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(更新: ORICON NEWS

映画『のぼうの城』SPECIAL INTERVIEW

いつの時代も、人を動かす力の本質は変わらない。映画『のぼうの城』の主人公“のぼう様”こと成田長親は、将に求められる智や勇こそないが、誰にも及ばぬ徳望で人々の心を掌握する人物だ。ORICON STYLEでは、そんな稀代の名将からリーダーの条件を読み解く特集を2週に渡ってお届け。1週目は、今作が9年ぶりの映画出演となる野村萬斎が登場。日本を代表する狂言師でもある萬斎の奥深い人間性に迫る。続く2週目は、長親と相対するリーダーを演じた上地雄輔と“インタビュー対決”で、互いの印象や現場裏話を語り合ってもらった。

不敵さがあるのに どこか親しみやすい役

──2003年の『陰陽師U』以来9年ぶりの主演映画となりましたが、のぼう様=成田長親役は意外な役のようでありハマり役でもあり……。本人的にはどんな感想を?
萬斎これまではどちらかというとシャープな役柄が多かったので、つかみどころのない役が来たな、というのが最初の印象でした。安倍晴明とは全然違いますからね(笑)。原作を読んでもよく分からない(つかみきれない)キャラクターでして……。周りからは「でくのぼう」とは言われていますが、どういう思考回路を持っているのかは分からなかったんですね。ただ、白い衣裳を着るということで何色にも染まっていない、周りから浮いている感じを出したい、そういう狙いはありました。

──その“つかめない” 長親の内面を、萬斎さん流にどう作り込んでいったのでしょうか?
萬斎「でくのぼう」というと、のっそりしているイメージがありますが、のろのろしているのでなく、もどかしくしているのでもなく、ただ、ぼーっとしている人なんじゃないかと思ったんです。最終的には大将になる人ですからね。僕以外のキャラクターが(濃いキャラで)立っていて、荒ぶる武者が揃っていましたから、現場に入ると事前に(のぼうの)席が用意されているような感覚はありました。なので、彼らとは違うソフトなイメージと予測できない演技を心がけたんです。

──ということは、萬斎さんに委ねられた部分、アドリブも多かったということですか?
萬斎かなり遊ばせてもらいました。たとえば「戦いまする」というセリフを言うときに、そのセリフの前に「……」という間が生まれると、何だ?一体何が起きたんだ?と思いますよね。そのひと言を活かすために間合いを入れたりしました。それから、私はのぼうは「道化=ジョーカー」だと思っているんです。狂言にもシェイクスピアの芝居にも道化は出てきますが、絵札が強いのか、単なるババなのか分からない不敵さがあるのにどこか親しみやすい。そんなジョーカーのように、とにかく周りの人に乗っからないというのはありましたね。

──なるほど。役者として、とても楽しめた現場だったようですね。
萬斎ほんとうに、楽しかったですね。さっきのアドリブの続きですが、「坂東武者の槍の味、存分に味わわれよ」というセリフの場面で、ふつうならそのセリフをただ言えばいいんですが、カメラレールが敷かれてカメラがグッと自分に寄ってくると、カメラマンを挑発したくなるんですよね(笑)。なので、最初は(ベーシックな)芝居をして、その後に「こんなのもできますよ」と、やってみると監督が喜んでそちらを採用してくれたりする。モニター前が賑やかなのが、何だかとても嬉しくて。笑いを取るために演技をしているわけではないんですけどね(笑)。犬童監督と樋口監督は仲が良くて、お互いに尊敬し合っていて、どちらかが前に出ればもう片方が後ろに下がるという、コンビネーションも素晴らしかったです。

道化の仮面の下に隠されている狂気

──田楽踊りのシーンの、振付けや歌詞を担当したとうかがいました。2万の敵方を惹きつける緊張感あるあのシーンができるまでを聞かせてください。
萬斎あのシーンは監督と相談しながら作っていきました。2万人の男を惹きつけるには──まあ、下ネタでしょうねと(笑)。お尻を見せることが決まったので、寝しょんべんをしたという設定にして、コイツ馬鹿じゃないのか?と思わせるスキを与えておきながら「西の猿が大放尿〜♪」と、話がつながっていく。「西の猿が大放尿〜♪」は、相手を上げているのか下げているのか……というセリフですよね。そして、白塗りをしたりして狂騒感を出していくんです。面白いシーンになりました。

──白塗りにした直後に殿様の顔になったというか、あの切り替えにはゾクッとさせられました。
萬斎白塗りにすると、仮面をかぶったような異様さが生まれるんです。あれだけふざけてひょうたんから放水しているのに、仮面をかぶると(顔を白く塗ると)一変する。そのときの長親の目の表情は、狂気というか殺意というか、白塗りにしたことでようやく腹の中が見えてくる感じ。それを出してほしいと監督からも言われました。

──たしかに、ただならぬものを長親から感じ取りました。最後に、完成した映画を観た感想も聞かせてください。
萬斎自分の出ているシーンに関しては、まだ冷静に観られていないところもあります。でも、合戦シーンは面白かったですね。いち観客として楽しませてもらいました。細い道があって、いくつもの“守り口”があって、それぞれがその1本道で戦うというのも面白かったです。時代劇というと、ここで何が登場して、次にこういう展開でとパターン化されていたり、諭すような教えがあったりしますよね。けれど、この『のぼうの城』は史実には基づいていますが、時代は戦国でも描いているのは人間ドラマ。出てくるのは人間くさい人たちばかりなんです(笑)。痛快劇、現代劇だと思って観ていただきたいですね。

(ヘアメイク:奥山信次(ing)/スタイリスト:中川原寛(CaNN)/文:新谷里映/撮り下ろし写真:鈴木一なり)

映画情報

のぼうの城

 天下統一目前の豊臣秀吉にケンカを売った“でくのぼう”がいた――。軍勢はわずか500人。総大将は、才能も勇気もないが人気だけはある“のぼう様”。豊臣2万の大軍に包囲され、絶体絶命のその時、のぼう様が打って出た突飛な奇策とは!? 驚天動地の実話、遂に解禁。脚本は、03年に城戸賞を受賞した和田竜のオリジナル。その脚本をもとに自身が書き下ろした小説は、08年第139回直木賞にノミネート、累計165万部突破の大ベストセラーとなった。日本映画の歴史を塗り替える壮大なスケールの本作を手掛けるのは、日本を代表する犬童一心×樋口真嗣の2二大監督。この奇跡のタッグで、2012年最大の超大作、誰も見たことのない興奮と感動のスペクタクル・エンタテインメントを生み出した!

監督:犬童一心 樋口真嗣
出演:野村萬斎 榮倉奈々 成宮寛貴 山口智充 上地雄輔 佐藤浩市
【映画予告編】 【OFFICIAL SITE】
2012年11月2日(金)全国超拡大ロードショー (C)2011『のぼうの城』フィルムパートナーズ

関連リンク

野村萬斎 as 成田長親インタビュー
萬斎VS上地“リーダー”対決!
上地雄輔 as 石田三成インタビュー

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