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GACKTやてんちむにも矛先が…芸能人プロデュース商品、責任はどこまで?
プロデュース商品への関与の大きさに、明確な基準はない
【佐藤弁護士】『プロデュース業務委託契約』や『コラボレーション契約』など、契約書の名称自体は様々ですが、一般的には、タレントが企業に対して、該当商品のデザインや色などについて考案したり、助言や監修をしたりすることが多いといえます。
――商品にどの程度関与していると、“タレントのプロデュース”と銘打てるのでしょうか?
【佐藤弁護士】様々な契約書等を見る限り、タレントが考案せず、単に簡単な監修をしているだけでも『タレントのプロデュース』とされていることもあります。法的にどこまでタレントが関与していたら、『タレントのプロデュース』と銘打てるのかという基準はないように思います。もちろん、全く関与していない場合には問題になるかと思います。
――『G&R』の場合を例にすると、GACKTさん、ローランドさん、企画に携わった門りょうさん、株式会社dazzyが模倣を認めて謝罪しましたが、そもそも、デザインを模倣する行為は違法、罰則の対象にならないのでしょうか。
【佐藤弁護士】他社のデザインを模倣する行為は、『知的財産権等の侵害』となり得ます。法的な議論の分かれるところですが、仮にデザインについて著作権が認められる場合、無断でデザインを模倣したり、改変したりする場合、『著作権侵害』が成立します。また、ダイレクトにデザインを保護する法律として『意匠法』という法律があり、登録されているデザインを模倣等すれば、『意匠権侵害』も成立します。また、不正競争防止法などその他の法律にも抵触する可能性があり、違法行為といえます。
パロディも場合によっては違法となる可能性も…クリエイターも法律の勉強が不可欠
【佐藤弁護士】「ここからがセーフ、ここからがアウト」という線引きは一概には言えませんが、デザインの特徴的な部分が一緒であれば模倣とされる可能性が高くなります。
――優れたデザインを模倣する行為がなくならないのはどうしてなのでしょうか?
【佐藤弁護士】これは個人的な考えになってしまうのですが、いくつかのパターンがあると思っています。まずは、(1)「このくらいであれば大丈夫」と思っている場合、(2)〆切になど過度に追い詰められ、ダメだと認識しながらもやってしまった場合、(3)そもそも「バレない」と思っている場合等があると思っています。そのため、クリエイターに対して、法律家による知的財産等の勉強をさせながら、過度に追い詰めないことが大事だと思っています。
――現在はSNSなどもあり、1億人の目でパトロールされているともいえる状況ですが、あからさまなパクリ、模倣がどうしてバレずに済むと思ってしまうのでしょうか?
【佐藤弁護士】こちらも個人的な考えではありますが、「バレるかもしれない」とは認識していると思っています。もちろん似ているデザインがあると知らなかったケースもあるかと思いますが、法律に対する認識が甘いか、追い詰められてしまい、やってしまうケースも少なくないのではないかと思います。
――また、パロディと模倣に、明確な違いはあるのでしょうか?
【佐藤弁護士】もちろんパロディも、その態様によっては、模倣と同様に『知的財産権等の侵害』になる可能性があります。そのため、明確な違いはないと思っていますが、概念的には、パロディは、特定の人物等を模して、ユーモアに表現するものであり、単なる模倣とは異なるでしょう。
企業側、タレント側、双方に、お互いのイメージを損なわない努力が必要
【佐藤弁護士】商品開発に関する契約のなかでは、当然ながら、お互いに秘密保持義務があります。もっとも、契約当事者の承諾を得ている等の正当な理由があれば、対外的に説明しても責任はないと考えられます。また、クリエイターから上がってきたデザインに対して、タレントが模倣かどうかまで全て確認することは非常に困難であると思っています。
――GACKTさんや、門りょうさんがはっきりと怒りを表したことにSNSでは賛否が割れた印象もあります。タレント側の表明として適正なものはどんなものなのでしょうか。
【佐藤弁護士】弁護士としての炎上対応の経験からしますと、炎上を鎮静化させるためには、事実関係を説明したうえで、感情的にならず、丁寧に謝罪をすることが良いといえます。それが難しい場合には、さらに炎上することを防ぐために、炎上が鎮静化するまで極力対応しない方がまだ良いといえます。
炎上の初期段階で、感情的になったり、自分は悪いことをしていないという説明に終始したりしますと、さらに炎上し、タレントの評価を下げてしまうことが多々あります。多くのタレントは、しっかりと事情等を説明すればわかってくれると思ってしまうのですが、実際には、たとえそれが真実だとしても「言い訳だ」「責任逃れ」等とさらなる批判に晒される傾向があります。
――タレントの名前を使って商品を訴求しているにも関わらず、商品が模倣品だった場合、企業側がタレント側の名誉を傷つける行為に当たる可能性はあるのでしょうか?
【佐藤弁護士】プロデュース契約等の中には、企業側に対して「タレントのイメージを損なうような言動をしてはならない」等とイメージ保持義務を課している場合があります。そのため、“プロデュース”という名目で、タレントの名前を使って商品の魅力を訴求しているにもかかわらず、その商品が模倣品だったり欠陥商品だったりして、タレントの評価や信用を毀損した場合には、タレントの評価や信用を傷つける行為として、企業側はタレント側から損害賠償を求められる可能性はあります。
返金対応は、法的な対応ではなく企業としての“経営判断”
【佐藤弁護士】プロデュース契約等の中には、タレントに対しても「企業・商品のイメージを損なうような言動をしてはならない」などイメージ保持義務を課している場合があります。そのため、タレントが商品のイメージを損なうような言動をした場合には、契約違反等になります。
――タレント側が商品の返金義務を全て負うことは妥当なのでしょうか?
【佐藤弁護士】それは妥当でないと考えます。もちろん、タレントが任意で全ての返金義務を負うことには何ら問題ございませんが、基本的には、タレントだけが法的に全ての返金義務を負うことはございません。どのようなトラブルかによりますが、本来は、消費者に対する一次的な責任を負っているのは、企業側となります。
――商品の本質に欠陥がなくても、消費者への返金対応が妥当なのでしょうか?
【佐藤弁護士】返金対応をするかは法的な対応というよりは、企業としての経営判断になると思います。仮にタレント側が商品に関する何らかの事実を隠していたとしても、商品の本質である機能については何ら欠陥がないとすれば、原則として、その売買契約を解除等することが難しいと考えます。もっとも、そのタレントの宣伝方法に明らかな虚偽内容があれば、それで誤解して購入したというケースもあり、そういった場合には、売買契約の解除等ができる可能性があります。
――インフルエンサーマーケティングなども盛んですが、「タレントのプロデュース商品」と「タレントのオススメ商品」の違いは、消費者はどのように考えればよいでしょうか?
【佐藤弁護士】前者は、タレントがその商品のデザインや色などに監修も含めて関与している場合であり、後者は、そういった関与はしていないが、自分が使用等をした経験からおススメしている商品であると考えるのが良いと思います。