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(更新: ORICON NEWS

視聴者が主役の『笑ってコラえて!』が人気なワケ

 日本テレビ系で放送中の『1億人の大質問!?笑ってコラえて!』(以下『笑コラ』)が来年、放送20周年を迎える。新陳代謝著しいテレビ業界にあって文句なしの長寿番組と言えるだろう。番組スタート当初から続く「日本列島 ダーツの旅」のような息の長い人気コーナーと、タレントの意外な一面を見ることのできる「朝までハシゴの旅」をはじめとする新機軸の企画とが絶妙なコントラストを描き、『24時間テレビ』に代表される日本テレビの特番でも「ダーツの旅」が放送されるなど、まさに局の“顔”的存在だ。とはいえ、その内容は決して奇抜なものやインパクトに満ちたものというわけでもない。なぜ、『笑コラ』はこれほどまでに人々から愛されているのだろうか?

日テレに脈々と受け継がれる“視聴者イジリ”の妙

  • メインMCの所ジョージ(C)ORICON NewS inc.

    メインMCの所ジョージ(C)ORICON NewS inc.

 タイトルが物語るように、『笑コラ』は日本人“1億人”が主役の番組だ。「ダーツの旅」を例に挙げると、訪れた村(町)で出会った人々にその土地の「ここがスバラシイ」と思うところを尋ねていくという流れだが、そこではレポーター(この番組では制作スタッフ)の意見や反応は重視されない。あくまでそこで出会った人々の声やリアクションがVTRの中心になっている。もっと言うなら、質問の柱であるべき「その土地の魅力」ですらここでは“脇役”でしかない。地の物がふるまわれるシーンを映し出しても、そこでメインを張っているのはその名物にまつわるエピソードではなく、それを嬉々とした表情、キラキラした瞳で語る村(町)の人。「ここがスバラシイ」ところを尋ねながらも、それに答える人々の醸し出す魅力が最も「スバラシイ」ところとなっているのが、このコーナーの胆だ。

 『笑コラ』には様々な“一般ピーポー”がありのままのスタンスで登場してくる。“一般人”などとかしこまるのではなく、その屈託のない語り口、飾り気のないリアクションには“一般ピーポー”という愛すべき表現こそがふさわしいと思えるほどだ。聞き手がスタッフであることもそんな“素顔”を引き出すうえで有効に働いている。番組を縁の下で支えるスタッフがそのポジションのまま人々と接することで、“一般ピーポー”はテレビ局のクルーということを意識することなく、カメラ越しに自然な表情を見せてくれるのだ。

 日本テレビ系列のバラエティ番組は、昔からロケもの、特に“素人イジリ”にめっぽう強い。『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』(1985年〜1996年)は、名もない市井の人々にスポットを当て、メロリンQこと山本太郎やオネエの日出郎など、タレント以上の強烈なキャラクターを世に送り出してきた。また、『笑コラ』に続く長寿番組『カミングアウトバラエティ!! 秘密のケンミンSHOW』は、各都道府県・自治体が抱える「問題」に関しての実態や原因を面白おかしく探っていく手法も同局ならでは。近年人気を博している、マツコ・デラックスと関ジャニ∞(エイト)・村上信五による深夜番組『月曜から夜ふかし』は、過剰なまでの“素人イジリ”で、その集大成とも言える面白さを提供してくれている。

タレントまでもが“一般ピーポー”となり意外な展開を生む「朝までハシゴの旅」

 レポーターがスタッフからタレントに代わって収録される「朝までハシゴの旅」でも、主役が“一般ピーポー”であることに変わりはない。タレントを使いながらもその“オーラ”を極力抑え、対象者が光り輝くことでタレントにもスポットを当てるという手法は、素人相手だからこそ起きるハプニングも相まって、意外な展開を生み出したりもする。それもこれも市井の人々が主役というブレのないスタンスがあるからこそ可能な“予期せぬ”演出と言っていいだろう。さらには、「酒」という心の垣根を取り払ってしまう要素も加わることで、タレントと一般人という境目が希薄になり、ついにはタレントまでもが“一般ピーポー”化し、それまでのイメージを一転させることで知名度・人気をアップさせた佐藤栞里やラブリのような例も生まれた。だからといって、人気アップを目的にこのコーナーに出てくるタレントが増えてくると本末転倒ではあるのだが……。

 “一般ピーポー”が主役であること、そして彼らの素の姿を映し出すことがVTRパートにおける人気の秘密であるとするならば、スタジオパートにおいて視聴者に支持されている大きな要素は、メインMCである所ジョージの存在だろう。多才な趣味人として知られる所は、テレビ番組においてもその趣味ぶりを全開にした、いい意味での“肩の力の抜けた”立ち居振る舞いによって、その地位を確立させてきた。いわゆるお笑いBIG3に対し、「タモさん」「さんちゃん」「おじさん(ビートたけしへの呼びかけ)」とまるで飲み友達のような気軽さで接しながらも、自らは彼らと対等なポジションに立とうとはしない姿勢は、人々からも身近な存在と認識され、だからこそ、VTRに出てくる村(町)の人が「所さ〜ん」とカメラに向かって呼びかけ、いとも自然に“一般ピーポー”ぶりをさらけ出すのではないだろうか。立ち位置的には間違いなくメインMCなのに、番組内での言動や動きは一緒にVTRを楽しんでいる番組観覧者のようでもあるし、延いてはテレビ視聴者と同じ目線で番組を観ているようにも映る。つまりは、視聴者が“一般ピーポー”のVTRに笑ったり、ほっこりしたりしたところを、所のMCらしくないMCぶりが、流れを“ぶった切る”ことなく番組が進行していくのだ。

 ストレス社会と言われる現代において、人々は常に何かにストレスを感じており、それがテレビ番組に起因することもけっして珍しくはない。だが、『笑コラ』が生み出す一連の流れはストレスとはほぼ無縁と言っていい。だからこそ、家族でいつでも安心して観ることのできる番組として、20年の長きにわたり支持され続けてきたのではないだろうか。

(文:田井裕規)

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