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三浦春馬インタビュー『迷いはなかったけど悩んだことはあった』

コアファンに熱狂的に支持される『進撃の巨人』。その実写版の前篇『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』が、原作コミックやアニメファンの高い関心を集めながら、制作過程での紆余曲折も経て――いよいよ世に放たれる。そんな同作で、主人公・エレンを演じた三浦春馬がメディアの前に立った。

『進撃の巨人』のなかで生きられる喜びとプレッシャー

──人間が巨人に襲われ食べられるという、想像を絶する地獄絵図が描かれる『進撃の巨人』。映画での主演が決まったときの感想から聞かせてください。
三浦エレン役のお話をいただく前に『進撃の巨人』の実写化が動き出していると噂で聞いていたので、てっきり映画はもう撮り終わっているものだと思っていたんです。なので、まさか自分のところにお話をいただけるとは! と驚きました。実際に台本をいただいてやっと「あ、本当にまだ撮っていなかったんだ」って(笑)。僕自身、原作漫画の大ファンですし、なにより映画のなかで立体機動装置を使って空を飛び回れるのが楽しみでした。でも、『進撃の巨人』の世界のなかで生きられるんだという喜びと同時にプレッシャーもありました。

──主演としてみんなを引っぱっていくというプレッシャーですか?
三浦それもあります。今回はキャストの方々もスタッフさんも人数が多くて、特撮チームを加えると通常の3〜4倍だった気がします。エキストラさんは総勢1500人ぐらいで、一度に500人が集まったこともありました。

──やはり大作ですね。映画を作るにあたっては、原作のスピリットを失わないようストーリーが作られていったそうですね。三浦さんにとっての原作の魅力とは?
三浦絶滅の危機に立たされた人類と巨人との戦いの構図はすごくキャッチーで分かりやすいストーリーですし、そのバックボーンには緻密な設定もある。そして何よりも自分たちと姿、形が似ている者(=巨人)に支配されている、その異質さが新しくて。巨人たちにただただ踏みにじられて食べられていく、敵対する関係性も独特だなと思いました。あと、キャラクターのセリフに「えっ、そこでそのギャグを言うの!?」というようなユーモアがあって、そこもこの作品の大きな魅力のひとつです。

──特別に気に入っているキャラクターはいるんですか?
三浦そうですね……原作を読んだときに好きだったのは“ミカサ”(映画では水原希子が演じている)です。人間離れしているキャラクターだと思われがちですが、いちばん人間らしい心情──大声で泣いたり、人を守りたいという気持ちを持っている。冷静だけど、心の奥底にものすごくいろいろな感情をもっているキャラクターだと思います。

撮影中は役に影響されて攻撃的だった

──たしかに。三浦さんの演じたエレンについても聞かせてください。繊細で優しいイメージの強い三浦さんだけに、今回のエレンのケンカっ早い性格は新鮮でした。
三浦ケンカっ早いですよね。演じることに迷いはなかったんですが、悩んだことはありました。樋口監督から言われたのは「カッコ良すぎるからもう少し可愛らしくやってほしい」って。本当に悩みました……(苦笑)。その着地としては、青臭い部分を出すことで応えられたのかなと思っています。演じているときは(役に影響されて)ちょっと攻撃的だったかもしれないです(笑)。

──新しい一面を出せたということですね。アクションについても『クローズZERO II』などで経験はあるものの今回はワイヤーアクション。どんな苦労がありましたか?
三浦ワイヤーアクションを多用するということだったので、どんなオーダーや変則的な動きにも対応できるよう、外側の筋肉だけでなく内側の体幹を鍛えるトレーニングをして現場に臨みました。もちろん、ワイヤーアクションは初です。鍛えることによって、少しずつですけど不安要素を取り除けた気がします。

──最初に飛んだときのこと、覚えていますか?
三浦クランクイン前にワイヤーアクションの練習をさせてもらったんですが、すごく気持ちよかったです。空をぐるぐる飛んでいる時間は楽しかった。通常のアクションは自分対相手ですが、ワイヤーアクションは吊られているのでアクションコーディネイターのみなさんに引っぱってもらわないとはじまらない、ひとりでは何もできないんです。しかも立体機動装置を操作する芝居が組み合わさるので、手に持っている装置のトリガー操作でワイヤーが出て、アンカーが壁に刺さって、ワイヤーを巻き取って身体が動く──その一連の芝居はスタッフのみなさんと呼吸を合わせないとうまくいかなくて、何度も練習を繰り返しました。

──本当に、いったいどうやって撮影しているんだろうと惹きつけられる映像でした。しかも特撮シーンはグリーンバックでの撮影。想像力も必要だったのではないですか?
三浦グリーンバックで見えない相手と戦っていたので、大変でした。例えば、巨人に食べられかけたアルミン(本郷奏多)を救出するシーンでは、巨大な入れ歯のようなセットのなかで、よだれ(ローション)まみれになって芝居をしているんですが、それが映像になるときちんと巨人の口のなかになっている。感動しました。

根本的な部分は原作と変わらない

──完成形の映像を想像するにあたっては何を参考にしたんですか?
三浦主に詳細が書かれたプロットを参考にしたり、特撮チームがすでに撮っている映像がある場合はそれを見せてもらったり。あとは監督が「そいつはすごく毛深いです!」「ものすごい体臭がします!」という感じで、監督の頭のなかで出来上がっている巨人像を説明していただきました。
──また、内面的にはエレンをどんなふうに作り上げていったのでしょう?
三浦本質的な部分は原作と変わらないと思いますが、自分のいる現状に漠然とした不満を抱えている青年です。映画では何に突き進んでいっていいのか分からない部分がより強調されていて、性格としては何かを達成しようとする強い気持ちがあって、まっすぐだからこそ青臭く見えてしまうキャラクター。原作も映画も内側のパワーを持っているのは共通しています。

──後半ではそのエレンの心の動きや葛藤はどんなふうに変化していくのでしょう?
三浦前篇よりも後篇の方がエレンのエネルギーや感情の方向性がまとまっていきます。何のために自分のエネルギーを燃やすのかという問いに対する答えが、漠然としていた前篇に比べて後篇は目的がしっかり出てくる、その心理描写はとてもわかりやすく、そして力強い。エレンを演じながら伝えたいと思ったのは、自分のためだけではなく人のために動くと、そのエネルギーは何倍にも増すということです。僕らは映画のなかのような世界で生きてはいないけれど、“誰かのためのエネルギー”はこの世界でも持つことができるものだと思う。そういう世の中であってほしいし、自分もそうありたい。そんなメッセージを大迫力の映像とともに感じ取っていただけたら嬉しいです。
(文:新谷里映/撮り下ろし写真:逢坂 聡)

進撃の巨人

 その日、人類は思い出した。百年以上前、突如現れた巨人たちに、人類の大半は喰われ、文明は崩壊した。この巨人大戦を生き残った者たちは巨人の侵攻を防ぐため、巨大な壁を三重に築き、内側で生活圏を確保して平和を保っていた。だが、ある日、想定外の超大型巨人によって壁は破壊され、穿たれた穴から無数の巨人が壁の中へと侵入してきた……。

監督:樋口真嗣
出演:三浦春馬 長谷川博己 水原希子 本郷奏多 三浦貴大 桜庭ななみ 松尾諭 渡部秀 水崎綾女 武田梨奈 石原さとみ ピエール瀧 國村隼
2015年8月1日・後篇9月19日公開
(C)2015 映画「進撃の巨人」製作委員会(C)諫山創/講談社
【公式サイト】(外部サイト)

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