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使い続けて20年…古典に昇華されたハリセンボン・近藤春菜の「じゃねーよ」
番組を制限しない扱いやすいフォーマット化された芸
結果として「○○じゃねーよ!」はつかみでもオチでも、また大御所でも振りやすいネタとなり、春菜はこの1ネタでさまざまな番組で好感度を上げていき、2016年には「番組出演本数ランキング」女性部門1位にまで昇り詰めるのである。
消費リスクも隣り合わせ 芸人としての力量も発揮できるネタ
そもそも春菜はこの手のネタにありがちな“一発屋”ではなく、ハリセンボンとして2007年のM‐1グランプリで決勝4位、2009年に決勝9位に進出するいわば実力派。春菜自身、バラエティの場を切り抜ける如才なさがあり、年に1回は目にする和服を着た中年女性のごとき成人式の記念写真、という“最終兵器”もある。つまり、お笑い界で生き残っていくスキルは十分に持ち合わせている。
また、「○○じゃねーよ!」というネタ自体、基本的には振られることが多いのだが、春菜自身のボケツッコミでも成り立つところが強みだ。ましてや、角野卓造やマイケル・ムーア監督、シュレックといった“ネタ元”は性別・人種・生物学上の分類を超え、近藤春菜に似ているというだけの自虐ネタであり、春菜にしかできないネタ。つまり、ほかに代わりがいない。
昨今、容姿イジリはセンシティブな問題も含むが、春菜自身ためらいもなく受け入れており、むしろお笑い芸人としての職責をまっとうしていると見えるため、視聴者としても安心して笑っていられる。さらに冷静に考えれば、丸顔+メガネ(+垂れ目?)であれば、何でも春菜に近づくともいえるので、◯◯の部分が無限に増えていく可能性すらある。
大御所も新人も素人も…誰でも振れる古典芸
また、話題のガールズユニット・NiziUも同番組にゲスト出演した際、春菜の“生○○じゃねーよ!”にはしゃぐ一幕もあり、どうやらこのネタは若い世代も含め、幅広い層が受け入れているようなのである。こうなると、春菜と共演する誰もがいいツッコミをもらいたくて、いいフリを考えるといった好循環が生まれ、春菜が形成するこうしたインタラクティブな“ノリツッコミ”の場は、今や唯一無二のものといっていいかもしれない。
周囲の芸人、芸能人のみならず視聴者をも巻き込んで進化・成長し続ける近藤春菜の「○○じゃねーよ!」。今年3月の『スッキリ』卒業には、「本業の芸人としての活動に力を入れたい」といった強い思いが込められているそうだが、今後は春菜の「○○じゃねーよ!」じゃない方のネタにも期待したいところである。