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朝ドラも5作出演の“常連”、佐藤仁美の強烈過ぎる存在感
スカウトキャラバンの頂点に立った王道の清純派も“天狗”になり仕事激減
そうして女優デビューした佐藤は、今なお“伝説の名ドラマ”として語り継がれるドラマ『イグアナの娘』(テレビ朝日系)で、主人公・菅野美穂の親友役を好演。さらに、ドラマ『ビーチボーイズ』(フジテレビ系)では広末涼子の親友役を演じ、“ヒロインの親友役ポジション”で知名度を上昇させる。
そしてついに1997年、佐藤は映画『バウンス ko GALS』では主演を果たす。当時一世を風靡した“子ギャル”役を演じて、渋谷を“アムラーファッション”で闊歩していたギャルからも一目置かれる存在に成長。さらには演技面も高く評価され、同映画で、ブルーリボン賞の新人賞、キネマ旬報新人女優賞、翌年のヨコハマ映画祭の最優秀新人賞と、新人賞を“総ナメ”したのだった。
まさに人気が“バウンス(跳ね上がる)”して、一足飛びでスターダムにのし上がった佐藤は多忙を極める。するとやはり出てきてしまうのが若気の至りで、「天狗になっていた」と佐藤自ら昨年放送の『今夜くらべてみました』(日本テレビ系)に出演して当時を振り返っている。衣装にピンマイクが付いていて、音声スタッフに聞こえることが分かっていながら、「どうして誰もお茶持ってこないんだ!」と言い放つような、かなりの悪態をついていたことを自ら暴露しているのだ。そのためか、20代後半からは仕事が激減。「今まで態度が悪かったから」と佐藤は反省し、そこから態度を改めたことを明かしている。
バーベキューでパンツ紛失?? バラエティで新たな魅力を開花
『ナカイの窓』(日本テレビ系)の「お酒大好き芸能人」などを筆頭に、「酒は四合は軽く飲む」「新宿二丁目のゲイバーで自分をキャサリンと呼ばせ泥酔」などの大胆暴露を連発。『しくじり先生』(テレビ朝日系)では、バーベキューで“野ション”してパンツを紛失して、それでも酒を飲みづけたという“女傑”ぶりまでカミングアウトした。
そこまで彼女のマインドをオープンにさせたのは、足繁く通った新宿二丁目のゲイバーのママに影響を受けたことを明かしている。人に好かれることを一切気にせず、己の道を貫いて、自由に生きているママの生き様に大きな影響を受けた佐藤は「あるがままでいいだ」という自己肯定感を獲得したのではないだろうか。
その一方、“脱・天狗”を果たした彼女は、感謝の気持ちを忘れない女性へと成長。4月8日放送の『めちゃ×2イケてるッ!スペシャル』(フジテレビ系)では、その体型から「スタッフから長州小力と間違えられて声を掛けられる」という奇想天外なドッキリを仕掛けられた。絶句するように驚いた佐藤だが、『めちゃイケ』だとネタばらしをされた瞬間、彼女は「うわー! 嬉しい! 初めて出た!」と感激。バラエティ対応力もバッチリな、キャッチーなコメントでスタッフに感謝を語るまでの境地に達した。
“素”の魅力を女優業にも還元、女性バイプレイヤーの代表格に
そんな彼女の演技の“転機”となったのは、最高視聴率40%を記録した2011年のドラマ『家政婦のミタ』(日本テレビ系)。そこで佐藤は、息子を溺愛する教育ママ・皆川真利子役を任される。ヒステリックに怒る演技のハマり度合いは大反響を巻き起こし、ロケを見に来ていた小学生に「おい、クソババア」と1時間ささやかれるという奇妙な経験もしたという。だが、それは彼女の演技がそれだけのリアリティを持っていたことの証左だけに、一種、役者冥利に尽きる体験だったはずだ。
さらに、その皆川真利子役について、異例の出来事も発生。2012年放送のドラマ『トッカン -特別国税徴収官-』(日本テレビ系)で、作品をまたいで同じ役で出演するというクロスオーバー企画まで実現される。両作ともに脚本家・遊川和彦氏が手がけていたことから実現したものなのだが、それは佐藤のインパクトある演技が招いたミラクルだった。かつては天狗になり仕事が激減したが、真剣に演技と向き合い、自ら、縁を手繰り寄せたのだった。
『バイプレイヤーズ〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜』(テレビ東京系)が放送されるなど、コクのあるバイプレイヤーの存在は作品の味わいをさらに奥深いものにさせてくれる最高のスパイスとなっている。女性バイプレイヤーは男性よりも注目されづらいような印象もあるが、今や名脇役として名を馳せるようになった佐藤は、ドラマ『東京タラレバ娘』(日本テレビ系)のスピンオフ作品『東京ダラダラ娘』(Hulu)に主演。さらには、1月に公開された映画『惑う after the rain』で13年ぶりに映画主演を果たすなど、まさに脂の乗った状態。『ひよっこ』での佐藤は、無愛想で若い女性を勝手にライバル視するレストランのホール係役として、清涼感あふれる主演女優・有村架純と今後どんな絡みを見せるのかも注目されている。彼女の“そこにいるだけで成立する”女優としての個性は、余人をもって代えがたい。
(文=藤ノ宮士郎)