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「3rdシングルでブレイク」の方程式

新人HIP-HOPアーティストSoulJa(ソルジャ)とGReeeeNのヒットの共通項

 ハードコアな側面とメロディアスな側面の両面の才能を持ち合わせた新人HIP-HOPアーティストSoulJa(ソルジャ)。レコード会社のUMK社ではその魅力を最大限に引き出すべく、1stシングルでハードコアなラップを、2ndシングルでラップと歌の融合作を送り出し、まずはコアファンを獲得する戦略をとった。そして、ヒット・ポテンシャルの高い3rdシングル「ここにいるよ feat. 青山テルマ」でターゲットをコアからマスへとシフト・チェンジ。幅広いユーザーを獲得することに成功し、勝負作としていた3rdシングルでブレイクを果たした。CDは5週連続TOP10入り、そのセールスを牽引したモバイル配信にいたっては、着うた/着うたフル合計で100万ダウンロードを突破し、さらに売り伸ばし中だ。そこには、同じレーベルから1ヶ月先にメジャーデビューしたGReeeeNで培ったマーケティングが展開されていた。

 
「ここにいるよ feat. 青山テルマ」
9月19日発売


3rdで勝負を決定付けた「愛唄」の大ヒット

 今年の新人最大ヒット作となっているGReeeeN の3rdシングル「愛唄」。シングルセールスは約22万枚、着うた、着うたフルにいたっては合計400万ダウンロードを突破し、その勢いはいまだとどまるところを知らない。そして、同作を発売したUMK社NAYUTAWAVE RECORDSから、またもや新人アーティストがブレイクした。9月19日に発売されたSoulJaの3rdシングル『ここにいるよ feat. 青山テルマ』(以下「ここにいるよ」)が、1st、2ndシングルのセールスを大幅に飛び越えて初登場8位にランクインし、5週連続TOP10入り。11月26日付現在、8.5万枚のセールスをあげている。



ロートーンで優しくメロウなSoulJaのラップに絡む青山テルマの包み込むような柔らかい女性ボーカル。そのゆったりとした心地良いバックトラックに乗せられた、聴く者の胸をキュンとさせるリリック。この夏は街のいたるところでこの歌を耳にした。

 3rdシングルでブレイクしたという点で、GReeeeN とリンクする今回のSoulJaのGReeeeN ヒット。探っていくと、両者の共通項は他にも幾つかあることに気づく。まずは、彼らを発掘したA&RがNAYUTAWAVE RECORDSの山吉史氏であること、そして、着うたヒットからCDヒットにつながったこと、ラブソングでブレイクしたことなどがあげられる。

 とりわけポイントになったのは、GReeeeN 同様、「3rdシングルで勝負」をかけた点だろう。まずは3枚のシングルをリリースし、3作目で勝負をかけてその勢いのままアルバムにつなげるという方法論が、そっくりSoulJaに活かされた。デビュー直前の2月に「ここにいるよ」の骨格がほぼ出来上がっていた時点で、同曲が1stアルバムに向けた最重要楽曲であり、ブレイク・ポイントになるという共通認識を持ったUMK社は、どのタイミングでこの曲をリリースすべきかを見計らっていた。

「GReeeeNが1月デビュー、SoulJaが2月デビューとあって、当初からほぼ同じようなプランニングを頭の中で描いていました。ただ、SoulJaは後発とあっての方法論を活かせる。そこで、確定したプランニングはせずに進めていき、が3rdでブレイクした時に、これをセオリーとしてSoulJaに活かせると確信し、「ここにいるよ」を3rdシングルとして発売するのがベストだという考えがまとまりました」(山吉史氏)

 そこからは、9月19日に設定した発売日からの逆算で、スケジュールが組み立てられた。

「街鳴り、Web、モバイルを活用してヒットにつなげる方法論がNAYUTAWAVEにはありました。GReeeeNで成功した施策を前倒しし、着うたを2ndシングルのパッケージと同日の6月20日から超先行配信、発売2ヶ月前の7月下旬からWebとモバイル施策を本格的に開始し、プロモーションの柱にした街鳴りも8月から鳴り出す仕込みをしました。立ち上がりが早い分、耳にする機会も多くなるだろうと、プロモーション期間も通常よりかなり長めに設定しました」(NAYUTAWAVE RECORDSプロダクトマネジメント部 佐々木奈美氏)

 シングルより1ヶ月半も先行して配信を開始したの「愛唄」よりさらに早い3ヶ月前からという超先行配信。まだ、3rdシングルのリリース情報さえ出していない段階から、どこかで楽曲を耳にして気になったユーザーが、モバイルを手にした時点でいつでもダウンロードできる状況をあらかじめ用意しておいた。そして、その後数々打たれたモバイル施策の起点となったのが、7月下旬のバナー出しだった。

「モバイル施策の比重は非常に高く、GReeeeN 以上。バナー出しも音楽関連だけでなく一般層に人気のあるサイトに積極的にアプローチしました。今作は遠距離恋愛がテーマだったので、“遠恋中の人、必聴!! ”というキャッチで、あえてSoulJaという名前も出さずにバナーを貼りました」(佐々木奈美氏)

 “遠恋”というキーワードだけでユーザーを誘導する狙いは見事的中。結果、バナーを貼り出した初日だけで1万クリック以上のレスポンスがあり、バナーのリンクからPVを試聴できるようにしていたため、それを機に一気に着うたのダウンロード数もアップした。的確なターゲティングと、ユーザーの心をくすぐるキーワード設定がヒットを生み出す好例だろう。

地上波TV露出に切り替え、着うたDL数は前日比4倍

 口コミによる地道なベース作りを8月下旬までにしたうえで、9月からTV施策に移行した。「8月ではなく、9月にもっていったところに大きな意味がありました」という思惑どおり、9月1日から『CDTV』(TBS系)のエンディング・テーマとして「ここにいるよ」が流れ、同5日に『めざましテレビ』(CX系)で取り上げられた直後からダウンロード数は劇的に急増、勢いそのままに、同19日に発売となったシングルのヒットへとつながった。

 さらに、そんなタイムリーな中で、11月7日には1stアルバム『Spirits』が発売となり、11月19日付のランキングでは9位に初登場した。

「ある程度コンパクトに聴ける時間に収め、その分、手に取りやすい価格にした方が今の時代にマッチしている」との山氏の言葉どおり、収録曲数11曲、2600円と比較的購入しやすい価格設定に。それらも手伝い、同アルバムはイニシャル6万5000枚からスタートした。そして、この11月からは地上波TV音楽番組への露出へとシフト。ここまでGReeeeN の成功例を踏襲、進化させたマーケティングを展開してきたが、ここから先はアーティスト稼動のないとは違う、SoulJaのビジュアルを存分に活かした戦略が本格化する。その効果は早速すさまじい数字となって現れ、同12日に『HEY!HEY!HEY!MUSIC CHAMP』(CX系)に出演するやいなや、着うたのダウンロードが前日の4倍にも跳ね上がった。同14日付のUMK社のリリースによれば、「ここにいるよ」の着うたは65万ダウンロード、着うたフルは45万ダウンロードを突破し、モバイル配信合計で100万ダウンロードを突破したという。

 年末に向け、再び「ここにいるよ」への関心が高まりつつある。


 

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