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作詞活動45周年・松本隆独占インタビュー 稀代の“言葉の魔術師”が語るヒット曲の昔と今

 日本の音楽史に多大な影響を与え続ける作詞家・松本隆が、作詞活動45周年を迎えた。6月24日には新曲「驟雨の街」(細野晴臣)も収録されたトリビュートアルバム『風街であひませう』を発売、8月21日、22日には東京国際フォーラムAで松本隆、細野晴臣、鈴木茂をはじめ豪華出演者が登場する過去最大規模のイベント「風街レジェンド2015」を開催。かつてない規模での周年企画が進むなか、ORICON STYLEでは松本隆本人に独占インタビュー取材を実施。今回の企画から作詞家としての感性、ヒット曲への思いまで、様々な話を聞いた。
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最後にひとりだけ生き残るのは僕かもしれない(笑)

――作詞活動30周年以降、区切りのタイミングでアニバーサリー企画をやられてきましたが、『風街であひませう』のリリースとライブイベント「風街レジェンド2015」の開催が重なった今年の45周年は今まででいちばん大きなプロジェクトなっているように感じます。
松本隆 30周年から5年おきにトリビュートライブをやってきたんだけど、やるたびに会場が大きくなってきた。自然発生的にそうなっているにすぎないんだけどね。それで40周年が終わったときに、ちょっとやりすぎたような気がしたので、次の45周年はパスしようかと話をしていたときに、大滝(詠一)さんが亡くなって、それがけっこうショックだった。その後にかしぶち哲郎さんも亡くなり、ちょっと心配になって「やっぱりやろうか」ということになった。それが今から1年前のこと。今回のライブとCDは並行しながら別々に動いていたことで、どちらも雪だるま式に大きくなっていったような感じ。「国際フォーラムAを2デイズなんて入らないからやめたほうがいい」と言ったんだけど、いざフタを開けてみたら、プレミアチケットになってしまったという……(笑)。

――最近のインタビューでの「50周年のときはもう……」という弱気な発言が気になりました。
松本 一緒にやっていた仲間がいなくなっちゃうというのはけっこうショックでね。でも僕は、星占いや東洋占いなど、いろんな占いで見てもらっても90歳まで生きると言われているの。最後にひとりだけ生き残るのは僕かもしれない(笑)。

――45周年はシングルレコードの回転数にかけているというというのは本当でしょうか。
松本 45周年の話がここまで大きくなってしまったので大義名分が必要になっちゃったから。でも今、松本隆で盛り上がってくれている人はドーナツ盤のことを知らない人が多くて、「ドーナツ盤って食べられるんですか?」みたいな(笑)。それじゃ、(筒美)京平さんのアイデンティティがなくなってしまうよね。シングルのA面をチャートのトップテンに入れるのが、京平さんのこだわりのひとつだから。

――我々が最初に松本隆さんの名前を知ったのはランキングを賑わしたシングルレコードのクレジットでしたが、徐々にアルバムにも多くの名曲があることを知っていきました。
松本 僕はよくシングル盤の売り上げ枚数とチャートの順位で比べられることが多いけど、僕にとってシングル盤というのは付録みたいなもので、自分の愛すべきアーティストにはアルバムが売れてほしいという気持ちがあるんです。実はそっちのほうが効率いい。同じミリオンヒットでもアルバムはシングルの10倍になるでしょ(笑)。松田聖子に関していうと、80年代は半年に1枚のペースでオリジナルアルバムを出して毎回最高で80万枚、最低でも40万枚、平均して50万枚以上のセールスがあったんだから、単純にシングル盤の売り上げだけで比較してほしくないな、という自負はある。

シングル盤だけが重要ではない シングルもアルバムも同じだけ力を入れる

――松田聖子さんもそうですけど、アルバム1枚全部松本さんの作詞という作品が多いですよね。
松本 自画自賛になりますが(笑)、名作が多い。売れなくても名作は存在するわけです。例えば、はっぴいえんどの「風をあつめて」はアルバム『風街ろまん』の中の1曲だけど、今ではみんなが知っている超スタンダードになっている。だから僕にとってシングル盤は重要ではない。オリコンランキングにとってシングル盤は重要だけど、僕にとっては発火点の目安になる程度なんです。

――シングルのみならず、アルバムの1曲1曲に注力していたということですよね。今の人の音楽の聴き方もシングル、アルバム関係なく、曲単位で楽しむというように変わってきているように感じます。
松本 それは大衆が選んでいることだから。当時はシングル盤に力を入れてアルバムは手を抜くという人がいたけど、僕はそれをしたくなかっただけ。シングルB面曲でも同じことで、松田聖子のB面は定評が高いでしょ? 

――松田聖子さんの「制服」はA面の「赤いスイートピー」と同じくらい人気がありますし、アルバム曲だった「瑠璃色の地球」も今ではスタンダードになっています。
松本 A面より良い曲とされるB面があるくらいだからね。

「朗読CD」は名案だったと思う

――では6月24日に発売になった『風街であひませう』に関してお話を聞かせてください。このアルバムはどういうところから生まれた企画なのでしょうか。
松本  30周年のとき、『風街図鑑』というCDボックスを出したんです。あれは亡くなった川勝正幸氏の労作だったんだけど、あの出来が素晴らしくて、あれを超えるものはなかなか作りにくいから、今回はやめておこうということになった。今はオリジナルの楽曲を集めたコンピレーションアルバムを作るのが難しいというのもあるけど、そういう理由から「45周年の記念アルバムはトリビュートアルバムになります」と言われて、今回は制作をしてくれたビクターの木谷君にほぼお任せで、僕は口を出さなかった。彼は思いこんだら突き進むタイプの人なんだけど、そのセンスが抜群に良いんだよね。でもひとつだけ、朗読のCD(初回盤のDISC 2)で煮詰まっていたので、「是枝(裕和)監督に頼んでみたら?」とアドバイスした。そうしたら、色々なことがすぐに決まった。あとはCDのタイトルを『風街であひませう』にしたいと、言ったことくらいかな。

――朗読CDを付けるというアイデアはどういうところから来ているのでしょうか。
松本 これもすべて木谷君のアイデア。手柄だと思う。名案だけど実行するのに手間取っていたので、ワンクッション入れて是枝監督に頼むのはありだなと思った。

――是枝監督に依頼した理由は?
松本 僕の名前はミュージシャンや歌詞を書いた女優さんには強力に伝わるけど、それ以外の若い俳優さんには「誰それ?」と言われてもおかしくない。僕は基本的に裏方だと思うので。そういうときには餅は餅屋で、精通している人に頼んだほうがいいかなと。そこは、発想の転換だよね。

――朗読の案件を映画監督に依頼するというのも斬新ですよね。
松本 普通は断るよね(笑)。彼とはたまたま友達だったから引き受けてもらえた。

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