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斎藤工 Special Interview ネガティブゆえにポジティブに向かえる――それが僕のテンション
これまでの延長ではなく何かを立ち上げて臨む
斎藤代議士の息子で秘書という役柄です。まだ台本を数回読んだだけなんですが(※)、セレソン(東京セレソンデラックス)の舞台の大ファンで、以前から拝見していたので楽しみですね。セレソンは“泣ける舞台”という代名詞がありますが、今回はとことん笑いに寄っていて、真逆の世界だなという印象を受けました。笑い(コメディ)は一番難しいジャンルでもあるので、これまでの延長で芝居をするのではなく、自分のなかで何かを立ち上げて臨まないとかなわないんだろうなと。少しビビっています(笑)。
※取材は7月初旬に行われました。
──映画やドラマとは違う緊張がある、ということですか?
斎藤(違いは)意識します。というか、すべきですよね。お芝居の先生にチケット代の倍のクオリティを目指せと言われていて。今はまだ稽古前ですが、その意識は今から持っていたいなと思うんです。
──個人的にもよく舞台を観に行かれるんですか?
斎藤行きますね。下北沢が地元に近いということもあって、中屋敷(法仁)さんの舞台とか好きでよく観ています。時間に余裕があると、映画を観るか舞台に行くか──どちらかですね(笑)。
──忙しいなかで一体どうやって時間を捻出しているんですか?
斎藤この仕事って、オンオフがあるようでないんですよね。表(作品)に出ないときの過ごし方がお芝居につながったりするし、なぜこの作品に人はお金を払って観るんだろう?ということを考えながら作品を観ることはすごく大事な気がするんです。
──毎回、そういう見方をするんですか?
斎藤もちろん、純粋に楽しんで観てはいるんですけど、ほんとにおもしろい作品を観たときは「なんで自分がこの作品に関わっていないんだ!」と、プレイヤーとして悔しくなります。この感動を生んでいない自分は何なんだろう……と。
──ちなみに、最近その悔しさを味わった作品は?
斎藤具体的に聞かれると恥ずかしいんですけど……(笑)。嫉妬したのは、映画『エッセンシャル・キリング』のヴィンセント・ギャロのセリフのない芝居です。雪山で米国兵から逃れる人間動物映画で、たしかタランティーノが絶賛して話題になった映画(第67回ヴェネチア国際映画祭W受賞作)でもあって。やつれまくっているギャロの演じているキャラクターの負っているものが、嫌われ者のギャロのパーソナルデータとリンクしていて(笑)。すごい芝居で、とんでもない映画でした。もし自分がこんな役に出会ったら役者を辞めてもいいなって思える。それくらい強烈でしたね。こんな究極な状態を表現できたら気持ちいいだろうなと。
やり残してしまうことの方が怖い
斎藤そうですね……。最近『ケープ・フィアー』を見直したんですけど、あの作品でロバート・デ・ニーロは肉体改造だけではなく心理学的な役作りもしているんです。本当に人が嫌がる感情とはどういうものだろう?と、そういう視点から(役の)マックスを作っている。肉体改造にもこだわりがあって、あの肉体はジムで鍛えた肉体ではなく、刑務所の環境のなかで鍛えられる筋肉を作っているんです。デニーロは素でいることが不安で、不安ゆえに過剰なまでの役作りをするらしいんですけど、僕も不安だからこそとことんやりたい。日常を犠牲にしても得るものがあるのなら、とことんやりたいですね。準備不足でやり残してしまうことの方が怖いですから。
──そんな話を聞くと、次の舞台『笑う巨塔』が楽しみで仕方ないです!映画を中心に活躍されている方であっても、年に一度は舞台をやりたいという声をよく聞きますが、斎藤さんは?
斎藤僕もまさにそのタイプです(笑)。舞台は自分をさらけだす場でもあると思っていて。何の作品に出たとか、どれだけの本数に出たとかではなく、自分がどういう生き方をしてきたか──恥ずかしい部分、汚い部分と役が接点を持つことで芝居に生きてくると思うんです。それから、経験とともにうまくごまかす方法が自然と身に付いてしまうことが表現におけるガンだとも思っていて。そのリセットボタンが舞台なんじゃないかなと。情報も邪魔なんです。たとえば、すごくお金持ちだと公言している人が貧しい人の役をやったとしても、公言しているから何のリアリティもないじゃないですか。役者である限りパーソナルデータは邪魔。まあ、それを越えたお芝居ができていればいい話なんですけどね。
──深いですね。
斎藤深いふりをして話しているだけです。僕自身は深くないです(笑)。
──パーソナルデータが邪魔というのはよく分かるんですが、ファンとしては斎藤さんのプライベートも気になるわけで……。
斎藤大丈夫です。どんどん聞いてください(笑)。
(文:新谷里映/写真:逢坂 聡)
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【自分に“欠けているモノ”がキーワード】
ヘアメイク:赤塚修二(メーキャップルーム)
スタイリスト:井元文子(Creative GUILD)
舞台情報
2003年に東京セレソンデラックスで上演されたシチュエーションコメディ『HUNGRY』が10年の時を超え、2012年『笑う巨塔』としてよみがえる。病院のロビーを舞台に展開する一幕物のシチュエーションコメディで、2時間暗転なし、勘違いや行き違いが交錯して笑いと涙を巻き起こす。
胃潰瘍で入院している鳶の親方一家と空腹で倒れた次期総理総裁を目指す代議士の秘書たちを中心に、医者や看護師たち、そして見舞い客を巻き込んで、この病院は「白い巨塔」ならぬ「笑う巨塔」と化していく。愛に夢に仕事に恋に飢えた、お馬鹿でおマヌケな奴らが、一生懸命突っ走る!必死の想いが招く大混乱の大波乱、熱き想いは涙も誘う!?
2012年12月31日をもって解散する東京セレソンデラックスの注目必至の最終公演!
企画・制作:オフィスセレソン
作・演出:宅間孝行
出演:宅間孝行 芦名星 斎藤工/松本明子 デビット伊東/石井愃一 藤吉久美子/金田明夫 他
10月3日 東京公演より全国縦断公演がスタート![公演スケジュール詳細はこちらへ]
【『笑う巨塔』OFFICIAL SITE】
【『東京セレソンデラックス』OFFICIAL SITE】
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