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デビュー10周年のJUJU、「続けてこられたのは奇跡的、今も首の皮一枚」

デビューして数年は、ライブで歌うことが怖かった

  • シングル「Hold me, Hold you / 始まりはいつも突然に」【通常盤】

    シングル「Hold me, Hold you / 始まりはいつも突然に」【通常盤】

――JUJUさん自身は、褒められるのが苦手とか?
JUJU 裏をかくタイプなので、褒め甲斐はないかも。若干、大人過ぎるんですかねぇ。その手には乗りませんよって疑り深いんだと思います。子供の頃から、褒められ慣れていないので。

――では、モチベーションはどうやって保ってるんですか?
JUJU やっぱり負けず嫌いですかね。

――『ジュジュ苑』も挑戦のひとつだったんですか?
JUJU そうです。『ジュジュ苑』を始めたのは昔、私とプロデューサーがよくカラオケに行っていて。彼は私のライブを初めて観たときよりも、初めてカラオケに行ったときのほうが「コイツと契約して良かったな」って思ったらしいんですね。で、その気持ちをみんなに伝えたいと思ったらしく、「奇跡を望むなら...」で首の皮一枚で繋がり、ちょっとずつ事態が良くなってるときに「お前のことをちゃんと知ってもらえるために、カバーアルバムを出そう!」って言い出したんですよ。でも、そのとき世の中が空前の第一期カバーアルバムブームで。私はカラオケがすごく好きで、そこから歌のモチベーションが始まっていているし、カバーっていうのも学生時代から、好きなHIP HOPのインストトラックの上で宅録するくらいずっとやってきていて。自分のなかでライフワークとしてやっていきたいと思っていたので逆に、ブームの中の1枚としてカバーアルバムを出したくないって気持ちが強かったんです。そしたらスタッフが「じゃあ12ヶ月連続でカバーライブをやろう!」って言い出し、「いいね!」って乗っかったんだけど、やってみたら大変なことになってしまったという。

――JUJUさんもスタッフさんも、当時はかなりキツかったと聞いていますが。
JUJU バンドが一番可哀想でしたよ。二度とやらないかもしれないものを、毎月12曲、リハーサル1回だけで本番をやっていたので、よくやってくれたと思います。

――でも『ジュジュ苑』も、すっかりJUJUさんの代名詞のひとつになり、バラードからジャズ、そしてカバーとそれぞれが、アーティスト・JUJUに欠かせない要素になっていますが。10年の中で、歌い手としてもっとも成長した部分はどんなところだと思いますか?
JUJU ライブが楽しいと思えるようになったことですね。デビューして数年はお客さんを敵だと思ってましたから(笑)。最初のツアーなんか、ただ、ただ恐怖しかなくてまさに戦場でした。それって多分、当時、コンベンションライブをよくやらされていたせいで、このときの“試されてる感”を、自分のライブでも感じてしまったんでしょうね。

――コンベンションは、マスコミ向けのいわゆるお披露目会ですからね。
JUJU だからどんなもんじゃい? って目で見られてる気がしていたというか。でも、よく考えてみたら、ライブはみなさん、お金を払ってわざわざ観に来てくれているわけで敵なわけがないなと。それを本当に教えてくれたのは2007年頃に札幌でやったラジオ局のイベントライブで。来ていたお客さんはほとんど、私の他に出ていた男性のアーティストの方のファンだったんだけど、すっごく盛り上がってくれて。ライブって怖くないんだって、そのとき初めて思えたんですよ。で、そのあとに『ジュジュ苑』がスタートして、さらにお客さんと一緒にいると楽しいなってわかり、だんだん怖くなくなったんです。未だにすごく緊張するし、怖いは怖いけど、ライブは楽しいものとして捉えられているのは、この10年間での唯一といえる成長でしょうね。

――そういうところもJUJUさんはちょっと特殊ですね。アーティストは新人さんでもまず「ライブでファンの人の前で歌いたい」って言う方が多いんですけど。
JUJU そうなんですか? 私はもう幕の後ろで歌いたいぐらいでしたけど(笑)。

――でも昨年のさいたまスーパーアリーナの『ジュジュ苑』のスペシャルライブなんか、何万人というお客さんがJUJUさんの歌声と貫禄に完全にのみこまれてましたよ。
JUJU あの空間は巨大なスナックでしたから(笑)。でも『ジュジュ苑』は規模が大きくなっても、私のなかですごく楽しいものとしてまた特別なんですよ。実際にお客さんにステージへ上がってもらって歌ったりもするので、お客さんと一緒に作るものっていう感覚。だから『ジュジュ苑』の緊張は、普段のツアーの緊張とはちょっと違ったりするんですよね。

――歌手以外の人間・JUJUとして10年で変化した部分はあります?
JUJU 人としては、1ミリも成長してないです(笑)。相変わらず大きな子供、“オドモ”です。もうちょっと成長したいんですけど。

――でも成長するためにがんばる!というよりは……。
JUJU がんばると息切れするじゃん、みたいなタイプですね(笑)。

――その絶妙なユルさがライブのMCでも感じるような、安心感とか包容力に繋がっている気がします。
JUJU 1回、やってみたいんですけどね、(叫びながら)「盛り上がってるかぁ!アリーナぁぁ◎×△□×?!!」ってロックバンドみたいなMC(笑)。

――ははははは(笑)。
JUJU でも一度だけ恵比寿のリキッドルームで、オールスタンディングの女の子だけのライブをやったとき、ちょっとそんな感じのライブをやったんですよ、それはそれで超楽しかった。あの規模なら「行くぜー、恵比寿!」って言えるんだなって。地域がちっさいですけど(笑)、あれはクセになりますね。黄色い声が自分に向けられ、キャーッて言われるのはなかなか快感。だからライブハウスツアーをやりたいんですよ。別名“絶叫ツアー”みたいな(笑)。

――それも観たいです(笑)。そんなJUJUさんの10周年イヤーのファイナルとして、ダブルA面のニューシングルがリリースされましたが。2曲とも今までにない楽曲に仕上がっていて。まず「Hold me,Hold you」は歌声からちょっと違いますね。すごく可愛い声になっているというか。
JUJU 若作りしてます(笑)。シングルでは出したことがない声で、仮歌をやっているときからこっちのテンションかな?あっちのテンションかな?って、自分のなかで試行錯誤があって。最終的に本レコーディングのときに楽しい感じを出したいなと。“吹っ切れました!私!”みたいな、吹っ切った感を全面に出そうと思い、こんな声で歌ってみました。

――ちょっと別人のようにも聴こえますよね。
JUJU そういう曲を与えられると、それに合った声が出てしまうっていう。私、“イタコ体質”なんですよ(笑)。実はこれは昔、小学校の国語の本読みでおばあちゃんの声が知らずに出したときから始まったんですよ。「ダメじゃ」ってセリフがあったんだけど、(しゃがれ声で)「ダメじゃぁ」って読んじゃったんです。言った私が一番、びっくりしたんですけど、クラス中が一瞬、シーンとなり、すぐに“何が起きた?”ってザワザワザワ……っと(笑)。

私が10年続いてきた理由は、聴いてくださる方の懐の深さのおかげ

――いきなりな憑依現象でクラスメートもビックリ。
JUJU 私もやろうと思ってやったんじゃないんだけど(笑)。

――でもイタコ体質って裏を返すと、伝えたいっていう想いからきているのかなと。そのためには我を消してフラットでいる。それはサービス精神の表れなんじゃないかなと。
JUJU 初めて言われました。でもそうでありたいなと思うし、私は作家さんに書いていただいた曲を歌うことが多いので、その物語を私が代わりに読む感覚というか。私が歌う曲は私も含め、大人だったら誰でも経験してる感情ってものを歌っているから、ぜひとも聴いた人が自分が歌った気持ちになって欲しいって気持ちがあるんですね。だから私自身は自分の気持ちじゃないところで歌うようにしているし、そう考えるとサービス精神旺盛なのかもしれない。

――代わって2曲目の「始まりはいつも突然に」。これはメロディラインがすごく複雑で難しい曲ですね。
JUJU おっしゃるとおり、これはすっごく難しい曲で、レコーディングのときにこれでもメロディを変えたんです。もっと複雑な譜割りで、それでもがんばって歌ったんですけど、終ってから「やっぱり譜割りが難しすぎるな」ってなって。結局、もう少しブラッシュアップしたバージョンに変えて歌ったのが、これなんです。それでもかなりトリッキーな曲ですけどね。

――歌詞は予想外の場面で恋に落ちそうな自分にとまどう女心が、とても繊細に描かれていて。女子ならカラオケで絶対歌いたくなりそうですけど、なかなか歌いこなすのは大変そうですね。
JUJU 私も撃沈しますよ(笑)。でも、1回体に入ると簡単に歌える曲だと思います。あと変えちゃえばいいんです、カラオケで歌うときは。自分好みで歌いやすいように。しかもサビが二段階で盛り上がって行くので、歌うには気持ちいい曲だと思いますよ。

――ちなみにJUJUさんは歌詞のような経験は?
JUJU はるか昔にあったことがある気がします(笑)。夏のうだるような朝だったら考えないけど、冬の朝だから考えてしまうことってあるじゃないですか。「昨夜のあれは何だったんだろう?」って。で、外に出て仕事に向かいながらも、そのことがずっと頭から離れない。吐く息とか白いぐらい寒いからクリアに考えられるけど、考えてもわからない。でもドキドキしてるみたいな(笑)。そんな心境のときにぜひ聴いてください。

――そして、さらにトピックなのはMONGOL800の名曲「小さな恋のうた」をカバーした3曲目。これはMOGOL800のメンバーも「鳥肌が立った」と言ったそうですが。
JUJU これはものすごく大切なメッセージがこめられていると、改めて気づかされましたね。昔から知ってる曲だし、モンパチバージョンでカラオケで歌ったこともあるけど、ちゃんと歌詞を見ながらゆっくり歌うと2番とか歌えなかったですよ、泣きそうで。作詞したキヨサクくんのすごさを思い知らされましたね。元々はモンパチのトリビュートアルバムに収録させてもらった曲で、最初はあまりにも知名度の高い曲なので私でいいんですか? ってなったけど、キヨサクくんたちが「ぜひ!」って言ってくれて、実現したカバーなんです。

――そして最後はオリジナルとまったく雰囲気を変えた「ラストシーン」のバラードver.が収録されていますが。全曲通して今回はすごく攻めてるシングルで、JUJUさんの中では10周年ファイナルというよりは、次の11年目を見据えた作品なのかなと思いました。
JUJU はい。守らなきゃいけないものもあるけど、そこばっかり守っているとみなさんが飽きるんじゃないかなと。10年の中でJUJUチームがつねに考えたことは“このジャンルの歌手”って位置づけられたくないという、それが一番の想いだったんですね。だからR&Bの人って言われそうになるとちょっとロックっぽいものやったり、ロックっぽいって言われたら全然違う歌謡曲をやってっていうのを繰り返しきた10年で。これからも、JUJUにはバラードっぽいものを求める方もいると思うけれど、私はただの音楽好きなのでいろんなジャンルを歌うのが自分だし、誰かのイメージに留まることなく、果敢にあっちこっち行くっていうことを繰り返していきたいとすごく思います。あと2014年の最初のシングルが「Hot Stuff」だったし、今年もこんな明るい幕開けで始まれて良かったなと思いましたね。

――でも「Hot Stuff」から、昨年最後のシングル「ラストシーン」、そして今回のシングルと、それだけでもすごい振り幅の広さですね。
JUJU 本当に私が10年続いてきた理由って、聴いてくださる方の懐の深さのおかげなんですよ。何を歌っても「はいはい、JUJUさんは歌うのが好きですからね」って言ってくださっている気がして。ジャズアルバム作ってライブやりますって言ったら来てくださるし、「ジュジュ苑」でカラオケスナックやりますってなればまた一緒に楽しんでくださるので、みなさんの懐の深さに助けられている10年だったなって思います。

――聴き手からしたら、「JUJUなら何を歌おうと間違いない」という感覚なんだと思います。歌声への絶対的な信頼感がある。
JUJU いや、プロデューサーには「ピッチ、まだまだダメだな」って、つい2日前のライブで言われてシュンとなっていましたから。これからも、もうちょっと歌がうまくなるようにがんばります(笑)。

(文:若松正子)
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