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笑いを取るのは不謹慎なのか? 葬儀で見る芸人の本懐
赤塚不二夫さん葬儀でのタモリの7分56秒の弔辞は伝説に
超人気マンガ家の赤塚さんがまだ素人だったタモリの芸に心酔、赤塚宅へ居候させながら月に20〜30万円の小遣いまであげていたが、タモリは礼も言わないなど、シュールな師弟関係があったことはつとに有名。
そのタモリが赤塚さんの葬儀では、「私もあなたの数多くの作品のひとつです」と締めくくる感動の弔辞を残すのだが、手にしていた紙は白紙ではないかと話題になり、事実、前日に酒を飲んでいたタモリは「面倒くさくなって」「赤塚さんならギャグでいこう」と“勧進帳”(歌舞伎の演目で、弁慶が関所で白紙の巻物を読んでその場をやり過ごす話)だったことが発覚。タモリはあの7分56秒の名弔辞をアドリブで語っていたという衝撃の事実が明らかになったのである。
「関西で言えば、師匠であり『漫画トリオ』の同僚メンバーでもあった横山ノックさんへ贈った、上岡龍太郎さんの“献杯の挨拶”が伝説となっていますね。上岡さんは“ノックさん、あなたは僕の太陽でした”と謝意を述べながらも、“漫才師から参議院議員、大阪府知事から最後は被告人にまでなったノックさん”と笑いをとりました。そして“芸人を送るのに涙は似つかわしくありません”と締めたんです。一方、ビートたけしさんのお母さんのときは、意外にも誰もが知るあの“たけしらしさ”がなく、インタビューで号泣して視聴者を驚かせました」(エンタメ誌編集者)
たとえ葬儀の場でも“舞台”のひとつ 芸で見送ることこそが本懐
「不謹慎なようですが、とくに芸人にとっては、たとえ葬儀の場でもやはりステージであり、舞台のひとつなんですよね。事実、マスコミや視聴者もそう見てしまう。葬儀の場における芸人としての立ち居振る舞いは、はっきり言えば“芸風”そのもの。芸人たちも自分たちを見せる場として認識しているのではないでしょうか。ただ、それは参列者や世間へだけではなく、故人に対してという意識があることでしょう。自分の仕事であり誇りである芸で見送ることは、親しい間柄であればあるほど故人にも喜ばれているのではないでしょうか。芸人にとっての本懐ともいえると思います」(前出・編集者)
今回、2組の芸人が肉親の葬儀で見せた芸が話題になったわけだが、芸人だけでなく芸能関係者の葬儀の場も常にマスコミに囲まれる。そこでの芸人のパフォーマンスが注目されることは避けられないし、芸人の宿命といえる。そこで彼らが故人をどう見送るか、なにを残せるかは、故人を想いその瞬間に全てをかけた芸人たちの生き様を映し出すことになるだろう。