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自販機横のごみ箱消えた…? 投入口はなぜか“下向き”、オレンジのボックスの正体とは

 自動販売機横にある、空容器を捨てる箱。これは「ごみ箱」ではなく、「リサイクルボックス」だとご存知だろうか。全国的に設置されるようになって久しいが、カフェドリンクの容器やタバコの吸い殻が数多く捨てられているのが現状。そこで全国清涼飲料連合会は、今秋より投入口が“下向き”のボックスを業界統一仕様に決定。20年から実施された実証実験では、これにより異物数が大幅に減少したという。“下向き”の狙いと効果を同連合会に聞いた。

瓶・缶・ペットボトル…入る所は同じなのに、投入口だけ分別されていた理由

  街でよく見かける自販機横「リサイクルボックス」。入る所は同じなのに、投入口だけ分かれているのはなぜか? その理由は、瓶・缶・ペットボトル以外のごみ投入をさせにくくする心理効果を狙ってのものだ。しかし、現状はそれ以外のごみ=異物が3割以上混入しているという。つまり悲しいことに、同リサイクルボックスを「ゴミ箱」として利用している人が少なからず存在しているということだ。「誰かが処理してくれるから大丈夫だろう」──。そんな軽率な発想が、思わぬ大事故を招くこともある。

「例えばプラスチックのドリンク容器やお弁当、家庭から出る様々なゴミ、中には腐ったケーキが生のまま入っていたこともあります。一番困るのは危険物。タバコの吸い殻やライター、そして何よりリチウム電池です。電子タバコの本体などに入っている電池ですが、これが本体ごと捨てられてしまうと、中間処理施設の機械のギアに挟まってしまい、発火する恐れがあります。しかも時間を置いて発火することがあるので、人がいない夜などの中間処理施設の火災などは、このリチウム電池が原因の場合が多いんです」(同連合会・石黒隆さん)
 ここまであらゆる物が入れられていると、機械での選別は難しいため、いちいち人の目と手で行われている。我が身に置き換えてみれば、その手間の大変さが分かるだろう。

「カフェなどの持ち帰り用カップは口径が大きいことから、リサイクルボックスの穴を塞いでしまうことも。そうなると中は容量充分なのに、次の人から飲料空容器を入れられなくなってしまう。結果、リサイクルボックスの上に缶やペットボトルが並べられてしまうことも度々。散乱につながることが危惧されます」(同連合会・稲野結子さん)

色はあえて「目立つ」オレンジに、実証実験では“下向き”で3〜5割の異物削減

「ただ、近年は公園などの公共施設や街中でゴミ箱が減少していることから、消費者の方々も“ポイ捨てするよりは…”とリサイクルボックスに捨てられる方もいらっしゃるのではないかとも考えています。そんなに悪気なく、それが“ゴミ箱”ではなく“リサイクルボックス”だという認識が広がっていないだけなのかもしれません」(石黒さん)

 これらの処理費用は自動販売機を管理する会社などが捻出し、“ゴミ箱化”による手間も黙認してきた。だが18年頃、海洋プラスチック問題が大きく取り上げられ、同連合会でも対策の検討を本格的に開始した。

「“ゴミ箱化”の原因は、分かりやすく正面に向かって穴の開いた投入口があるため、そこを目指してゴミを入れられることが多いのではないかと考えました。そこで新リサイクルボックスでは、飲料空容器だけを入れてほしい、これは“リサイクルボックス”であり、“ゴミ箱”ではありませんよ、というアピールのため、下から投入するように形状を変更。また口径も小さくし、異物が入れづらいよう変更しました」(石黒さん)
 こうして新たに作られたリサイクルボックスの実証実験を20年に渋谷から始め、21年浜松市、岡崎市、津市、広島県などで実施。平均3〜5割、どの地域でも異物削減の効果ありとの結果が出た。

「天蓋部分に傾斜をつけたのも、そこに飲料空容器やゴミを並べられないようにするため。人の心理は不思議なもので、汚れていると、そこにゴミを捨ててもいいと多くの人が思ってしまう。逆に綺麗だと“ゴミを捨てられないな”という心理が働くんです」(稲野さん)

 色は、これまで汚れが目立ちにくいグレーやブルーが多かったが、それが“ゴミ箱”のように感じられてしまう可能性があったので、それとは違う目立つ色を、とオレンジに。またSDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」のシンボルカラーにも由来する。

「これまではリサイクルボックスが目立つ必要はありませんでした。ですが、オレンジにすることで“ゴミ箱ではない”と差別化を主張。資源循環の入り口なんですよとアピールするためにオレンジに決定した次第です(稲野さん)」

家ではしっかり分別をしていても、なぜ外に出ると「適当に捨ててしまう」マインドに…?

「現状のペットボトルの回収率は97%。リサイクル率は88.5%と高水準なのですが、業界としては30年までに100%の有効利用を目標にしております。また“ボトルtoボトル”と言って、ペットボトルはペットボトルとしてリサイクルする比率を30年までに業界として50%以上にする目標を掲げて努力しております」(稲野さん)

 ペットボトルは石油資源だ。これまで繊維や包装材として多様に再利用されてきたが、他素材ではなく、ペットボトルからペットボトルに100%再利用することで、完全なる資源循環が実現でき、新規原料の使用やCO2排出も約60%抑えられるという。

 業界に先駆け、サントリーではすでに『やさしい麦茶』や『伊右衛門』など、一部の商品で100%サステナブルボトルを採用している。また、今年には国内清涼飲料の50%以上をサスティナブル素材に、コカ・コーラ社も同様の目標を掲げており、ともに2030年までには100%を目指している。

 ペットボトル自体も、ギリギリまで強度を保てるよう技術を駆使して25%軽量化。キャップも軽量化しており、ラベル自体も薄く、さらにはがしやすいものにしてある。地球のため、社会のため、そして未来の消費者1人1人のため、資源をいかに効率よく循環させるか、業界を上げて工夫している。

「不思議なもので、家庭ではしっかり分別をしても、外に出るとマインドが変わって適当に捨ててしまう方が少なくない。ペットボトルは、ゴミではなく資源。1人1人がそうご理解頂ければ、さまざまな社会としての負担が少なくなりますし、資源循環も進んでいく、地球にも優しくなる、そう考えております」(稲野さん)


(取材・文/衣輪晋一)

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