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クイズ知識から“教養とセンス”に回帰する芸能界 『プレバト!!』新たな需要で枠の争奪戦に?

 クイズバラエティ番組全盛の今、相変わらず大健闘し続けている『プレバト!!』(TBS系)。特に人気を博しているのは「才能査定ランキング」の俳句部門。俳人・夏井いつき氏がお題にした「兼題写真」をもとに芸能人たちが俳句を作り、夏井氏が辛口の解説で添削する…その一連のフォーマットから永世名人の梅沢富美男はじめ、フルーツポンチ・村上健志、Kis‐My‐Ft2のメンバーなどが新境地を開拓した。「頭がいい(知識がある・謎解きができる)」東大生を中心とするクイズバラエティ番組界で、“センス”と“人間味”が試される「俳句」で勝負する『プレバト!!』の存在意義とは?

“詰め込み型”知識ありきのクイズではなしえない教養とセンス

 同番組は視聴率が15%以上を記録することも珍しくなく、同時間帯の番組で全局トップに立つこともある人気番組。特に関西地区の人気が高く、特番では20%に迫ることも。夏井氏は「全国的な俳句ブームを牽引した」として、2018年7月に「放送文化基金賞(個人・グループ部門)」を受賞、以後『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK総合)に登場したり、中学3年生の国語の教科書(令和3年度)に採用されたりするなど、その活躍ぶりは輝かしいばかり。

 その夏井氏に、芸能人たちが作った俳句がボロクソに言われたり、絶賛されたりするのだが、他のクイズ番組と違うところは、俳句には「正解はない」ということ。東大生並みに知識を詰め込めば及第点を得られるというわけでもなく、付け焼刃的な攻略法はない。言い換えれば、誰にでも心に響く「いい俳句」を作ることが出来る可能性があり、これまでの人生で培ってきたセンスが試される場ともいえる。そうした場の中に、芸能人・著名人の挑戦者たち、さらには視聴者たちを夢中にさせる魅力がある。

アイドルや芸人たちの新たな才能の開花を再起をかけた挑戦の場に

  • すっかり俳句コーナーへの出演が定着したフルーツポンチ・村上健志 (C)ORICON NewS inc.

    すっかり俳句コーナーへの出演が定着したフルーツポンチ・村上健志 (C)ORICON NewS inc.

 たとえばフルーツポンチ・村上だが、ネタ番組が少なくなった最近では、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の「運動神経悪い芸人」企画のダメっぷりを称した「ヒザ神」キャラが、一番のウリになっていた感があった。しかし2019年、『プレバト!!』の名人・特待生だけの俳句タイトル戦において、何と村上は2連覇を達成するという思わぬ才能を発揮し、前述の中学3年生の教科書にはその俳句が掲載されるまでに至った。

 また、村上同様、俳句コーナーの常連となっているのがKis‐My‐Ft2の3人であり、名人7段・横尾渉、名人4段・千賀健永、特待生3級・北山宏光とそれぞれ段位を持ち、そのほか立川志らく、堀未央奈、IKKO、森口瑤子等々、意外なほどバラエティにとんだ出演者が挑戦しているのである。

出演権の獲得にも意味あり? 「才能あり」は意外性とハク付けに

  • 「永世名人」に昇格した梅沢富美男 (C)ORICON NewS inc.

    「永世名人」に昇格した梅沢富美男 (C)ORICON NewS inc.

 さらに特筆すべきは、この俳句コーナーに関しては芸能界的な“忖度”が見受けられないこと。バラエティ番組では、出演者は番宣絡みで登場することが多く、視聴者側もなんとなく気づいているし、いわばそれが“通常営業”となっていた。

 しかし、当コーナーのレギュラー以外の挑戦者の面々を見ると、番宣どころか「とりあえず旬の人気者を揃えてみました〜」的なこともない。そもそも番組開始当初からして、すでに芸能界の大御所・ご意見番的なポジションを獲得していた梅沢富美男に対し、普通なら「さすが梅沢さん!」と持ち上げられそうなところを、夏井氏はボロクソにこき下ろす。梅沢は梅沢で「このクソババア…」と憤慨するも、もはやそうした両者のバトルも恒例行事となっていくなど(ちなみに現在梅沢は「永世名人」に昇格)、初めから忖度なしのガチなのである。

 そのうえで梅沢は、「毒舌でビシッと焦点を突く夏井のセンスは唯一無二のもの。自分自身の実力は俳句界全体でいったら中学生くらい」と正直に明かしており、俳句を詠むのは『プレバト!!』だけとも宣言し、他の俳句関連の仕事は断わるなど真摯な姿勢を貫いている。

 こうしてみると、『プレバト!!』で俳句を詠むことができるタレントは、それなりの振るいにかけられて選別されており、さらに「才能あり」のお墨付きを授与できればタレントとして“箔”がつく一面さえありそうである。

お手本も正解もないバトル 本来の“タレント”の意味を体現する場へ

 現在、雑学系クイズ番組の出演者は、東大生(東大卒も含む)タレントを中心に、タレント全般、アナウンサー、クイズ王などが占めているが、『プレバト!!』における俳句枠は、まだ「俳句タレント」のようにカテゴライズされるまでには至っていない。むしろ俳句の才能が認められたタレントからは、それを商売のネタにするのはおこがましい…という“気概”すら感じられる。安易に迎合しそうもない『プレバト!!』の俳句企画には、まだまだ発展する可能性が秘められているようだし、出演を熱望するタレントたちはますます増えているのではないだろうか。

 “タレント”とは「才能」を意味しており、芸能界では「市井の人には成し得ない、浮世離れした(芸能の)才能に富んだ人」の総称として活用されてきたが、本来は重みのある言葉。しかし時代が進むにつれて、“等身大”や“身近”といったキーワードとともに“会いに行ける”ことがウリとなり、タレントと一般人との距離はしだいに近づいていく。

 そんな中、優れた創造性を秘めた文字通りの“タレントたち”が、さまざまな傑作を生み出したり、秀でたセンス・才能を表わす場として『プレバト!!』が登場し、視聴者たちに熱烈に支持されている。

 そもそも『プレバト!!』は、当初の番組名『使える芸能人は誰だ!? プレッシャーバトル!!』の略称。しかし今では、タレントたちがガチで才能を競い合う希少な“プレミアムバトル”の場と化している感がある。それはタレントたちの失われつつある“原点回帰”の場といえるかもしれないし、近づきすぎた一般人との距離に対する、タレントたちの“逆襲”の場なのかもしれない。

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