星野源「理想の家族像はないんです」 社会が掲示する“普通の家族”に抱いていた居心地の悪さ

 9日に第1話が放送され、早速Twitterトレンド1位の盛り上がりを見せたテレビ東京アニメ『SPY×FAMILY』。星野源が手掛けたエンディング主題歌「喜劇」も、13日発表のオリコン週間デジタルシングルランキングで初登場1位を獲得した。同アニメは、主人公がスパイ任務のために、仮初め家族を作るところから始まる物語。星野は今回、“家族”という意味を想いながら主題歌を制作したという。彼の思い描く“家族像”を聞いた。

偶然、原作読んだタイミングで受けたオファー「自分にとって一番落ち着く家族像を歌に」

――原作を読み終えたタイミングで、偶然エンディング主題歌のオファーを受けたそうですが、原作の感想をお聞かせいただけますか。

星野源 シリアスな内容なのかと思いきや、ゲラゲラと笑えるテンションの高い場面もあって。その独特なトーンを徹底しているところが好きです。シリアスでもあり、ただ楽しいだけのコメディでもない、本作ならではのバランス感覚が良くて、シンプルにすごく面白い作品だと感じました。

――「喜劇」にはロイド、アーニャ、ヨルたち“家族”のことだけではなく、星野さんご自身が思う家族像も反映されたそうですが、それはどのような家族像でしたか。

星野源 “これが理想の家族です”という、社会通念としての家族像ってあると思うんですが、僕はそれに居心地の悪さを強く感じていて。今回、自分にとって一番落ち着く家族像と、『SPY×FAMILY』が提示する家族像がすごく近いものがある。その両方の家族感をテーマに楽曲にできたら、自分の歌でもある『SPY×FAMILY』の主題歌になると思いました。
――「喜劇」をレコーディングするにあたり、ボーカルやアレンジ面でこだわったのはどんなところでしょうか。

星野源 歌に関しては、AメロやBメロの孤独感と、グルーブを壊さない程度に語るように歌うようにしました。サビに入ってからは、僕の歌声が地声の低音とファルセットの高音が重なっていて、人数が増えて孤独感が消えていくようにアレンジしました。サウンド面では、キックとスネアの音が本当に素晴らしいので、ここも注目していただきたいですね。今回、スマホのスピーカーをから出るキックの音がすごく好きで。大きいスピーカーでいい音で鳴らせるのは当たり前ですが、スマホのスピーカーでも「いい音!」って感じられる曲にしたかったんです。だから、スマホのスピーカーと普通のスピーカーの聴き比べをしてもおもしろいと思います。

同じく“家族”がテーマだった「Family Song」との違い「今回はより明確な描かれ方になった」

――すでに「喜劇」が流れるエンディング映像をご覧になったそうですが、いかがでしたか。

星野源 3話から流れ始めるのでまだ名前は明かせないのですが、『SPY×FAMILY』の本編チームとは別の、僕の大好きな演出の方が最高の映像にしてくれたんです。その方は、かなり昔に僕のライブを観に来てくださって、その時に『いつか一緒にお仕事できたらいいですね』なんて話をしていたんです。それが今回10年越しぐらいに叶ったので、すごく嬉しかったです。「喜劇」をしっかりと聴き込んで作ってくださったのが映像から伝わってきましたし、歌詞と映像のマッチングも素晴らしいので期待していてください。

――2017年にリリースされた「Family Song」も同じく家族をテーマにした楽曲でしたが、ここ数年で自身の状況も変化し、今回の「喜劇」では込めるメッセージに違いはありましたか。

星野源 「Family Song」を作ったときは、“家族の形を制限しない”という手法を取っていたと思います。だから、曲の中でどんな構成の家族なのか書く必要がなかった。「喜劇」も同じく”家族“がテーマでしたが、そもそも『SPY×FAMILY』が提示する家族像もあったので、「Family Song」より明確な描かれ方になったと思います。血の繋がりの有無は関係ない、心で繋がれて自分がホッとできる感覚をしっかりと歌詞に落とし込もうと思いました。

あと、曲中に『君と話したかったんだ』という歌詞が出てきますが、その相手は人間じゃなくてももちろん大丈夫です。例えば、犬だったら言葉はしゃべらなくても、目や鳴き声で『ねえねえ、うんちして来たよ』って報告してくれるじゃないですか(笑)。漫画の『SPY×FAMILY』にも3巻からボンドという犬のキャラクターが登場しますが、そんな風に、「喜劇」をいろんな形に当てはめて聴いてもらえたら嬉しいですね。

“理想の家族”というものに対する信用のできなさ「家族の数だけ全部バラバラでいい」

――星野さんご自身は、ご結婚を経て、思い描く家族像や理想像に変化はありましたか。

星野源 僕は理想の家族像がないんです。なぜなら、社会が提示する“理想の家族”というものに信用できなさを感じているから(笑)。家族像は家族の数だけ全部バラバラでいいだろうと思います。

――それでは、家族と向き合うにあたり大切にされていることはありますか。

星野源 それもあまりないですね。日々生きていくので精一杯なので…(笑)。ただ、ひとりでその場所にいるというのと、ひとりではないということの違いって、面と向かってコミュニケーションができることだと思うので、それはすごく大きいですよね。

――歌詞に「永遠を探そうか できるだけ暮らそうか」とありますが、いまのお話を聞いて“理想の家族像”がないからこその言葉なのかなと感じたのですが。

星野源 この歌詞は、“永遠なんてないんだよ”という意味合いではなく、永遠というものはないとわかっているけれど、でも探してみようと。そのほうが楽しいよねというニュアンスですね。あと、「永遠を探そうか」だけだと、たぶん“素敵!”で終わってしまうので(笑)、「できるだけ暮らそうか」という言葉を続けています。自分はどちらも同じ“明度”の言葉だと思うんですが、よりロマンティックなほうに光が当たっている言葉と、より現実的なニュアンスに光が当たっている言葉と、その両方を並べました。そんな風に、今回はいろんな光の当たり方をしている言葉たちを全体に散りばめているので、ぜひじっくり歌詞を読んでいただいて、曲もたくさん聴いていただきたいです。


(取材・文=奥村百恵)

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