• ORICON MUSIC(オリコンミュージック)
  • ドラマ&映画(by オリコンニュース)
  • アニメ&ゲーム(by オリコンニュース)
  • eltha(エルザ by オリコンニュース)
(更新: ORICON NEWS

my job , my heart 「考えるラーメン屋」

ラーメン職人は、経営的視点が必要

お客さんと従業員両方が仕事のやりがいと語る田中氏。ラーメン店の経営は、従業員への給料への責任もあり、ラーメン職人であり、経営者である。一料理人から経営者になる際、意識の変化はあったのだろうか?

「手本とした人はいませんが、独立前、約8年間は総料理長として経営者目線で仕事ができました。社長の意見と現場の意見両方を肌で感じて、ラーメン職人でありつつ、マネジメントも学べました。どっちの不満も分かる立場で大変でした(笑)。従業員の給料が払えなかったら、お店は回らないですから、従業員のことも考えていかないといけない。独立志望者も増えてきていますし、『田なかで修業した』っていわれて恥ずかしくない教育をしていかないといけないと思っています」

いいラーメン店は、「おいしい」だけではダメ

過去に提供していた限定メニュー。秋鮭の白湯ソース神山すだち和えそば

過去に提供していた限定メニュー。秋鮭の白湯ソース神山すだち和えそば

「ラーメンってすべての要素が研究し尽くされていて、どの店もおいしいし、工夫を凝らしています。おいしいラーメンは、シンプルに考えると、だしと麺。そこにお金をかけて、技術があればおいしいラーメンは必ずできる。でも、それは食材の力でもあります。おいしいだしをバンバン入れると、どんどんおいしくなる…はずです。でも、最高の食材だけで作ることはでないですから、調理法と技術をベースにして、足し算引き算ができないといけない。どう原価をおさえて、減らした分のおいしさを補うために何をするか、そういうところが料理人としての腕の見せ所です」

「お父さんの料理」がおいしいのは当たり前。食材に凝ってお金をかけて、時間もたっぷり使えるからだ。それよりも評価すべきは毎日家計を考えながら工夫を凝らしているお母さんの料理だ。田中氏は「料理人の仕事は、手持ちのカードを最大化する組み合わせを考えること」だという。

「料理番組は録画して見ています。『料理の鉄人』とかプロのものも好きですが、主婦向けの時短料理も勉強しています。いろんなインスピレーションをもらえる。スタッフにもラーメンじゃない店に食べに行きなさいと言ってます。新しい発想のために、いろいろなものを食べることも必要だと思うんです」

今年一番嬉しかったこと・悔しかったこと ラーメン通からの高評価

  • 先述の『大つけ麺博』でテレビの取材を受ける田中氏

    先述の『大つけ麺博』でテレビの取材を受ける田中氏

「昨年末にオープンした秋葉原の店が、『TRYラーメン大賞2016-2017』で上位にランクインしたことですね。あと、テレビ東京の番組のプロデューサーさんに紹介されて、番組でレシピコーナーをもらいました。8週にわたって放送されたようですが、東北、九州でオンエアらしく、自分は見てません(笑)。類似しない個性的なラーメンを意識して作っているので、それを評価してもらえることはうれしいです。1人でも多くの人に食べてもらいたいですから、やっぱりメディアに取り上げていただけるのは励みになりますね」

新たな取り組みの失敗は「発見」

「志奈そば田なかsecond」で提供しているオンリーワンのメニュー、至高の「塩」かけそば〜房総の恵み〜 1000円(1日30杯・夜限定)

「志奈そば田なかsecond」で提供しているオンリーワンのメニュー、至高の「塩」かけそば〜房総の恵み〜 1000円(1日30杯・夜限定)

「志奈そば田なかsecond」で提供しているオンリーワンのメニュー、至高の「塩」かけそば〜房総の恵み〜 1000円(1日30杯・夜限定)。ブームの兆しのある“高級ラーメン”をあえて具なしという新しい形で提案し、アワビ・サザエなどの高級だしのうまみを追求したチャレンジメニューだ。テレビ・雑誌にも取り上げられたが、それゆえの失敗もあった。
  • 伊勢エビ、アワビ、サザエの三重奏のうま味を堪能できるスペシャルメニューだ。

    伊勢エビ、アワビ、サザエの三重奏のうま味を堪能できるスペシャルメニューだ。

「僕のラーメンのコンセプトは「一杯のフルコース」ですが、このメニューだけそれに反してまで千葉・房総の恵みを届けたいという思いで作りました。出してすぐに話題にしていただけて、メディアの取材を受けたんですが…その直後に台風で漁師さんが漁に出れなくなってしまって、材料が手に入らずに、2週間メニューを提供できませんでした。通年獲れるものでない、漁で左右される食材を使うことの大変さに気づきました。これ目当てで来ていただいた方には申し訳ないことをしました」

それ以来、食材の仕入れ状況は細心の注意を払っている。

仕事人に5つの質問

限定麺のレシピを店長にレクチャーする田中氏

限定麺のレシピを店長にレクチャーする田中氏

Q.ラーメン屋さんはどんな仕事?
A.「お互いに人を幸せにできる仕事」

「おいしいラーメンをお出ししてお客さんに幸せになってもらう。もちろん従業員に対しても、自分に対しても。「おいしいものを作って人も自分も幸せになれる仕事です」

Q.ラーメン店の仕事のいい面・悪い面は?
GOOD!
「おいしい料理を作れること」

「誰かのためにおいしい料理が作れる技術が身につくことです。家族においしい料理を食べてもらえるのは幸せなことですね」

BAD
「過酷な労働の割に、まだまだラーメン自体の評価が低い」

「ラーメン屋は仕込みを含めて一日の労働時間がすごく長い。本当に体力と根気がいる仕事です。寸胴も食材もとにかく重いし、そして、明日出すものを今日作らないといけない。毎日22時50分が締め切りです。その割に、フレンチ・イタリアン・日本料理に比べて、評価が低い。いまでこそ少しずつ“麺料理”として確立されているが、まだまだ良くも悪くも“大衆食”です。これを少しずつ変えていきたい。ラーメン店の価値を上げていきたい」

Q.ラーメン屋さんにはどんな能力が必要?
A.「いろいろな料理を食べること。そして食べたものを再現すること。あとはいきなり泥臭くなりますが体力と根性(笑)」

“根性”というと精神論に聞こえるが、「投げ出さないために、細かな目標を設定して、一つずつクリアすること」とスタッフに指導しているそう。

Q.ラーメン屋じゃなければどんな仕事についていたか?
A.「美容師」

「料理人でなかったとしたら、高校生の時になりたかった美容師になっていたかもしれませんね」

Q.仕事の相棒アイテムは?
A.「ミニメモ帳」

“ここでしか食べられない味”を楽しみながら創造したい

「紙のメモは常に持ち歩いています。レシピやアイデアはその場でメモしないと忘れますし、すぐ書き込めるので紙派です。なんでもかんでも書き記すので、レシピ用、従業員用など、用途により使い分けています」
「仕事がないと生きていけないですし、大人は大変な時間を仕事に費やしています。仕事がつまらないと生きるのがつまらなくなる。だからこそ、生きていく上で仕事を楽しむことはすごく大事だと思っています。では、楽しい仕事を選択するのか? または今の仕事を楽しいものにするのか。

料理人としての考えでもあるんですが、僕はいいところを見つけるのが得意で、そうあり続けたい。灰汁が出る食材でも、使い方次第です。人間は嫌いなことから逃げることが多い。仕事も絶対にいやな部分、つらい部分があるけれど、そのつらいことの中のどこかに必ず良いことが潜んでいる、そう思って働いています。人生に近道があるとすれば、仕事を楽しむことじゃないでしょうか」

今は素ラーメンに凝っていて、高級食材も含めて動物系、野菜オンリー…いろいろなパターンので新しい味を作っていきたいと語る田中氏。価値を作るのが自分の仕事。そういう思いを持ち、「考えるラーメン屋」として生きている。

(取材・文 / 加藤由盛)

あなたにおすすめの記事

>

 を検索