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嬉しさと背中合わせ“ファンサプライズ”の是非 一歩違えば妨害にも?
「ファン第一」で考えられた演出と、それを見る側のマナー
実際、コンサートの進行・演出の妨げになるとすれば、これはやはり正論というべきではないだろうか。ファンに対して“上から目線”という声もあるかもしれないが、公式ツイッターでは、「雨天のため開場時間を1時間繰り上げる」などのツイートもあることから、まずは「ファン第一」を考えていることは間違いなさそうだ。
野外フェスティバルが定着した最近では、モッシュ(観客同士がおしくらまんじゅう状態でもみ合う)やサークルモッシュ(輪になって行なわれるモッシュ)、ダイブ(ステージに上がって観客の上に飛び込む)などがよく見られるが、危険なので禁止されている場合が多い。また、サイリウムを手に持って踊るような“ヲタ芸”も一般化したが、これらはいわばコンサートやライブを“ネタ”に観客が盛り上がる行為であり、ある意味“演者不在”の勝手な行為と言えなくもない。逆にロックフェス系では、お目当てのアーティストを最前列で見るために、その前に出演するアーティストから最前列で場所取りして微動だにしない観客が、「地蔵」と呼ばれて蔑まされたりもしている。
一方ではフォーマット化されたwin-win な“サプライズ企画”も存在
AKB48を例にとると、2006年に増山加弥乃(2007年卒業)の12歳の誕生日を祝ったことがルーツとされる。有志が他のファンにクラッカーを配ったりしていたのだが、現在では「生誕祭実行委員」なるものができ、ファンと運営側が協力し合うイベントにまで発展しているのだ。さらには、観客が主役となる「お客様生誕祭」までもあるという。
乃木坂46の場合は、AKBのように劇場を持っていないため、個別握手会で生誕祭が行なわれる。運営側が開催する公式の企画ではなく、有志が集まって企画を練り、運営側に許諾を得て行なう。握手会レーンの飾りつけやお揃いの生誕祭Tシャツを着るなど、趣向を凝らしたサプライズが多いのが特徴だ。中でも中田花奈のファンは、東京メトロ・乃木坂駅構内とJR東日本・笠寺駅構内に毎年、駅広告として「生誕記念ポスター」を掲出している。毎年の生誕員会参加者の中には、「去年のポスターを見て生誕委員をやりたいと思った」というコメントもあるそうだ。
こうしてみると、SNS以外でファン同士の“横のつながり”ができる貴重なきっかけでもあり、公演当日にできる“ファンの一体感”とはまたひと味違う、心のこもったお祝い(サプライズ)であると言えよう。
新たな門出を祝う…アーティスト×企業×ファンをつなぐサプライズ
カードは3.5万枚超が集まり、引退に向けた最後のイベントが行なわれた沖縄ぎのわん海浜公園にて展示され、本人にも届けられた。企業側としては、今までのテレビCMにはなかった統一の素材を参加各社が自社ロゴをつけてオンエア。プロジェクトの特設サイトでは、各社すべてのロゴをクレジットした合同バージョンを配信している。
ユーザーへの訴求目的や利害関係を超えて、ファンと企業が一緒となって安室奈美恵というひとりのアーティストを労い、そして新たな門出を祝うというかつてない巨大サプライズ企画となったのである。
もちろん、ファンのサプライズ企画の形はさまざまであり、アーティスト側に喜ばれる場合もあれば、困惑されることもあるだろう。しかし、サプライス企画は「善意からのものであること」が大前提であろうし、自己満足や無理やり感、一部からの強制であってはいけないもの。祝う側も祝われる側も心から喜べるもの、誰も嫌悪感を抱かないような形であることが、何より大切なのではないだろうか。