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一発ギャグは諸刃の剣? あばれる君の“特異性”がピン芸人の新たな指標に
インパクトが強ければ強いほど風化しやすい一発ギャグに苦心する芸人たち
とは言え、これまでブレイクしてきた一発屋芸人、たとえばダンディ坂野、レイザーラモンHG、小島よしお、スギちゃんといったピン芸人は、そのネタが強烈だっただけに賞味期限が短かったのも事実だ。一発ギャグのインパクトが強ければ強いほど、風化が早いというのも彼ら芸人にとっては悩ましいところであろう。
コンビ時代に培った技術で“推しギャグ”が無くとも輝くピン芸人たち
だが、あばれる君はデビュー当初から生粋のピン芸人。やたら渾身の力を込めているようだが、見事な空回りを見せるコント、そしてなぜかそのコントのBGMが鬼束ちひろの「月光」というシュールっぷりだ。その力の入ったひとりコントは、あばれる君自身が「尊敬する」と語る劇団ひとりのコントに通じる部分もあるが、劇団ひとりのコントはときに狂気すら感じさせる知的なものであるのに比べ、あばれる君のほうは、どこか汗と涙にまみれた高校球児的な泥臭さを感じさせる。そしてその演技はいつ見ても“あばれる君”そのままなのである。
発言求められオタオタ…あばれる君にしかない武器は“ウソのない汗”?
2015年放送の『行列ができる法律相談所』(日本テレビ系)では、まんまとハニートラップに引っかかり、売れない時代を支えてきた美人妻に「死ねばいいのに」と罵倒されていたあばれる君。一歩間違えば“ゲス不倫”非難を浴びる可能性も無きにしも非ずだったが、そのキャラクターからか、今でも“愛妻家”イメージが強く、好感度も高い。
一発ギャグでブレイクした一発屋芸人やそのほか多くの芸人たちは、今ではネタやギャグだけでテレビに出続けることがなかなか難しくなっている。そんな中、ますます需要が高まっている感すらあるピン芸人・あばれる君のポジションは、やはり特異と言っていいだろう。“これ!”といった鉄板の持ちネタがあるわけでもなく、流暢なトーク力や切り返す反射神経に優れているわけでもない。まさしく、その一生懸命さと見た目のインパクト、額に噴き出す汗だけなのである。それでも、あばれる君のそのまっすぐさ、必死さ、出し惜しみのない“熱血バカっぷり”は、今後も視聴者に愛され続けていくはずだ。