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『まどマギ』『Fate』、希代のヒットメーカー・虚淵玄氏が語る、テレビ人形劇の可能性と“アナログ手法の再評価”

虚淵玄氏(ニトロプラス) Interview

虚淵玄氏(ニトロプラス) Interview

 アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』、 『Fate/Zero』、特撮『仮面ライダー鎧武/ガイム』などで知られる脚本家・虚淵玄氏(ニトロプラス)。長編アニメ映画『GODZILLA』も手がけ、多方面で注目される希代のヒットメーカーが、昨年から原案・脚本・総監修を務めているのがテレビでも放送された布袋人形劇『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』(TOKYO MXほか)シリーズだ。日本でテレビ人形劇といえば、1960年代放送の『ひょっこりひょうたん島』、80年代放送の『人形劇 三国志』(ともにNHK総合)などが有名だが、現在では見る機会も少なくなった。日本のテレビ人形劇の系譜が途切れつつあるなか、台湾の伝統芸能“布袋劇(ホテイゲキ)”に目をつけて、新たな挑戦に挑んだ虚淵氏に、同作への思い、今後のコンテンツとしての人形劇の可能性などを聞いた。

人形操作のプロになるまで15年、「職人がスターダムにいられる世界を」

 台湾の伝統芸能“布袋劇”をもとにした、80年代から今日に至るまで放送され続けている人形劇『霹靂布袋劇』(霹靂國際多媒體股フン有限公司制作(フンは人偏に分))は、台湾で視聴率97%を記録したこともあるという人気シリーズ。『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』は、それを日本版にアレンジしたもので、現在第2シリーズが放送中の武侠ファンタジー人形劇だ。“美しすぎる”イケメン人形たちがハードな戦闘を行い、流血をも伴う派手な演出や現代ならではの映像表現と豪華な声優陣などで注目されている。

 人形劇『霹靂布袋劇』との出会いについて、虚淵氏は「『仮面ライダー鎧武/ガイム』をやっていた頃に台湾の展示会で見て衝撃を受けました。これだけのクオリティなのに、日本の誰も目をつけてない。チャンスだと思い、霹靂社さんに翻訳で日本に紹介したいと相談したところ、オリジナルのコンテンツを作った方がより上手く行くだろうという流れになって、『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』が出来ました」と明かす。

 本場台湾の『霹靂布袋劇』制作スタッフが映像を作っているという『Thunderbolt Fantasy Project』、その魅力はやはりド派手なアクション。「脚本に『必殺技がさく裂』『にらみ合う』と書いただけでも、イマジネーションを膨らましてものすごい映像にしてくれます。にらみ合いながら、空を飛んだりするだけでなく、浮いたり(笑)。そういう演出の過剰さが味になっています」と虚淵氏も台湾の職人芸を称賛。圧巻のアクションシーンは作品の見どころであり、『Thunderbolt Fantasy Project』の軸とも言える。「人形を動かす職人は15年かかってようやくプロになれると言われています。そういう職人がスターダムにいられる世界であってほしい」と職人へのリスペクトもあるようだ。

 さらに、台湾では『霹靂布袋劇』のDVDがコンビニで毎週5万本程度売れているとのことで、「伝統芸能として、かつてはお寺などに屋台を立ててやっていたそうです。そこから、映像作品としてレンタル業界に進出し、自分たちで放送局まで作り霹靂社という会社組織にまでした」と自ら販路を獲得した姿勢も独自的だと話す。「台湾で布袋劇が今でも続いているのは、最新のテクノロジーを取り入れ、時代に合わせて変化させ、『視聴者をいかに楽しませるか』を第一に考えてきたから」と職人芸と最新技術の融合が、布袋劇が今もなお続く理由の一つだと指摘する。

「布袋劇の根幹は残す必要があるが、必ずしも“純度”を保つ必要はない」

 そんな台湾の伝統文化である布袋劇をもとに、『Thunderbolt Fantasy Project』を制作するにあたり、「布袋劇の根幹は残す必要があるが、必ずしも“純度”を保つ必要はない」と、アレンジを加えたという。「『霹靂布袋劇』では、口白師(コウハクシ)と呼ばれる弁士さんが全部のキャラクターを一人で演じ分けます。でも、それは台湾語の独特な節回しあってのものなので、日本語での再現は諦めざるを得ませんでした。そこで、“声の演技”に特化させ、声優さんを起用しました」と日本ならではの文化でもある“アニメ路線”で制作したと語る。

 そんな声優の起用が、本場台湾での人気を後押ししているようで、「もしかしたら台湾では受け入れられないのでは……と思ったのですが、むしろ逆で、声優さんの起用がアニメの視聴者を引き込んでくれました。声優ファンの方が、新たに興味を持ってくれるきっかけにもなったそうです」と台湾でもブームの兆しが生まれているという。

 『Thunderbolt Fantasy Project』は漫画化、さらに宝塚歌劇団による舞台化まで行われ、メディアミックスが進行中。「正直なところ壮大な構想はないんですが、登場キャラクターを掘り下げていけるような作品にしています。僕じゃなくても脚本が書けるぐらい、いろんなクリエイターが参加して、作っていけるコンテンツになれば、それこそ『ガンダム』みたいになれる。気の早い話ですが、そのぐらいの大らかさで作品に付き合おうという気持ちではいます」と長期化作品として武侠ファンタジー人形劇の定着を構想しているようだ。

“アナログ手法の再評価”

 そもそも虚淵氏のテレビ人形劇との出会いは、『人形劇 三国志』とのこと。「三国志を書籍で触れる前に見ていたので、中国の戦記モノの原点との出会いはそこだったかもしれません。ほかにもSF人形劇『Xボンバー』(フジテレビ系・1980年放送・永井豪原作)も好きでした」。三谷幸喜が、2009年に『連続人形活劇 新・三銃士』(NHK教育)、2014年に『シャーロック ホームズ』(NHK Eテレ)の脚本を手がけた人形劇などもあったが、かつて程の人気はないのが現状である。その点に関して虚淵氏は、「もしかしたら、玩具との連携が上手くいかなかったからですかね。そこをビジネスとして意識しながら続けていれば、アニメと同じ地位にあったかもしれません」と、テレビ人形劇の衰退について分析する。

 あくまで『霹靂布袋劇』と、日本で親しまれたテレビ人形劇は“流儀が違う別物”としながら、その共通点もあるという。「両者の共通点を挙げるとするなら、“アナログ手法の再評価”ではないでしょうか。どんどんデジタルの幅が広がっていくからこそ、“手”でやることに意味が出てくる。手で描いたアニメに味があるように、人形ならではの魅力は必ずある」と、人の息吹をより感じられるアナログならではの良さを指摘した。

 台湾で培われたアナログの職人芸と、虚淵氏ならではのミステリアスでサスペンスフルなストーリーが人気の『Thunderbolt Fantasy Project』。虚淵氏は今作を「作品作りの原点回帰」とも語り力を注いでいる。まさに“この作品でしか見れない”独自性を武器に、日本と台湾の懸け橋となる最新の人形劇の可能性に刮目したい。

(文:藤野智洋)

Informaiton

<Thunderbolt Fantasy Project>
台湾で「知らない人間はいない」と言われるほど、子供から大人まで楽しまれてきた人形演劇『布袋劇(ほていげき)』。その映像にほれ込んだニトロプラス“虚淵玄”が原案・脚本・総監修を担当、台湾布袋劇で随一の知名度とクオリティを誇る制作会社“霹靂國際多媒體股フン有限公司制作(フンは人偏に分)(略称:霹靂社)”との奇跡のコラボレーションによる、完全新作の日台合同映像企画。

【『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』放送】
TOKYO MX:毎週月曜22時から
BS11:毎週月曜24時30分から
サンテレビ:毎週月曜25時30分から

【公式サイト】
http://www.thunderboltfantasy.com/season2/(外部サイト)

<Profile>
ニトロプラス“虚淵玄”
アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』『PSYCHO-PASS サイコパス』、特撮『仮面ライダー鎧武/ガイム』、アニメーション映画『GODZILLA三部作』など、話題作を手掛ける二トロプラス所属の脚本・小説家。

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』PV第2弾

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