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古澤健監督 SPECIAL INTERVIEW “ロマンチック・コメディ”マスターが語る『今日、恋をはじめます』 恋愛経験のない女の子の自己評価が低いという表現――
恋愛映画はファンタジーであった方がいい
【古澤】 好きですね(笑)。自主映画を作っていた頃はラブストーリーを撮っていたんです。なので、ようやく仕事でラブストーリーができて良かったなと。
──どんなラブストーリーが好きですか?
【古澤】 学生のときは洋画ばっかりで、『25年目のキス』『ラブ・アクチュアリー』とかハリウッドのロマンチック・コメディを好きでよく観ていました。昨年公開された『ラブ・アゲイン』も観ましたけど、やっぱり(ロマコメは)いいなぁと。って、『今日、恋をはじめます』の話を絡めないと……。
──続けてください(笑)。
【古澤】 そんなハリウッド映画のロマコメ好きなので、そのアンチ・ロマコメ映画『(500)日のサマー』はダメだったんです。実際の恋愛って『(500)日のサマー』に近いんですよね。だから、片想いをして、フラれる(苦笑)。でも、それを映画館にわざわざ観に行ってもおもしろくない、せめて映画はファンタジーであった方がいいんじゃないかって思うんです。なので、『今日、恋をはじめます』はそんなファンタジーな恋愛映画にしたいなと。
──いまの話を聞いて納得しました。原作のキラキラ感、女子が好きそうな感覚を、なぜあんなにも上手く描いているんだろう? と不思議に思っていたんです。その線がつながりました!
【古澤】 (笑)なので、この映画をよくぞ僕の所に届けてくれた!と。
──ガッツポーズだったわけですね。監督のところにオファーが来た段階では、武井咲さん、松坂桃李さんのキャスティングは決まっていたんですか?
【古澤】 決まっていましたし、嬉しかったですね。会ってみると本当にいい人たちで。このふたりであのキラキラした世界をどう作ろうか、という楽しみもありました。映画だからこそやれることもあるなと思っていて……。
実際にはないからこそキラキラして映る
【古澤】 武井咲ちゃんの“今”しかない表情をどう映し出すかとか。だって、もうかわいすぎじゃないですか(笑)。漫画は静止画なのでキメの表情で(かわいさを)表現するけれど、映像は動きのなかでそういう瞬間を描くことができる、それが映画の醍醐味だと思うんです。咲ちゃんも桃李くんも、ふたりの自然な感じを狙いました。映画でヒロインが着ていたあの服を着てみたいとか、あの場所にデートに行ってみたいとか、映画を観た方にそんなふうに感じてもらいたいですね。
──デートというキーワードが出てきたので、ロケの話も少し聞かせてください。この映画、デートシーンだけでも映画館、動物園、セレクトショップ、ヘアサロン、ビーチ、天文台……かなりのロケを行っていますよね?
【古澤】 そうなんです、大変でした(笑)。でも、大変ではあるんですけど、そこは削りたくなかった。デートの楽しみって、いろんな場所に好きな人と行けること。なので、そういう疑似体験は削りたくなくて、制作部に無理をいっていろんな所に行きました。撮影自体は1〜3月という寒い時期だったんですが、映画としては高校2年までを描いているのでいろいろな季節を描かなくちゃならくて。このシーンなくてもいいんじゃない? という消極的な意見も出たりしましたが、そうじゃない! 絶対になくちゃダメだ! って(笑)。
──貫いたわけですね。そのデートシーンのなかには、監督自身のデートの思い出、もしくは願望が入っていたりしますか?
【古澤】 ほぼ全部ですね。行きたかったけれど行けなかった場所が盛り込まれています(笑)。この原作の良いところは、ファンタジーだよなっていう夢の部分と、嫉妬とかつまらない意地の張り合いってあるよねっていうリアルな部分、その両方がうまく出ていること。それを映画でも描きたいと思ったんです。前半のファンタジー的な感じは、実際にはこれはないよって僕も思っています。けど、実際にはないからこそ、中高生が観ても大人が観てもキラキラして映るんじゃないかなと。一種の心象風景だと思うんですよね。実際はダサいデートであっても、ふたりが盛り上がっているとキラキラして見えるじゃないですか。
──ですね。キラキラ感、しかと受け止めました! つばき役の武井咲さんの昭和女キャラ、京汰役の松坂桃李さんのSキャラも楽しませてもらいましたが、ふたりの意外なキャラクター、どう引き出したんでしょう?
【古澤】 武井咲ちゃんをダサキャラにするというのは、無理です。ぶさいくな女の子がきれいに変身しましたという映画は古今東西たくさんありますけど、そもそも最初からきれいですから(笑)。90年代の映画で『シーズ・オール・ザット』という、学園イチぶさいくな女を落とせるかというロマンチック・コメディがあるんですけど、ヒロインのレイチェル・リークックは最初から一番かわいいですから(笑)。
──(笑)では、どうやって武井咲さんを昭和女にしたんですか?
【古澤】 この手の映画でいうぶさいくとは、見た目がどうかではなく、恋愛をしたことのない女の子の自己評価が低いという表現なんです。周りからは「きれいな顔をしているのに……」って言われていても、自分ではそれに気づいていない。だから、咲ちゃんをどうダサくするのではなく、いかに(観客にとって)身近な存在かということを表現できればいいと思いました。
(文:新谷里映)
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