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ORICON NEWS
サカナクション『バンドの未来を切り拓く最新「SAKANATRIBE」ツアーレポート』
“0から100”をテーマに、音の奥深さを体感させるステージ
「アルクアラウンド」、「セントレイ」、「表参道26時」など、観客もハンドクラップをしたり、飛び跳ねたりして参加。会場内の盛り上がりを数字で示すならば、序盤ですでに“100”状態に近い。ツアータイトルの中にある「SAKANATRIBE」という言葉どおり、“サカナ部族”による一体感のあふれる空間が出現。しかも閉鎖的なものではなくて、外に向かって開かれていて、一体感と開放感とが共存しているところが良い。サウンド面で特徴的だったのは彼らが人間味あふれる演奏を展開していたこと。正確に刻まれたリズムの中に“ゆれ”や“うねり”や“熱”を見事に導入している。その瞬間にしか生まれない予測不能のスリルが曲の世界観を損ねるのではなくて、さらなるリアリティーを付加していく。躍動するリズムからメンバーの高ぶりまでもが伝わってくるようだったのは「表参道26時」。ベース、ドラムだけじゃなくて、ボーカルもギターもキーボードもリズム楽器と言いたくなるようなキレ味抜群の強靱なリズムが気持ち良かったのは「Klee」。どの曲も実に肉体的だ。クールな質感とホットな熱気が混在する演奏には、唯一無二のオリジナリティーが宿っている。
肉体のみならず、脳内をスリリングに刺激していったのは、「エンドレス」から始まるディープでイマジネイティブなナンバーが並ぶ中盤。抑制の効いた始まり方をしながら、後半に向かうほどにエモーションがほとばしっていく「エンドレス」ではフィニッシュの瞬間、鳥肌が立った。気泡のSE音で始まった「シーラカンスと僕」では、深海へと誘われていくようだった。「流線」はリアルタイムで展開されていく、オイルアートの映像が流れる中で。ブルージーかつディープな演奏が胸の奥深くに染みてくる。「ユリイカ」は夕暮れの木立、雲と空など、さまざまな風景のモノクロ写真が映し出される中での演奏。この日のTOKYO DOME CITY HALLの入り口前のスナップも映し出された。風が吹き抜けていくような穏やかな爽快感を備えた歌と演奏が、瞬間瞬間のかけがえのなさを浮き彫りにしていく。
「ロックから得られる感動の種類をもっと増やしたい」(山口)
アンコールでは一転して、ラップトップやサンプラーが並ぶクラブミュージック仕様で、メンバー全員が横一列に並び、「Ame(B) -SAKANATRIBE MIX-」での始まり。カラフルなレーザー光線が雨のように降りそそぐ。「ミュージック」の途中までこのスタイルで、後半から“お馴染み”のバンド形態へ。メカニカルなサウンドを挟んだことで、バンドサウンドの肉体性も際立っていた。さらにコーラスも含めてバンドが塊となって疾走していく「Aoi」へと続いた。アンコール最後の演奏前に長めのMCがあって、“0から100”がライブのテーマとなっていたこと、ツアーの中で曲が育ってきたこと、さらにはライブがバンドだけでなく、音響、照明、映像などが一体となって“チームサカナクション”によって作られているのだということも説明された。こんな言葉も印象に残った。
「(『NHK紅白歌合戦』の出演などで)メディアで知ってくれた人をここに呼びたい。ここに足を運んでもらうために、僕らはどういうことをしたらいいのか考えていくのがこれからのバンドの未来だと思う。ロックから得られる感動の種類をもっと増やしたい」
たくさんの“0から100”を体感した夜だった。耳を澄ませて聴きいる音から体で感じる大音量まで。深海や暗闇から光あふれる世界まで。無機質から有機物まで。クールな空気からホットな熱気まで。この日のステージから見えてきたのは“0から100”の間にあるのは限られた数ではなくて無限大であるということ、音楽というものの可能性の大きさだった。アンコールの最後に演奏された「グッドバイ」は未来へと旅立つ決意の歌のように響いてきた。予測がつかない“不確かな未来”だからこそ、大きな可能性が広がっている。音楽に対する真っ直ぐな想いと高い志を胸に、彼らは不確かな未来へと果敢に踏み出していた。
(文:長谷川誠/撮影:石阪大輔(hatos))
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