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藤巻亮太『レミオロメンとの違いを意識しなくなった』

 昨年12月にSPEEDSTAR RECORDS移籍第1弾シングル「ing」を発売してから約5ヶ月、藤巻亮太がミニアルバム『旅立ちの日』を5月13日に発売した。タイトル曲の「旅立ちの日」は、友との別れや新たな旅立ちを歌った楽曲で、名曲「3月9日」を彷彿とさせる、キラキラと未来への希望に満ちた楽曲となっている。この曲の誕生の経緯やソロとしての新たな決意、今の心境について、様々な話を聞いた。

ソロを始めた時のエネルギーはレミオロメンからの借り物だった

――昨年12月に発売された約2年ぶりの新作「ing」は大きな反響を呼びましたね。
藤巻久しぶりのリリースだったんですけど、時間が空けば空くほど、「なぜいま、それを歌うのか?」というところが大事になるのかなと思って、そこを意識した曲だったんですよ。それは「現状を受け入れるところから始まる」ということなんですけどね。

――軸になっているのは、やはり歌詞?
藤巻この2〜3年の間もいろんな曲を作っていて、自分なりに「これはいい曲だな」と思っているものもあるんですけど、シングルとか(アルバム、ミニアルバムなどの)タイトル曲にはストーリーが求められるんじゃないかなって。自分はどういう立ち位置にいて、何を歌うのか――そういう曲を作ることによって、自分のなかでいろんなものを整理することにもつながりますからね。そうなると、やっぱり言葉(歌詞)に集約されるのかなと思います。

――それが今回のミニアルバムの表題曲「旅立ちの日」なんですね。この曲は歌詞が先なんですか?
藤巻「旅立ちの日」はまず、メロディと歌詞のエッセンスが出てきたんですよ。その後の推敲する作業にすごく時間がかかったんですよね。曲のエッセンスは確実にあるんだけど、そこに向けてストーリーをつなげていくにはどうしたらいんだろう? とずっと考えていて。やっぱり、このミニアルバムを総括している曲ですからね。

――自分と向き合うことにもなりそうですね。
藤巻そうですね。「ing」の取材のときにも話したと思いますけど、自分のソロ活動は「バンドでやるには生々しすぎるな」というパーソナルな曲が出来たことがきっかけなんです。そういう曲もカッコいいと思ったし、それを「やってみたい」という衝動から始まってる。それは同時に、バンドを10年やってきたことの反動だったと思うんです。そのときの衝動を生んだエネルギーは、レミオロメンからの借り物だったんじゃないかなと。

バンドとの違いを意識しなくなった

――なるほど
藤巻その衝動が成就した後、改めて「ソロとは何だろう?」というところから歩き出したわけですけど、そのとき、自分が空っぽになっていることに気づいたんですね。いまの自分には何かを作り出すエネルギーがないなって。そこで無理に作っていくことが本当にクリエイティブかどうかも悩んだし、実際、その頃の曲には迷いを感じていたんです。それから2年くらい経って、ようやく心と身体のバランスが取れてきた気がしたし、“藤巻亮太のソロがちゃんと始まっていく”という感じも生まれてきたんです。ソロ活動を始めて3年目で「旅立ちの日」って、自分でもどうなんだろうな? って思うけど(笑)。

――でも、それがいまの藤巻さんのリアルなんですよね?
藤巻そうですね。いままで生きてきたことを否定することもないし、それを丸ごと受け入れて、“いまがベスト”だと信じて進んでいく。そういうふうに音楽をやっていくというのが、「旅立ちの日」を書くモチベーションになりました。それが歌詞のなかにある<魂のふるさと>という言葉につながってるんです。新しいものに出会うだけではなくて、「これまでどうやって生きてきたか?」というルーツに再会したり、それを認めて、より強くなっていったり。いまは“レミオロメンとの違いを出す”ということにもフォーカスを当てなくなってるんですよね。

――確かに「旅立ちの日」は藤巻さんらしいメロディが強く出てますよね。それは同時にレミオロメンらしさでもあると思いますが…。
藤巻こういうキラッとした感じは、ソロではやってなかったですからね。でも、自分はそういう曲も好きだし、それを思い切り出したのが「旅立ちの日」だと思います。そこはノーボーダーでいいんじゃないかなって。バンドというのはメンバーそれぞれの脳みそとハートを使ってやるものだから、ソロとの違いは自ずと立ち上がってくると思うんです。それを分けて考えて、わざわざ狭いところで音楽をやる必要もないんじゃないかなって。

心にちゃんとスペースを空けておくことが大事

――なるほど。ちなみにそういうことって、誰かに相談することもあるんですか? たとえばフットサルの友達とか。
藤巻しないですね(笑)。自分のフットサルチームのメンバーって、ミュージシャンはひとりもいないんですよ。以前から知り合いだったメイクさんとかもいるんですけど、あとは全員、ここ1、2年で知り合った人たちばかりで。同世代が多いから、すごく刺激を受けるんですよね。20代のときは音楽業界以外の人とはほとんど接点がなかったんだけど、30代になっていろんな分野の人と話してみると、本当に興味深い話が聞けるんですよ。それぞれの人生観もそうだし、「そういう考え方があるんだ」みたいな発見があって、知らなかったことに出会える喜びって確実にあるんです。あとね、心にちゃんとスペースを空けていくことが大事だなって、30代になってからよく思うんです。20代のときはいろんなものが欲しくて、詰め込めるだけ詰め込んできたけど、手放すことも勇気だと思うんです。そこにスペースが生まれれば、新しい風も吹き込んでくるだろうし。

――今回のアルバムのジャケットは、藤巻さんが撮影した写真がデザインされています。ブックレットにも海外で撮った作品が使われていますが、藤巻さんにとって写真の面白さとは?
藤巻撮影しているのは“一瞬”だけど、じつは移り変わっていくものだと思うんですね。それがどこかに向かう瞬間を撮りたいと思ってるんでしょうね、きっと。それって音楽にも似てるんですよ。言葉、メロディをキャッチするのって、何かの動きに反応している部分があるので。

――5月には名古屋、東京、大阪でワンマンライブを開催。新曲の制作も続いているそうですね。
藤巻こうやってプロモーションをやりながら、自分のなかで少しずつ変わってきたところもあって。それを形にしてみたいと思って、できるだけスタジオに行くようにしてます。出来ても出来なくても、とにかくスタジオに行くっていうのがいいんですよね。

(文/森朋之 写真/草刈雅之)

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