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大河ドラマの人気を左右する、“ナレーション”の重要性
近年ドラマのナレーションは、大河と朝ドラのみ 民放ドラマではほぼ絶滅
『真田丸』のナレーションが好評のNHK有働由美子アナウンサー(C)ORICON NewS inc.
また、刑事ドラマで言えば、『大都会シリーズ』(日本テレビ系)や『西部警察シリーズ』(テレビ朝日系)のナレーションを担当した声優・小林清志も知られる。アニメ『ルパン三世』(日本テレビ系)の次元大介役でもおなじみだが、萬屋錦之介版『子連れ狼』(同系)でも印象深いナレーションを演じていた。しかし1990年、芥川さんが亡くなったあたりから、民放ドラマからナレーション自体が徐々に消え始め、現在ではNHKの朝ドラか大河ドラマだけ、という状況になったのである。
近年の大河ドラマのナレーションは、『龍馬伝』(2010年)は香川照之、『江〜姫たちの戦国』(2011年)は鈴木保奈美、『平清盛』(2012年)は岡田将生、『八重の桜』(2013年)は草笛光子と、俳優がナレーションを務めることが多かった。しかし過去の節目節目では局アナが担当することが多く、大河バブルの先駆けとなった『独眼流政宗』(1987年)では葛西聖司アナ、『利家とまつ』(2002年)では阿部渉アナなどが担当している。今回の『真田丸』における有働アナの起用も、ある意味で“原点回帰”と言えるのかもしれない。
「実は2014年の『軍師官兵衛』のナレーションは、当初は女優の藤村志保さんが担当してたんですが、ネットを中心に『聞き取りにくい』『妖怪みたいだ』などという批判が出たんです。その後、ケガを理由に藤田さんが降板し、局アナ(当時)の広瀬修子アナに変更されたということがありました。経費の削減という一面もあるでしょうが、朝ドラの成功例もあるし、実力も安定していて安心もできる局アナを使うのは、NHKさんとしても無理はないでしょう」(ドラマ制作会社スタッフ)
視聴者層が広い分、ナレーターの個性より“わかりやすさ”が重視される大河ドラマ
「最近の大河ドラマは、信長・秀吉・家康といった超メジャーな武将ならまだしも、“名前は聞いたことがあるが詳しくは知らない”人物が主人公になることが多いので、ナレーションによる時代背景などの解説は不可欠です。それに視聴者には高齢者も多い。ナレーターの個性より“わかりやすさ”を重視するのは当たり前なんです」(前出のスタッフ)
そうした意味でも、今回の『真田丸』の語りに同局の実力者・有働アナが起用されたこと、そして視聴者の賞賛を浴びることは当然だと言えるだろう。最近では、人気ドラマ『三匹のおっさん』(テレビ東京系)のナレーターを声優の野田圭一が務めるなど、民放でも“ナレーション復活”の兆しがないとも言えない。ナレーションを取り入れるということは、一時的な流行現象や旬の人物を起用するなどの安易なドラマではなく、脚本がよく練られた本格的な“物語”だということなのである。今後はNHKの朝ドラや大河ドラマに限らず、民放ドラマにおいてもナレーション活用の醍醐味が再認識され、よりいっそう深み・厚みのある本格ドラマの制作に役立ててもらいたい。