会への挑戦にも意欲をみせる。

「FWJでは今年、身長別のクラスで6位という結果に終わってしまったので、まずはクラスで優勝して、その次は、総合優勝を決める審査で3位以内に入ってプロカードの獲得を目指したいと思っています。あとはアメリカの大会にも出場してみたいですね。病気については今は落ち着いていますが、まだ完治の方法が見つかっていない病なので、今後どうなるかわかりませんが、目標を見失うと、メンタルも体調も落ちてしまうので、とにかく、毎年大会に出続けて、レベルを上げていくことを目指して、同じように病気を持つ人の希望となれるよう頑張って、難病持ちでも誰かのヒーローになれたらと思っています」

(取材・文/河上いつ子)

≫YouTube「マッスル先輩@難病治療中」動画を見る(外部サイト)

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