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ORICON NEWS
視聴者が主役の『笑ってコラえて!』が人気なワケ
日テレに脈々と受け継がれる“視聴者イジリ”の妙
メインMCの所ジョージ(C)ORICON NewS inc.
『笑コラ』には様々な“一般ピーポー”がありのままのスタンスで登場してくる。“一般人”などとかしこまるのではなく、その屈託のない語り口、飾り気のないリアクションには“一般ピーポー”という愛すべき表現こそがふさわしいと思えるほどだ。聞き手がスタッフであることもそんな“素顔”を引き出すうえで有効に働いている。番組を縁の下で支えるスタッフがそのポジションのまま人々と接することで、“一般ピーポー”はテレビ局のクルーということを意識することなく、カメラ越しに自然な表情を見せてくれるのだ。
日本テレビ系列のバラエティ番組は、昔からロケもの、特に“素人イジリ”にめっぽう強い。『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』(1985年〜1996年)は、名もない市井の人々にスポットを当て、メロリンQこと山本太郎やオネエの日出郎など、タレント以上の強烈なキャラクターを世に送り出してきた。また、『笑コラ』に続く長寿番組『カミングアウトバラエティ!! 秘密のケンミンSHOW』は、各都道府県・自治体が抱える「問題」に関しての実態や原因を面白おかしく探っていく手法も同局ならでは。近年人気を博している、マツコ・デラックスと関ジャニ∞(エイト)・村上信五による深夜番組『月曜から夜ふかし』は、過剰なまでの“素人イジリ”で、その集大成とも言える面白さを提供してくれている。
タレントまでもが“一般ピーポー”となり意外な展開を生む「朝までハシゴの旅」
“一般ピーポー”が主役であること、そして彼らの素の姿を映し出すことがVTRパートにおける人気の秘密であるとするならば、スタジオパートにおいて視聴者に支持されている大きな要素は、メインMCである所ジョージの存在だろう。多才な趣味人として知られる所は、テレビ番組においてもその趣味ぶりを全開にした、いい意味での“肩の力の抜けた”立ち居振る舞いによって、その地位を確立させてきた。いわゆるお笑いBIG3に対し、「タモさん」「さんちゃん」「おじさん(ビートたけしへの呼びかけ)」とまるで飲み友達のような気軽さで接しながらも、自らは彼らと対等なポジションに立とうとはしない姿勢は、人々からも身近な存在と認識され、だからこそ、VTRに出てくる村(町)の人が「所さ〜ん」とカメラに向かって呼びかけ、いとも自然に“一般ピーポー”ぶりをさらけ出すのではないだろうか。立ち位置的には間違いなくメインMCなのに、番組内での言動や動きは一緒にVTRを楽しんでいる番組観覧者のようでもあるし、延いてはテレビ視聴者と同じ目線で番組を観ているようにも映る。つまりは、視聴者が“一般ピーポー”のVTRに笑ったり、ほっこりしたりしたところを、所のMCらしくないMCぶりが、流れを“ぶった切る”ことなく番組が進行していくのだ。
ストレス社会と言われる現代において、人々は常に何かにストレスを感じており、それがテレビ番組に起因することもけっして珍しくはない。だが、『笑コラ』が生み出す一連の流れはストレスとはほぼ無縁と言っていい。だからこそ、家族でいつでも安心して観ることのできる番組として、20年の長きにわたり支持され続けてきたのではないだろうか。
(文:田井裕規)