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日本音楽映像製作者協会が設立

音楽業界とピースな関係を保ちながら
音楽ビデオの魅力や可能性を伝えていきたい


 日本に登場して以来はや25年が経過し、現在では年間2500本もの作品が製作されているミュージック・ビデオ。昨今はアーティスト・プロモーションという役割にとどまらず、PCやケータイでの視聴やDVDパッケージ商品などアウトプットも増え、ユーザーにはひとつのカルチャーとして認知されている。そんななか、ミュージック・ビデオおよびその製作者に対する理解を深めてもらうという趣旨のもと、4月より日本音楽映像製作者協会(JMVPA)が発足する。理事長を務める中野裕之氏をはじめ4人の理事に、設立の経緯や協会としての今後の目標などについて語ってもらった。

協会の活動を通して作り手としての「想い」をアピールしたい

―― JMVPAを設立するに至った経緯と意図についてお話しください。

梶田:ミュージック・ビデオの世界では、作品は残るけれども作品を作ったのは誰かという記録がほとんどまったく残せていませんでした。なので、そのデータベースを製作会社自身で作りましょうというのが、JMVPA設立のきっかけです。去年の5月頃から話し合いを始めたもののなかなかうまくまとまらないなか、ミュージック・ビデオのキュレーター的な活動をされている映像ライターの林永子さんがいろいろと提案してくれて、親睦団体というか、製作会社同士の連絡のための会を作ろうという話になったんです。

中野:PCやケータイの動画コンテンツとして、あるいはDVDパッケージ商品としてなど、ミュージック・ビデオを発信するいろんなメディアが増えてくる一方で、レコードメーカーによる宣伝費削減などの影響を受けたりして、音楽映像製作の現場はかなり深刻な状況になってきました。そんな状況下で横のつながりを作って、いろんなメリットを探していくための前向きな話し合いをしようと発足させたんです。

―― ミュージック・ビデオやその製作会社が置かれている現在の状況に対して、具体的にどんなことを主張していきますか。

中野:現状としては、民放ではランキングものなど作品ごとに10秒ほどしかオンエアされないような番組がほとんどですし、CS音楽専門チャンネルであっても、ミュージック・ビデオは基本はスポット的に流れます。一方で、レコード会社がCDにDVD商品としてミュージック・ビデオを付けてアピールするというのも理解できるし、それに対していちいち私たちが権利を要求していこうということではないんですね。
 ただ、ケータイなどがどんどんミュージック・ビデオを配信している状況のなか、僕たちは「作品」として作っているという意識が強いし、愛を込めて作っているわけで、せめて作品としてリスペクトはしてねと。たとえば製作プロダクションやプロデューサー、ディレクターの名前をクレジットのフォーマットの中に入れていただくとか。名前が載るだけでもクリエイターにとってはやりがいがあり、がんばろうという人も増えると思うんです。CDにジャケットデザインのクレジットは入っていても、DVDには映像製作のクレジットは入っていないので、そんな小さいところからでも主張し始めようと考えています。

松居:僕としてはプロモーション・ビデオではなくて、ミュージック・ビデオと呼んでもらいたいし、そう認識してほしいです。ミュージック・ビデオ産業全体としてシステムをしっかり構築するべきだし、ユーザーに楽しくて面白いと思ってもらう作品を作り続けるためにも、新しいクリエイターがどんどん育ってほしい。そういう環境を守るシステムも作っていかないといけないと思うんです。

 

竹石渉さん
フィルムディレクター/(株)ディードライヴ CEO



中野裕之さん
映像作家/ピースデリック(有) 代表取締役



松居秀之さん
プロデューサー/(株)ピクス 常務取締役



梶田裕貴さん
プロデューサー/(株)セップ 代表取締役


竹石:作り手としては「商品」を作っている意識はないんです。商品を作るとしたら作り方そのものが変わってきますから。僕たちの場合、音楽が先にあっていろんなことがすでに決まっているなかで、最後に映像を作るんです。それを一緒にして「商品です」と出されてしまうと、こちらもそれは違うんじゃないかと思ってしまう。本当に商品として世の中に出していくのであれば、私たちにも売るためにもっとできることがあると思うんですね。作っている形態は変わっていないのに状況は商品になっているけれども、作り手側も商品を作るという意識を持てば、もっと違うものができるのかなと思います。

中野:今までは主にCS音楽専門チャンネルなどで流れるフォーマットをもとに作っていたんですが、もっといろんな発想のミュージック・ビデオがあっても構わないと思います。要はいいものが作れて、その結果CDが売れればいい。例外もありましたが一般的には、音楽映像の製作プロダクションとして「製作費も出すから権利もください」と言っても普通は無理なんです。普通の作詞作曲みたいな印税が発生するのかというと、まず音楽ありきというのがあるのでそこも無理だと、私たちは心得ています。
 ただ、「こういう映像作品を作るから、曲を作ってもらえませんか」というミュージック・ビデオの作り手の発想から生まれたアイデアの著作権については、議論の余地もあるかなと。もちろんまず曲ありきで、映像は曲がないとインスピレーションも湧かずアイデアも生まれないんですが、それはたとえば作詞家の方は作曲家のメロディがないと詞がうまく浮かばないのと同じなので。先に発想した企画ものに関してなどは、そこには何かあってもいいのかもなとは思います。

作り手や作品の認知度向上から人材発掘まで、やりたいことは山積

―― そのような作り手としての想いをうまくアピールしていくために、今後、協会を通して具体的に行っていきたいことについてお聞かせください。

梶田:皮肉にも、世間で広くミュージック・ビデオが認知される状況になってきたところで、製作現場には昔あった元気がなくなっていると言われます。それを取り戻して、楽しく活気のある環境にしたいです。

中野:それには作り手のことをもっと知ってもらうことが大切ですよね。ミュージック・ビデオをちらっと目にして、それに恋する人もいると思うんですよ。僕はそうでした。アーティストもカッコいいけど、映像自体がカッコいいとかキレイであれば、それを誰が撮っているのか知りたいでしょ。竹石さんは美少女をいっぱい撮っているじゃないですか。たとえばBoAのミュージック・ビデオのあのワンカットが見たいとか、いろいろあるわけですよ。だけどその作り手が竹石さんだということに、ぐるぐる調べ回ってようやく辿り着くわけです。
 だから、そういう情報がパッと調べられるデータベースを作りたいと思います。それと、ミュージック・ビデオの素晴らしさをひとりでも多くの人に届けるということでは、イベントを開くというのもありでしょうし、JMVPA加盟社による映像のコンピレーションを作るというのもあると思います。

梶田:夢みたいな話ですけど、JMVPA発、我々の企画で映像作品を作ってみたいですね。ここには協会を作ったからこそ、優秀なクリエイターが一堂に集まっていますから。「こちらで作った映像に音を付けてくれませんか」と提案するという話もありえるかもしれない。

中野:協会主催のアワードみたいなことをやっても面白い。

松居:アメリカにあるMVPAは年に1回、ミュージック・ビデオ・プロダクション・アワードを主催していますが、ものすごい数のミュージシャンが集まるんですよ。会員はディレクターやカメラマン、スタイリストなど。あらゆるクリエイターが集まって投票する、クリエイターがクリエイターを選ぶアワードです。JMVPAもそういうことをやりたいですし、イベントとしてすごく価値があると思います。それが実現すると、もっと多くの映像クリエイター志望者がこの業界に入りたいと注目してくれると思います。そんな彼らが将来的に映画を作ったりドラマを作ったりと、才能が広がっていくようになればいいですよね。

中野:音楽映像の仕事に就きたいという人たちに情報を提供していくことも大切ですよね。この業界は大手は別として普通は10人くらいの所帯の会社が多いから、「就職活動されてもなぁ」というのもありました。会社を調べる術もないから、『コマーシャル・フォト』(プロの写真家と広告クリエイターのための専門誌)の“ディレクターズ・ファイル”に作品が載るようになってはじめて求職のアクセスが来るようになったんです。それまで誰も知らなかったわけですね。
 今、モーショングラフィック系が得意な若い人は多い。ミュージック・ビデオの生な感じとCGの中間に位置する仕事ですよね。そういう技術を学んでいる専門学校生の3ヶ月かけた卒業製作とか見せられるととんでもなく良くできてますよ。「それを3日でやらなきゃいけないんだぜ、この業界は」というのはありますけど(笑)。ただ、2〜3秒に特化したものや、フル尺ではなく30秒とかで作る作業には、専門学校を出てこの業界に入ってきたモーショングラフィッカーに活動の場はある。そういう人たちのためのモーショングラフィック協会をJMVPAの中に作って、たとえばお互いに発注ができるようにする。極端な話、今月の加盟各社ごとの仕事受注のキャパシティとかが、データベースで見られるとかね(笑)。
 僕は『広島ショートムービーフェスティバル』で審査員をやっているんですが、ミュージック・ビデオのカテゴリーを新設してもらうんです。これはレコード会社の新人発掘プロジェクトを支援する目的でもあるんですが、音源をレコード会社の方に作ってもらって、リップシンクロなどの映像はJMVPAも協力して提供する。それを応募者がダウンロードして好きに映像を作れば、応募者の数だけミュージック・ビデオができるという。そういうコンテストをオフィシャルに開催することで、いろんな才能を発掘できることもアピールしたいですね。また、著作権の問題もあります。
 たとえば、竹石さんの作品集を作りたくても僕でも簡単には作れないんですよ。作品それぞれに関しても細かく著作権があるから。でも協会があれば、たとえばディレクターズDVDを作りましょうといったときに、業界として窓口ができるじゃないですか。それがなくて権利が10数社に分かれているというのを個人でいちいち確認して交渉していたら大変ですよ。そういう法律的な手続きの面をサポートしてもらってクリアにして、結果的に映像作品を見てもらえる機会を増やせることも望んでいます。

竹石:権利の話になると重い話になってしまいがちですが、今まで僕らが作った著作物を世の中で商品化するにしてもプロモーションするにしても、すべてはレコード会社や音楽チャンネルの思惑の中で決められていることでしたが、作った著作物を僕らの業界の方から発信できるようなビジネスチャンスを生み出せないかなと。こちらが考えていて彼らが思いついていなかったようなことを提案したいし、やらせてもらいたいです。今は、ひとつの作品をどういうふうに活用しようかという時に、テーブルにもつけないのが現状です。作ってお渡しして終わり。
 だから、作品を世の中にどう出していくのかを話し合うテーブルにつかせていただいて提案したい。流す場を僕らで作ったりすることもできると思うんですよ。それができると、作ったものがさらに活きてくるはずですから。

梶田:権利については将来的には話し合っていきたいと考えていますが、今は学習中。だから、権利を主張するなんていうのはまだまだ先の話です。それは原盤権の話をしているのか、著作権なのか、人格権の話? 財産権の話?……JMVPAは映像製作に関してはプロフェッショナルですが、権利の話となるとまだまだ子供レベル。そんな話ができるレベルにはまだ全然至っていません。それよりも、僕は単純に30社以上が集まったことに感動しているんです。それで中野さんと話ができたとか、竹石さんとお酒を飲めたとか、そんなことが起こるとは予測していなかった。これだけのクリエイターが仲良く集まっているということに、ものすごく可能性を感じます。

―― やりたいこと、やるべきことが山積みで今後の活動が楽しみですが、ミュージック・ビデオの未来についての展望をお聞かせください。

中野:いろんな業界を経験して言えるのは、ミュージック・ビデオは一番自由なメディアだということ。クリエイターとしては最も自由度が高いし、最初から最後まで決められる。作るということに関して、たとえばCMだと普通97%はプランナーさんだったりする。それに比べてミュージック・ビデオは、ディレクターの裁量が95%くらいというところがフリーダム。「カッコいいことが起きて、カッコいいことができるのはこの媒体だよ」って若い人に言ってあげたいんです。ミュージック・ビデオは、音楽がよりいっそうよく聴こえる媒体だと思います。それゆえに売れている曲も山ほどあります。映像がなければ売れなかった曲だっていっぱいあるはずです。
 そのために僕たちプロフェッショナルは知恵とテクニックと労力を使ってがんばっています。ファッションであり文化でもあり、一番カッコいいものが見れたり、面白いアイデアがいっぱいの楽しいエンターテインメントです。だから僕らはそこに誇りを持っていて、いい関係でミュージシャンとコラボレーションを続けたいと思っているし、音楽業界の方々ともピースな関係でいたい。今後は、インディーズも含めて個人のクリエイターにもいっぱい参加してもらって、いろんなことをやりたいと思います。とにかくミュージック・ビデオを見て、一度でも「カッコいい!」とか「ジーンときた!」とか「シビれた!」っていう人はぜひ応援してください。





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