アニメ&ゲーム カテゴリ
ORICON NEWS

ヤマザキマリ、“湯の道”でつながる「テルマエ・ロマエ」 2度目のアニメ化経て「私の中では終わっていない」

 人気漫画「テルマエ・ロマエ」が約10年ぶりにアニメ化され、『テルマエ・ロマエ ノヴァエ』としてNetflixで3月28日より全世界独占配信中。2009年に単行本化された「テルマエ・ロマエ」は、「私の人生をものすごく変えた作品」「私の中では終わっていない」と、原作者のヤマザキマリさんが湧き出る熱い思いを語ってくれた。

 Netflixシリーズ『テルマエ・ロマエ ノヴァエ』は、ローマ帝国で浴場を専門とする建築技師として働く主人公・ルシウス役を津田健次郎が演じ、原作にはない新たに書き下ろした2つのオリジナルエピソードがあり、各話の終わりには原作者・ヤマザキマリが出演する日本の温泉文化を世界に伝えるミニ実写エピソード「テルマエ・ロマエ巡湯記」も! 「ノヴァエ(新しい)」にふさわしいシリーズとなっている。

 かつてない隆盛を誇った大国、ローマ帝国。この国の繁栄を支えたローマ人にとって、浴場=テルマエは生活に欠かせない存在だ。浴場技師の祖父と父を持ち、やがて自身も浴場技師となったルシウス。しかし設計のアイデアが古いと事務所をクビになり、浴場技師としての窮地に立たされていた。ある日、公衆浴場の大きな排水溝に吸い込まれそうになり、急流に流されながらたどり着いた先は……なんと現代日本の銭湯! タイムスリップしたと知らないルシウスは、壁画のペンキ絵やフルーツ牛乳などの銭湯文化に感動。そこで知った快適な入浴のためのアイテムを次々とローマに持ち帰り、人気の浴場技師になっていく――。
――改めて今回のアニメ化について、率直なお気持ちをお聞かせください。

ヤマザキ「テルマエ・ロマエ」(漫画)は単行本のヒットのあとに阿部寛さん主演で実写化され、フラッシュアニメも作られましたが、日本では原作者はこうした映画やアニメ化に直接関わることはできません。製作委員会の方で進められていく企画を確認する程度です。日本の興行のストラクチャーとはこういうものなのかと理解する反面で、蚊帳の外に置かれていることが、もどかしいという気持ちがありました。なので今回のネトフリのアニメには直接自分も携わることができたので、満足できましたし、とてもうれしかったです。

――描き下ろしのエピソードは?

ヤマザキ今回の2つの新作エピソードはかねてから構想していたものです。どうしてルシウスがあんな風変わりな人間になったのか、彼の子供時代の背景を描けばもっと話が膨らむかなと思ったんです。原作漫画にも出てきますが、幼いルシウスの面倒を見ていた祖父(サビヌス・アエティウス・モデストゥス)や父親も少しだけでも登場させたいと思っていました。ルシウスの祖父も実は優れた建築家で、ルシウスに大きな影響を与えています。今、「プリニウス」(とり・みきとの共著/紀元1世紀のローマ帝国が舞台)という作品を連載していますが、いずれルシウスの曽祖父(祖父の父)につながるのかな(「テルマエ・ロマエ」は紀元130年代/2世紀のローマが舞台)などと考え始めると、祖父は祖父でまた別の漫画のエピソードになりそうですが(笑)。私としては、ローマという文明を浴場で支えてきたモデストゥス家に関しては、フィクションでありながらも特別な思い入れがありますね。

 もう一つ、江戸時代にタイムスリップするエピソードも1回やってみたかった。戦国時代にタイムスリップするというのも考えてみたんですけど、壮大な展開になりそうでとりあえず幕末の江戸時代にしてみました。既存のエピソードでも実写版では扱われなかったものがいくつもあるので、それを今回は余すことなく盛り込みました。
――それほどまでにルシウスに思い入れがあるのはどうしてなんですか?

ヤマザキ自分で意図したわけではありませんが、ルシウスの性格は私自身が反映されているらしいです。「テルマエ・ロマエ」を読んだ高校時代の同級生から「ルシウスってマリだよね。どうでもいいことにとことんこだわるところなんて全く同じじゃん」と指摘されたこともあったのですが、ルシウスのキャラクターは描きやすいですし、あれこれ考えなくてもどんどん勝手に動いてくれる(笑)。忖度なく、体裁とか、人にどう思われるかとか、そんなことは二の次、三の次。生真面目なのに、どこか滑稽でおちゃめ。そんなキャラクターは非常に描きごたえがありますし、社会性には欠けるかもしれないけど、実はこういう人こそイノベーションのスキルが高いということを伝えたかったというのがあります。

――Netflixシリーズとして世界配信されましたが、海外の反応が気になります。

ヤマザキテルマエ・ロマエは世界8ヶ国で翻訳されています。フランスやイタリアでは結構読まれた漫画なので、SNSでも今回のアニメ化を喜んでくれているコメントが結構ありました。海外ではまだ漫画やアニメは子供騙し的な先入観を持った人たちがいます。でも、漫画やアニメの世界というのは本当に広くて深い。今や私のように日本人でありながらイタリアで長年油絵や美術史を学んできたうえ、シリアやアメリカなどの国々に移り住んだ人間が漫画家になる場合もある。「テルマエ・ロマエ」はそんな自分の経験を生かした、比較文化系の作品だと思うので、漫画を読んだことがない人にはもちろん、読んだことがある人にも楽しめると思うのです。アニメや漫画で表現できる世界とはこんなにも振り幅の広いものなのか、世界の人たちに知っていただけるとうれしいですし、それがまた彼らの日常の何かを触発する糧になればいいな、と思います。

Netflixシリーズ『テルマエ・ロマエ ノヴァエ』独占配信中

キャスト:
ルシウス:津田健次郎
マルクス:小林親弘
リウィア:小林沙苗
レグルス:日野聡
ハドリアヌス帝:磯部勉
山口マミ:瀬戸麻沙美
歌川国芳:池田秀一
吉田:櫻井孝宏
ケイオニウス:細谷佳正
マルクス・アンニウス・ウェルス:榎木淳弥

原作・シリーズ構成:ヤマザキマリ(『テルマエ・ロマエ』『オリンピア・キュクロス』)
監督:畳谷哲也
脚本:百瀬祐一郎
アニメーション制作:NAZ
音響監督:田中亮
サウンドエディター :勝俣まさとし
音響制作:ソニルード

あなたにおすすめの記事

 を検索