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松本人志への憧れ捨て…「ガヤ芸人」の覇王となったザキヤマ 確立したが故の“功罪”も?

  • 山崎弘也

    芸歴27年でもMCほぼなし、“ゲスト”出演し続ける山崎弘也(C)ORICON NewS inc.

 2004年の『M-1』優勝から18年、様々なバラエティ番組に“ゲスト枠”で出演し続けるアンタッチャブル・山崎弘也。毎回爪痕が求められるひな壇・ガヤ枠としてゲスト出演し続けることは、MCやレギュラーで出演し続けることより、ある意味難しいことではないだろうか。かつては“賑やかし枠”として格下に見られていたこともあった「ガヤ芸人」のトップを極めたザキヤマの偉業と共に、急速に市民権を得てしまったが故の功罪を辿る。

かつては“ヤジ”扱いされていた「ガヤ芸人」、松本人志の代役務めるまでに地位確立

 ブレイクから約20年もの間、バラエティ界からのオファーが途切れることのない山崎弘也。レギュラー番組を除いても、5月のゲスト出演は20本を超えた。さらには、3月放送回の『人志松本の酒のツマミになる話』では松本人志、2月にはラジオでも『JUNK おぎやはぎのメガネびいき』でおぎやはぎの代役を務めるなど、その活躍は“ガヤ芸人”の枠には収まりきらないほど。陣内智則や麒麟・川島のような裏回し役とはまた違い、FUJIWARA藤本のような盛り上げ役としての域も超えているような、独自の存在感を放っている。

 今となっては“ガヤ芸人=すごい”という印象もあるが、「以前は、“ガヤ=ヤジ、うるさい、下品、にぎやかし”といった見られ方をされていた」と藤本は語っていた。かつては、芸人たるものMCとして冠番組を持つことがステータスとされ、ひな壇芸人・ガヤ芸人は格下かのように扱われてきたのだ。

 この風潮が変わったのは約15年前。『アメトーーク!』や『ロンドンハーツ』で、ザキヤマや藤本をはじめとしたガヤ芸人のすごさがフィーチャーされるようになると、業界や世間の目も変わっていった。

 「現在のガヤ芸人リスペクトの風潮の背景には、お笑いの“大御所”が変わっていない実態がある」と話すのは、メディア研究家の衣輪晋一氏。「上が変わらないことで芸歴・地位ともに中堅クラスのお笑い芸人が渋滞する事態に。これに目をつけたのが、テレビ朝日の加地倫三プロデューサー(『アメトーーク!』など)です。松本人志さんの功績に、お笑いに“笑いが分かるかどうか”という批評的精神を持ち込んだことがありますが、これを踏襲。お笑い的価値を発信していったのです」(以下、同氏)

引き出し豊富な勉強量、コンプラ回避、無茶ぶりを介した裏回しも兼ね備えた高度スキル

 実際「ガヤ芸人」は、多くの出演者がひしめくひな壇で、空気を読みながらも絶妙な合いの手を入れるという相当なスキルが求められる立ち位置。誰ともコメントがかぶらないタイミングで、MCや共演者の邪魔をすることなく、一言でインパクトを残すユーモアとセンスが必要だ。

 加えて、「ガヤ芸人」代表格であるザキヤマと藤本は、かなりの勉強量が伺える。芸人出演時にはパクリネタ、俳優出演時にはドラマや映画のパロディーネタを披露するなど、共演者たちを知り尽くしていないとできない笑いも随所で繰り広げている。バラエティだけでなくCMからドラマ、映画まで、入念にチェックし、日頃からアンテナを研ぎ澄ましているのだろう。

 とは言っても、悪目立ちしてしまっては「ガヤ芸人」失格。トークの流れに割って入り、前に出たからには必ず笑いをとらなければならない。つまり、決してすべることはできないポジションとも言える。だからこそ、一瞬で全体の空気を読む力が求められる。

 そういった抜群のトークセンスと圧倒的な存在感を放ちながらも、誰の邪魔もしないところこそがザキヤマのすごさ。昨年放送の『ラフ&ミュージック』では、内村光良と松本人志が7年ぶりの共演を果たした際、山崎が『全員静かにするから2人だけで会話をしてほしい』とお願いし、その振る舞いに、ネットでは称賛の声が上がっていた。

「ザキヤマさんと言えば、“無茶ぶり”もお決まり芸。これも共演者の誰かが前に出ることができなかったり、すべりそうになったりした時に助け船として繰り出していることが多い。ザキヤマさんに裏回しの印象はあまりないかもしれませんが、“無茶ぶり”を介して、場を回していることも往々にあるのです」(衣輪氏)

 カットイン、ゲストいじり、無茶ぶり…これら全てはリスクを伴う。面白くなければただのうるさい人になるし、コンプライアンスにも考慮しなければならない。ザキヤマ自身、過去のインタビューで「無茶なことがないと生活は面白くないし、あることで刺激が出る。『無茶こそ人生』っていうね。僕はギリギリ倫理に触れない無茶ぶりを探ってます」と語っている。

麒麟・川島の芸風まで変えたザキヤマの存在感、「ガヤ芸人」地位向上の功績と功罪

 結果、2009年放送の『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の「後輩の山崎に憧れてる芸人!!」に出演した東野幸治&関根勤&FUJIWARA藤本&TKO木下&たむらけんじなどなど、かつては“格下”とされていた「ガヤ芸人」ザキヤマを尊敬する人は多い。

 前述の『ツマミになる話』では、千鳥・ノブが、収録後に共演者たちが山崎について「あれ、バケモンやな」と驚いている光景を見たことがあると証言。麒麟・川島やタレント・小島瑠璃子も「『あんな人いない。あれを超えることはできねぇ』みたいな絶望感のメーク室、いたことあります」と激しく同意していた。

 加えて川島は「ザキヤマさんと共演することを大阪の若手は『事故る』って言ってます」と暴露。ザキヤマと同じ現場だと見せ場を作ることができないために、「急いで前出るようになったんです。この人のせいです」と、ガヤではザキヤマに絶対的に勝てないがゆえに、自身だけでなく多くの芸人が芸風を変えたことを糾弾した。

 ここで注目したいのが、『アメトーーク!』の2008年放送回「ガヤ芸人」と、2012年「待ってました!!ガヤ芸人」のメンツがほぼ変わっていないことだ。2008年は、アンタッチャブル&藤本&バナナマン設楽&品川庄司。2012年はザキヤマ&藤本&バナナマン設楽&品庄・品川&次課長・河本&ますおか岡田。この目まぐるしく変化する芸能界で、4年もの間が空いているにもかかわらずだ。

 それはやはり、川島が吐露していた通り、圧倒的「ガヤ芸人」スキルを持つザキヤマが君臨する限り、次なる「ガヤ芸人」は出てこない状況が2008年頃から約15年間続いている可能性がある。

 今年3月、藤本が出演した『かまいたちの知らんけど』では、かまいたちが「脅威を感じる若手ガヤ芸人は?」と質問。藤本は「ガヤのポジション目指す若手がいない。地位が低めだから、憧れるスタンスではない」と答えたが、濱家は「ほんまに憧れてるのはそっちのタイプですよ。やりたいけど、できない」とコメントしていた。

 2017年から始まったトークバラエティ『うちのガヤがすみません!』では、幸い?ザキヤマはレギュラー出演しておらず、フワちゃんやチョコレートプラネットなどのブレイクのきっかけとなったが、いずれも「ガヤ芸人」としての地位は確立しないまま、4年半で番組は終了した。
  • かつては、多くの芸人の例に漏れず“ダウンタウン病”を患わっていたという山崎弘也(C)ORICON NewS inc.

    かつては、多くの芸人の例に漏れず“ダウンタウン病”を患わっていたという山崎弘也(C)ORICON NewS inc.

 かつては松本人志に憧れ、斜に構えてクールなキャラを作っていたザキヤマ。そこから“ダウンタウンにはなれない”と悟り、「ガヤ芸人」という唯一無二のポジションを確立した。そして後輩のオードリー、千鳥、かまいたち、アンガールズ田中がMCを務めるようになった今も、ザキヤマは「ガヤ芸人」に一貫。彼がひな壇に居続ける限り、後輩たちは“ザキヤマにはなれない”と悟る。かくして「ガヤ芸人」の新境地を切り開いたザキヤマ自ら、後に継ぐ「ガヤ芸人」への道を閉ざしているのかもしれない。


(文/中野ナガ)

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