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小林武史「はみ出してみないと分からないこともある」
小林武史のリーダー論「“核”と心が響き合っているか」
「 「魅力の大きい部分はちゃんと伝えたい」「全体の核になるポイント作り」と、実はものすごいシンプルに考えています。それがいくつか繋がっていくと、そこからさらに派生する展開ができる。昔から、ひとつの曲をプロデュースするときも同じ考えでやっています。“気持ちがグワーっと流れていくポイント”を積み上げるということが大事ですね。今回のフェスを例にするとなると、僕らがやろうとしていることは前例もないし、分かりやすいことでもない。だからこそ、みんなでシンプルに来てよかったと思えるっていうところが、一番の核。
もっと全般的総合的な意味においてはアナログ感に近い想いがあります。“響き合う”みたいなこと。何と響き合うのか?それはやっぱり、来てくれるオーディエンス、お客さんたちですよね。ミスチルの櫻井君とも話していたんですが、僕らは“都市でできないこと”を今回はやらないといけないと思っています。それは、分かりやすいものじゃないかも知れないですが、作り手が提示した通りだけではない、来てくれた多彩な感覚を持つ人々に、一期一会で何重にも感性に響くものを用意できるか。
例えば、その“都市でできないこと”のポイントのひとつが、石巻エリアの臨場感です。僕がお客さんだったら、石巻に行って、スタッフ、ボランティア、演者しかいなかったら「どこなのここ?」って思うと思います。地元の人たちが関わることによって、石巻ならではの臨場感が生まれてくるわけですよね。実際にお客さんにどうやって作用するのかはやってみないと分からないこともありますが、そういう細かいところもしっかりブレずに考えていきたいと思っています」
「大事なポイントでは、音楽でリズムを作っていく」
「音楽家として最近はSEKAI NO OWARIのシングルをプロデュースして、本人たちが「最高でした」と言ってくれるくらいの会心の出来になってきている。ほかにもback numberや若手の才能と関われています。音楽シーンとの向き合い方は多少変わってきています。昔の「僕とMr.Children」みたいにアーティストの全てに関わることはもうできないけれど、そういう若い人たちとクリエイティブで関われている事がエネルギーの源ですね。こういう社会的活動に関わっていると、音楽家としてスタジオに入る時間はやっぱり少なくなってしまう。だからこそ音楽活動でリズムを作っています。音楽のクリエイティブに、楽しく関われること自体がエネルギーになって、ひいては人生のリズムになってきています」
このインタビューの中でも、「響き合う」「アナログ」「オーディエンス」などの言葉を印象的に使っていた小林。根っからの音楽家であることが、生きるエネルギーそのものになっている。“本当に好きなもの”は頻度が少なくなったとしても、しっかり、濃く関わっていくことが小林流の人生の楽しみ方だ。
小林武史が今見据えているものは、「新たな音楽の届け方」
今まではかなり専門性をもって音楽を出す仕組みを作らないと、簡単なライブもできなかった。そして、作った仕組み自体が重たくなって続かなくなることがいろいろありました。それがテクノロジーによりもっとフットワーク軽く表現できるようになるんです。元々僕は、そういうことを実現したかったんです。今回のReborn-Art Festivalはそういった試みの場でもあり、51日間を通じてきっとやりながら僕も学んでいくことになるんです。今年が終わったら色々分かるんでしょうね。それは僕だけのビジョンじゃなくて、日本の音楽業界ひいては、世界的にも求められることになると思います」
読者へメッセージ「はみ出して捉えてみることも大切」
(取材・文 / 加藤由盛)
(写真 / 野呂知功〔TRIVAL〕)
音楽・アート・食の総合祭『Reborn-Art Festival』
https://mens.oricon.co.jp/feature/204/5/